本日は【公営企業会計決算特別委員会】
各局毎の質疑を終え、本日は全局の総括質疑に、会派を代表して平都議が質疑を行いました。

 公営企業会計は、東京の基幹インフラである水道・下水・市場・交通など、アフターコロナを見据えた事業の見直しや経営基盤の強化に向けて、コロナ禍において都の公営企業が果たしてきた役割を検証すると共に、アフターコロナを見据えた経営について質疑が行われました。
 都民の命と暮らしを守る!
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「令和2年度公営企業会計決算特別委員会全局質疑」
                 2021/11/15

 令和2年度は新型コロナウイルスが本格的に流行する中で、外出自粛や飲食店への時短要請など、社会経済活動が様々制限されると同時に、「新しい日常」の定着など、都民の生活様式に大きな変化が見られました。こうしたコロナ禍における様々な変化は、都の公営企業にも多大な影響を及ぼしています。特に最前線で新型コロナ患者の対応を続けてきた都立病院をはじめ、都の公営企業には、未だ厳しい状況下にある都民生活を多方面から支えていく使命があります。同時に、東京の基幹インフラである水道・下水・市場・交通など、アフターコロナを見据えた事業の見直しや経営基盤の強化が不可欠です。
 本日は、コロナ禍において都の公営企業が果たしてきた役割を検証すると共に、アフターコロナを見据えた経営について質問していきます。
 
【都立病院】
始めに、都立病院について質問します。まず、令和2年度において、病院経営本部の皆様には、新型コロナウィルス感染症対策の最前線でご尽力を頂き、医療従事者・職員の皆様に改めて、心より敬意と感謝を申し上げます。

 令和2年度病院会計決算において、病院事業収益は1839億5600万円で令和元年度の決算と比べると179億5800万円の増収、110.8%となっています。収益の内訳をみると、コロナの影響を受けて、医業収益は昨年度と比べマイナス131億2700万円と大きな減収となっておりますが、国庫補助金が304 億7300万円交付されたことにより全体収支は改善しています。その結果、令和2年度は105億8800万円の黒字ですが、病院会計は平成28年度から4期連続赤字決算が続いており、赤字額も年々拡大しているのが現状です。

 こうした中で都立病院は、令和4年度内をめどに独立行政法人化をすることとなっていますが、独法化を契機に、経営上の課題となっている各種契約や人事制度の見直し、そして、医業収益の改善につなげていかなければなりません。

 一方で、コロナ禍を経て、行政的医療の提供に加えて、感染症などへの緊急対応の役割は益々重要となっています。
 新型コロナウイルスの初期の感染拡大から年間にわたり感染症への対応を行った令和2年度の経験は今後の都立病院の役割や機能提供の観点から学びとしなければなりません。

そこで、改めて第一波から第三波に至るまで、都立病院としてどのように病床を確保し、患者を受け入れ対応してきたか、機動的な対応をするために直面した当時の課題と併せて、令和2年度の都立病院の感染症への対応について伺います。(病院経営本部)
 
A1:病院経営本部長答弁〉
・ 都立病院は、行政的医療である感染症医療について、他の行政的医療にも対応しながら、最優先に取り組む
・ 都内の感染状況に応じて、令和2年5月に441床、令和3年1月に540床、2月に820床と病床を拡大し、他の医療機関では対応困難な患者を受入れ
・ 病床拡大には院内感染対策が重要であり、簡易陰圧装置の導入やゾーニング等を実施
・ また、コロナ患者は急変しやすいなどの特徴があり、一般医療と比較して医療従事者を迅速に確保する必要
 昨年は新型コロナウイルスに感染した患者が重症化するケースも多く、通常医療よりも一人の患者に対して多くの医療従事者・看護師の確保が課題となりました。
 元々、日本は、世界と比較しても医療従事者が不足しているとの指摘があります。例えば、人口1,000人当たりの臨床医師数で見ると、日本はOECD加盟国35ヶ国中28位となっており、G7の中では最下位です。また、厚生労働省の発表した資料によると、100病床あたりの看護師数において、イギリスが200人、アメリカが141人、イタリアが136人に対して、日本は38人という結果になっています。

 こうした状況を踏まえると、医療人材の確保に向けて、給与や残業代など賃金の引き上げ、医療に関わる専門の研修や学習環境の整備、デジタル活用による業務プロセス効率化など、中長期的に取り組む必要があります。

そこで、令和2年度末にかけて、都立病院の一部をコロナ専門病院化し、都立病院では合計820床の病床確保を行うなどの取り組みの強化が図られましたが、患者の受け入れのために必要な医師、看護師をどのように確保したのか伺います。(病院経営本部)
 
A2:病院経営本部長答弁
・ 医師については、感染症科や内科の医師に加え、他の診療科からも応援体制を構築
・ また、看護師については、一般病棟からコロナ病棟に配置転換を実施。この際、個人防護具の着脱訓練等の研修を実施
・ さらに、精神科医師を中心としたサポートチームがメンタルヘルスの相談を実施するなど、コロナ病棟で働くスタッフを支援
・ こうした取組を通じコロナ病棟を運用し、令和2年度は疑い患者も含め延べ62,515名の患者を受入れ 
 
都立病院では、長期休職中の医療従事者の復職支援事業など、独自に医療人材の確保に努めてきました。特に、育児等で離職していた医師を対象に、オーダーメード型復職支援研修を令和元年4月から実施しており、これまで8名が研修に参加し、そのうち大学病院に2名、都立病院に2名、療育センターに1名が復職したと聞いています。ぜひ長期的な視点で事業の有用性をとらえ、引き続きの取り組みを要望いたします。
医療従事者の確保に加えて、コロナ以外の患者の転院や受け入れの制限など、患者や民間病院等との調整に関しても調整の経過においては課題があったと理解しています。将来的な新たな感染症の対応においても都立病院は重要な役割を担う中で、これまでの課題の検証を行ったうえで、よりスムーズに病院間の連携が図らなければなりません。
都立病院の独立行政法人化の意義のひとつとして、人材の柔軟な活用が挙げられていますが、コロナ禍において、独立行政法人化が済んでいれば民間医療機関等との人材の融通など、どういったことが実現できたと想定されるか伺います。(病院経営本部)
 
A3:病院経営本部長答弁
・ 都立病院の独法化後は、地方公務員法などにとらわれない、法人独自の人事制度の構築により、民間医療機関等との柔軟な人材交流が可能
・ 昨年来のコロナ禍を踏まえると、地域ニーズに応じて都立病院の医師や看護師等の専門人材を派遣するなどし、地域の感染症対応力強化に貢献していくことが必要
・ このため、平時から、保健所等と連携し、訪問看護ステーション等と人材交流を図るなどして、感染予防等に関する知識や技術の向上を支援するとともに、有事の際は、クラスターが発生した施設等に、感染管理の専門看護師等を一定期間派遣して、感染拡大防止に向けて技術支援をすることなどを検討 
 
 今のご答弁では、クラスター施設等に感染管理の専門看護師を一定期間派遣して技術支援していくことを検討するとの事でしたが、それは大切な取り組みである一方で、独法化による人材の柔軟な活用という観点では、もっと多くの可能性を検討すべきだと考えています。例えば、民間の医療機関が感染症患者を受け入れるのは、経営上さまざまな困難が生じるために中々踏み出せない現状もあります。そうした中で、独法化後の都立病院において感染症患者を重点的に受け入れると同時に、民間病院から医療人材を臨時で採用するなど、より柔軟な雇用体系の下で人材の融通を効かせることも想定すべきです。今回の独法化を契機に、特に感染症発生時における医療人材確保をより機動的に行えるような雇用制度についても検討するよう求めます。
 
【中央卸売市場】
次に、中央卸売市場会計について伺います。令和2年度は、新型コロナウイルス感染症の影響を、年間を通して受けた年度であり、新型コロナの大きな影響をどのように克服し、将来に資する事業強化につなげたのか、確認しなければなりません。
また、加えて、令和2年度は、豊洲市場へ2018年10月に移転してから、2年目~3年目の期間であり、移転当初の各種課題が解決されたのか、集客施設について適切に進捗してきたのか、持続的な市場会計に向けた取り組みがどのように進んだのか、この3点を確認していきたいと思います。
先ず、新型コロナウイルス感染症の市場業者への影響について、どのように対応してきたのか、特にコロナ後を見据えて経営基盤の強化が重要ですが、その成果を具体的に伺います。(中央卸売市場)
 
A1:中央卸売市場長答弁
〇 新型コロナウイルス感染症の影響により、厳しい経営状況にある市場業者に対して、都は、市場使用料と光熱水費の支払猶予を実施するとともに、都や国の各種支援制度の周知等をきめ細かく行った
〇 こうした取組に加え、コロナの影響を乗り越えるため、市場業者が行う経営基盤の強化などの取組を、中央卸売市場活性化支援事業により支援
〇 具体的には、温度管理を細分化することにより、鮮度面で商品価値を高める取組や、規格外野菜を用いて新たな商流を創出し販路を開拓する取組、ICT活用による業務改善で生じた人的資源により営業力を強化する取組などを後押し
〇 令和2年度は全11市場で60件の取組が行われ、約4億4千万円の補助金を交付
 
コロナを経て人々の生活様式が変わり、「コロナ後も飲食店の売上が元には戻らない可能性が高い」と想定しておく必要があります。一方、市場業者の販売チャンネルは、コロナ禍において飲食店向けなどの従来の商流が大幅に減少し、代わりに通販など消費者への直売や小売店向けの販売などが増加したものと考えられます。
こうした販売チャンネルの多角化、販売商品の付加価値を高める取り組み、輸出の拡大に向けた取り組みなどを強化すべきですが、コロナ禍でどのような経験を積み、次に繋げていくのか見解を伺います。(中央卸売市場)
 
A2:中央卸売市場長答弁
○ 今般のコロナ禍においては、非接触・非対面に対するニーズの高まりや、販路多角化の重要性が改めて認識されるなど、市場を取り巻く環境に変化が見られた
〇 こうした変化に的確に対応するため、令和2年度は、中央卸売市場活性化支援事業により、市場業者が行う、ICTを活用した販路の多角化や販売方法の多様化などの付加価値を高める取組、輸出業務に精通した人材を育成する取組などに対し、支援を実施
〇 また、海外販路の開拓に主体的に取り組む市場業者同士の連携体制を構築するため、マッチング会を開催するなど輸出力の強化に向けた環境整備を行った
〇 こうした取組を通じて、市場のさらなる活性化に向けて、ポストコロナを見据えた新たな生活様式に対応していく
 
厳しい事業環境を支える必要があった一方で、コロナ禍は事業強化や新たな取り組みに対する事業者の心構えを変えた面もあります。コロナで転んでしまったということではなく、コロナを経て中長期的な観点で事業が強くなったとなるように、市場業者の皆さまと取り組んで頂くよう改めて求めます。
次に、移転当初の各種課題について伺います。昨年2月より、新型コロナウイルスへの対応が非常に大きな課題となりましたが、市場移転後に明らかとなった各種課題について適切に対処し、改善を積み上げていくことも重要です。
豊洲市場への移転当初に指摘されていた駐車場不足や交通アクセスの利便性向上、荷捌きスペース等の確保や、ターレ等の運行の安全性など、各種の課題について、解決に努めてきたものと思いますが、豊洲市場へ平成30年に移転してから一定の期間が経過した中で、施設や運用に関する各種課題ついてどのように解消をしてきたのか、伺います。(中央卸売市場)
 
A3:中央卸売市場長答弁
○ 豊洲市場において、より一層活発な取引をしていくためには、市場関係者の利便性の向上を図っていくことが重要であり、都は、豊洲市場協会等の業界団体とともに運営上の課題を検討し、様々な方策を連携して講じてきた
〇 令和2年度においては、交通アクセスのさらなる改善に向け、買出人が一時的に駐車できる場所を6街区に確保するとともに、買出人や通勤者向けの駐輪場を6街区と7街区の間に4か所追加整備
〇 また、取引の一層の円滑化を図るため、施設の利用実態等を踏まえて使用区分の見直しを行い、六街区及び七街区に新たに荷捌スペースを確保した。
〇 これらに加え、場内の安全性を高めるため、巡回指導等を行い、ターレ等の安全走行の徹底に努めた
 
駐車スペースや駐輪場の追加整備や、新たな荷捌きスペースの確保などを実施してきたと答弁がありました。市場関係者や業界団体と共に連携して様々な改善を図ってきたことを評価致しますが、コロナが落ち着いた段階で改めて関係者の声を聞いてレビューをするなど、引き続き不断の改善を求めます。

次に、にぎわい施設について伺います。
豊洲市場のにぎわい施設については、暫定施設である「江戸前城下町」を3年間営業し、「千客万来施設」を2023年春に開業させるべく、2020年秋に着工する予定でしたが、この間の江戸前城下町の取り組み成果を伺うと共に、千客万来施設の工事等進捗をどのように事業者と協力して取り組んできたのか伺います。(中央卸売市場)
 
A4:中央卸売市場長答弁
○ 令和2年1月に開業した江戸前場下町は、コロナ禍に伴う緊急事態宣言により、令和2年4月から5月にかけて全館休業に至ったものの、その後は、営業時間の短縮や十分な感染防止対策を講じるなどして営業を継続し、豊洲地区の賑わいの創出に取り組んだ
〇 また、令和2年度における千客万来施設事業に関しては、事業者による着工に向け、建設予定地の整地工事を都が実施した上で、事業者へ用地を引き渡した
〇 さらに、都は、工事に向けた協議が円滑に進むよう、関係機関との調整を図るなど、事業者への協力を行った
 
千客万来施設について、昨年秋には、都で実施した整地工事は完了し、事業者は事業を進めることができたと認識をしています。また用地引き渡し後も定期的に事業者と協議を重ね、元々の開業期日に間に合わせていくことを事業者との間で確認しているものと理解しています。
千客万来施設に関わらず、通ずるものですが、都の事業目的を適切に達成するために、受注した事業者に計画通り事業を履行させることは極めて重要です。事業者の報告を単に受けるだけではなく、履行状況を管理する取組みに工夫ができたのではないでしょうか。
中央卸売市場より他局にノウハウや経験があると思いますので連携して頂きたいですが、「プロジェクトマネジメントの視点」を持って履行状況を管理することに取り組まれるよう求めます。

市場会計について最後に伺います。
持続的な市場会計の実現に向けて、昨年度策定した「市場経営指針」で示した強固で弾力的な財務基盤を確保するための取り組みの早期の具体化と、当面の経営改善の着実な実施が重要です。そこで、平成31年に示し、実施している当面の経営改善の取り組みについて、その成果を伺います。(中央卸売市場)
 
A5:中央卸売市場長答弁
〇 中央卸売市場が将来にわたって持続的な市場経営を実現していくためには、収支両面から経営改善に取り組むなど、財務基盤の強化を図ることが重要
〇 そのため、都は、執行体制の見直しによる市場運営費の縮減や収入確保等により、令和15年までの間に、経営改善を段階的に行うこととしている
〇 令和2年度においては、体制の見直しによる人件費の圧縮や未利用施設の有効活用による使用料収入の増加等に取り組み、前年度対比で管理費は99.6%と減少し、施設使用料収入は101.6%と増加
〇 引き続き、こうした取組を積み重ねるとともに、本年3月に策定した経営指針の方向性に基づき、強固で弾力的な財務基盤の確保に向けて取り組んでいく
 
令和2年度は、コロナ禍の中での取り組みで苦労もあったものと思いますが、収支改善の一歩を踏み出したものと理解します。
今年度は、令和2年度に策定した経営指針をもとに経営計画を策定するとしています。持続的な市場会計の実現に向けて、抜本的な取り組みを求めますし、収支改善などでできるところは先んじて進めていくことを改めて求めます。
 
【交通】
次に交通局関係について質問します。まず、先日の日暮・里舎人ライナーにおける脱輪事故についてです。先月7日夜に、千葉県北西部を震源とする最大震度5強の地震が発生した影響により、日暮里・舎人ライナーの1編成が脱輪し、全線で運行を見合わせとなりました。詳しい事故原因については、国の運輸安全委員会が現在も調査中ですが、日暮里・舎人ライナーも含めた都営交通が震災時にどのような被害想定と対策を行ってきたのか、確認する必要があります。
そこで、日暮里・舎人ライナーにおいて、地震発生により、今回の脱輪のような列車が走行不能になることを想定し、どのように備えを講じていたのか伺います。(交通局)
 
A1:交通局長答弁
・お客様の安全確保、被災施設の復旧及び一刻も早い運転の再開を図るため、震災対策に関する基本的な事項を定めた危機管理対策計画を策定
・日暮里・舎人ライナーでは、本計画に基づき、緊急地震速報を受信した際には、お客様の安全を確保するため指令所から全列車を緊急停止させ、列車が駅間に停止し走行不能な場合には、係員を急行させ、徒歩で最寄り駅へ誘導
・こうした事態を想定した避難誘導訓練や、本線上で故障した車両をけん引するための車両連結訓練を定期的に行い、異常時に備えた対応力の維持・向上に努力
 
 いまのご答弁の中にあった交通局の危機管理対策計画においては、首都直下地震等が発生したときは、交通局長は応急活動を推進するため交通局災害対策本部を設置すること、特に、夜間休日等の勤務時間外において、都内で気象庁発表震度6弱以上の地震が発生等したときは、局本部は自動設置され、全職員は一斉参集することとされています。今回は最大震度5強だったため、対策本部の設置には至りませんでした。また、地震発生時等の避難誘導、異常時の係員編成区分、管轄警察・消防・災害時避難場所一覧等を定めた「異常時対応マニュアル」を定めており、同マニュアルに基づいて避難誘導を行ったとの事です。
一方で、危機管理対策計画においては、脱線や脱輪など個別の事故ケースに応じた対策やマニュアルなどは存在しておらず、ここは現場での判断に委ねられているのが現状です。
そこで、今回の事故で実際にどのように対応したのか伺います。(交通局)
 
A2:交通局長答弁
・日暮里・舎人ライナーでは、お客様の安全確保を最優先に、すべての列車を停止させるとともに、お客様に落ち着いて行動していただけるよう、車内放送により、それぞれの列車の状況や避難方法をお知らせしたほか、負傷したお客様の状況確認を行った
・その間も、救急車の手配を行うとともに、走行可能な列車は次の駅まで運行し、脱輪し走行不能となった列車には係員が急行
・駆けつけた係員は、お客様を徒歩で最寄りの駅まで避難誘導するとともに、負傷したお客様への対応に当たるなど、現場の状況に即した迅速な対応に努めた
 
 救急車の手配や走行可能な列車の運行、脱輪車両への対応など、現場判断により迅速に実施してきたとの事です。一方で、今回の事故発生後に、日暮・里舎人ライナーの利用者や近隣住民からは、振替輸送や復旧見込みについて一早く知りたいといった声が、私たちの元にも多く届きました。
そこで、振替輸送の体制や情報発信についてどのような対応を行っていたのか伺います。(交通局)
 
A3:交通局長答弁
・日暮里・舎人ライナーの運行が停止したことを受け、直ちに、鉄道や路線バスによる振替輸送を実施
・地震翌日には、都営バス里四十八系統を増便、沿線の観光バス会社等の協力を得て代替輸送を実施
・こうした状況について、報道発表やホームページ等を通じて、適宜、情報発信
・各駅に職員を配置し、代替バスへの誘導やお客様からの問い合わせに対応
・職員が代替バスに添乗し乗降案内を行うなど、現地においても、きめ細かい対応に努めた
 
今回の事故を受けて、まずは国の運輸安全委員会による原因調査を踏まえて、再発防止策を構築しなければなりません。一方で対策を講じたとしても、特に、首都直下型地震等の大型地震が発生した場合に、例えば、脱輪や車両転倒などの事故が複数箇所で同時多発的に起きる可能性もあります。そうしたケースも幅広く想定した上で、危機管理対策計画や異常事態対応マニュアルの見直しを今後検討すべきです。同時に、事故発生後の情報発信については、特に代替となるバスの手配など見通しが難しいケースもあると思いますが、利用者や近隣住民に対して出来るだけきめ細かく情報を伝えるよう、改めて求めておきます。

 続いて、令和2年度の交通事業会計についてです。令和2年度は新型コロナウイルスの影響により、都営交通も大幅な利用者減となりました。
そこで、まず令和二年度の都営地下鉄、都営バスの乗車人員について、令和元年度と比較してどのような状況か、また、今年度に入ってからの状況について伺います。(交通局)
 
A4:交通局長答弁
・令和二年度における一日当たりの乗車人員は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受
け、都営地下鉄が前年度と比べて約九十一万人、三十二パーセント減少。都営バスは、約
十三万人、二十一パーセント減少
・今年度に入っても、感染再拡大の影響等を受け、都営地下鉄では、コロナ禍以前の水準から三割程度の減少が継続。都営バスにおいても概ね二割弱の減少が継続
 
 いまのご答弁にもありましたように、今年度に入っても都営地下鉄ではコロナ禍以前の三割程度減少、都営バスにおいても二割弱の減少が続いているとのことです。コロナ禍によってテレワークが進むなど、都民の生活様式も大きく変化している中で、今後例えコロナが収束したとしても、利用者数が以前と同水準に戻るのは困難だと考えられます。つまり、コロナ禍以前の利用者数を前提とした現在の各種経営計画も今後抜本的な見直しを行わなければなりません。

交通局の次期経営計画は来年度からの計画ですが、次期経営計画においては事業収益の一定の減少を前提に、投資の抑制による減価償却費等のコスト縮減に努めると共に、乗車料収入はもとより、構内営業料、広告料等の収益増加策を一層強化すべきと考えますが、見解を伺います。(交通局)
 
A5:交通局長答弁
・新型コロナウイルス感染症の影響により、都営交通の乗車人員は大幅に減少。今後もコロ
ナ禍前の水準への回復が期待できないものと見込
・安全の確保に最大限配慮し、経費の節減に取り組む。今後の需要動向を慎重に分析した上
で、中長期的な投資計画を検証し、減価償却費などのコスト水準を精査
・感染症の流行状況等に留意し旅客誘致を図る。局で保有する資産を有効に活用し、駅構内店舗の営業料や広告料など関連事業収入の確保にも努力
・次期経営計画について、こうした観点も踏まえ策定を進めており、今後とも、コロナ禍による経営環境の変化に的確に対応しつつ、事業運営に取組
 
 今のご答弁にもありましたような一層の経営努力を続けて頂く一方で、利用者の2割〜3割減少が今後も継続する場合には、より抜本的な運行本数の見直しや料金体系の見直しが必要となるかも知れません。今後、国土交通省や他鉄道事業者とも協議・連携を重ねながら、都民生活を支える公共交通機関として、より安定的な経営基盤の確保に努めて頂くよう求めておきます。

 さて、令和2年度は「スマート東京実施戦略」が策定され、都庁各局でデジタル技術を活用した調査や新規事業が立案されました。
交通局において、5G等のデジタル技術を活用した今後の事業展開に関する調査検討を実施しましたが、その内容と今後の取組について伺います。(交通局)
 
A6:交通局長答弁
・交通局では、お客様の安全性・利便性の更なる向上や業務の効率化を図るため、5G等の
新たなデジタル技術の活用について検討
・令和二年度は、日暮里・舎人ライナーにおいて、車両から撮影した軌道の状況などを5G
等の通信を用いて遠隔で確認する技術の検証
・駅構内で移動型ロボットを遠隔操作し、非接触・非対面でお客様との対話や誘導案内を行
う実証実験を実施
・都営バスでは、お客様の動きを車内に設置した高精細カメラで撮影し、映像をAIで解析して、一人ひとりがどこからどこまで乗車したかなどのデータを取得する実験を実施
・今後、5G環境の整備状況やAI解析能力の向上など技術開発動向を注視するとともに、費用対効果も見極めながら、さらに検討を深度化
 
 近年、日本の鉄道業界では、少子高齢化に伴う人手不足や熟練技術者の減少が進んでおり、作業現場における自動化や省力化、安全性の向上などに必要なインフラとして、ローカル5Gの活用が期待されています。
 ローカル5Gは、自治体や企業などが主体となり、限られたエリアで柔軟に5G網を構築できる無線通信システムです。エリアごとにローカル5G網を構築することで、高速大容量で超低遅延かつ多数同時接続という特長に加え、外部環境に依存しない安定したネットワークを保有できます。
特に、列車や駅のホームに設置した高精細4Kカメラで撮影した映像をローカル5Gで伝送し、AIで解析することで、目視で行っていた線路巡視業務および車両ドア閉扉合図業務の効率化・高度化を目指す実験は民間でも多く実施されています。こうした各地の実証実験事例も踏まえながら、ぜひ先端技術の活用を一層進めるよう求めます。
 
【水道局・下水道局】
最後に、水道事業・下水道事業について質問します。まず、下水道事業についてです。都の下水道は、23区内に1万6,000キロを超える下水道管を整備、管理していますが、この膨大な下水道管を将来にわたり、適切に維持管理し続けることは下水道局に課された重大な使命です。しかしながら、下水道管は地下にあることで点検や調査が容易ではないことに加え、汚水が絶えず流れ、時には雨水が一気に流れてくるという、維持管理する立場で見れば、これほど過酷な環境はありません。さらに、過酷な環境にあるがために、維持管理を担う、担い手の減少が今後より一層進むことも懸念されます。こうした重い課題を切り開く一つの解決策は、デジタル技術であるAI、IoT、ロボットなどの第4次産業革命を下水道の分野でも推し進めることと考えます。

そこで、下水道管の点検調査におけるデジタル技術の導入に向けた令和2年度の取組について伺います。(下水道局)

A1:下水道局長
・下水道局では、膨大な下水道管を適切に維持管理していくため、これまでも、ミラー方式テレビカメラを採用するなど、デジタル技術の導入に取り組んできている。
・令和2年度には、劣化状況等をAIが判定する技術について、東京都下水道サービス株式会社や民間会社と研究を開始した。
・また、水位が高い等の理由により、調査を行うことが困難な箇所への対応として、船の形をしたロボットにより、遠隔で調査ができる技術を東京都立大学と研究を開始した。
・今後、これらの技術の研究を進め、下水道事業のより一層の効率化やサービスの向 上を図っていく。
 
 都の下水道事業は、従前よりSPR工法を始めとした様々な技術開発に積極的に取り組んできました。ぜひデジタル技術の活用においても、先進的な取組を進め、都政のDXをリードして頂きたいと思います。

続いて、水道局・下水道局のゼロエミッションの取り組みについて質問します。都は2019年12月に「ゼロエミッション東京戦略」を掲げ、国に先駆けて2050年に実質排出量ゼロに貢献すると宣言しました。全庁を挙げて取り組みの具体化を進めてきた中で、水道局は都内電力使用量の約1%に相当する約8億kwhという膨大なエネルギーを消費しています。下水道局も同様に約10億kwhという膨大なエネルギーを消費しています。
ゼロエミッションに向けた東京都の率先的な取り組みとして、水道局・下水道局の重みは非常に大きいものがありますが、ゼロエミッション元年である令和2年度においてどのような取り組みを行ってきたのか、水道局・下水道局の両局に伺います。(水道局・下水道局)
 
A2:水道局長長答弁
・水道局では、送配水工程において多くの電力を使用しており、令和2年3月に策定した「東京都水道局環境5か年計画2020-2024」に基づき環境負荷の低減に向けた取組みを推進
・特に、環境確保条例上のトップレベル事業所の認定取得を進めており、5事業所が認定
・この他の事業所でも、令和2年度は、太陽光発電設備や省エネルギー型ポンプ設備の導入を実施し、これらの取組の結果、令和2年度における環境確保条例上の大規模事業所のCO2排出量削減率は19.4%
・今後とも、本計画を着実に推進するとともに、令和6年度までの削減義務率25%の達成を含め、より一層のCO2削減に取り組んでいく。
 
A2:下水道局長答弁
・下水道局では、アースプラン2017に基づき、温室効果ガス排出量を2030年度までに2000年度比で30パーセント以上削減する目標を掲げ、排出量の多い水処理工程や汚泥処理工程等で削減対策を推進している。
令和2年度は、森ヶ崎水再生センターにおいて、水処理に必要な空気を、小さな気泡にして水に溶けやすくすることで送風量を少なくし、電気使用量を削減する微細気泡散気装置を導入した。さらに、みやぎ水再生センターで電気や燃料の使用量を大幅に削減できる高温省エネ型焼却システムの整備を完了するなどの取組を進めた結果、温室効果ガス排出量を2000年度比で約28パーセント削減した。
・今後、これまでの取組に加え、新たな技術開発を推進するなど温室効果ガス排出量のより一層の削減を進めていく。
 
CO2排出量の2000年度比の削減率は、水道事業で19.4%、下水道事業で28%との事で、両事業とも努力を重ねてこられていることは評価します。一方、小池知事は今年1月のダボスアジェンダ会議にて、2030年までに都内の温室効果ガスを2000年比50%削減する目標を表明しました。この高い目標の実現に向けては、都内の電力使用量の合計2%以上を占める、水道事業、下水道事業のさらなる努力が不可欠です。
そこで、2030年のカーボンハーフ、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けた水道局、下水道局の中長期的な方針を副知事に伺います。(副知事・水道局・下水道局)
 
A3:副知事答弁
都では、2050年までの「ゼロエミッション東京」の実現と、2030年までに温室効果ガス排出量の2000年度比50%削減と再生可能エネルギーによる電力利用割合50%程度を目標
・水道局と下水道局は、都庁組織の中でもエネルギー使用量が非常に大きく、カーボンハーフ、カーボンニュートラルの実現には両局の取組が極めて重要
・水道局では「東京都水道局環境5か年計画2020-2024」、下水道局では「アースプラン2017」に基づき取組を進めているところだが、これらの取組を着実に推進するとともに、都が掲げる目標達成に向けて取組
 
現行の計画に基づいた取組を着実に進めて頂くと共に、2030年のカーボンハーフという目標達成に向けては、ぜひ両事業において新たな計画を早急に策定することを求めて、質問を終わります。