精神障害当事者にとって望ましい支援とは?倫理的視点から考える【日本精神科看護協会倫理綱領改正プロジェクトから考える~当事者参画・連携と共同についてのこれから~確認】
昨日は、精神障がいの領域における「当事者参画」をテーマにしたオンライン勉強会に参加させて頂きました。

障がい者権利条約のスローガンに「私たち抜きに私たちのことを決めないで」とあるように、
私も東京都議会の「障がい者差別解消条例」に基づく合理的配慮の推進に取り組んできました。

精神障害分野の医療の課題を、当事者の方から寄せられることもあり、本人の望まない投薬や身体拘束、長期入院の実態など、精神医療における当事者の人権、権利擁護の視点の重要さを実感する中で、

倫理綱領改正において、当事者参画のプロジェクトが、医療従事者と共に進められた事は、とても重要であると感じました。

都議会でも都立松沢病院等の現場を抱え、特にコロナ禍において鬱や認知症も含め、精神的な課題を抱える方が多い中、誰もが他人事ではない課題です。

当事者参画・パートナーシップ・アドボケイト等、倫理綱領改正について、
精神医療に関わる様々な多職種の方に知って頂き、現場において、当事者の方の望む支援を共に構築していかれる環境づくりに向けて、議会も当事者の皆様と共に政策策定に取り組んでまいりたいです。

精神障がい者当事者会ポルケの山田さん。講師の先生方、本日も貴重な機会をありがとうございました。

『日本精神科看護協会倫理綱領改正プロジェクトについて』一般社団法人吉川隆博会長

〇改正倫理要綱のポイント
「精神科看護職の倫理綱領」2021年5月15日改正
◎精神科看護職がアドボケイトである事
看護の専門職同士が、チームで職につくと同時に、被害にあっている人の権利を擁護するために専門職として相互にアドボケイトとして行動する。

アドボケイト 実際の看護職の現場で、本当に実践できているかどうかー
アドボケイトとして行動するという事を周知していく事が求められる。

◎対象となる人々とのパートナーシップ
自己決定の尊重)対象となる人々とのパートナーシップを高めながら、最善の利益に基づいて、納得のいくまで何度でも話し合って再考する。

パートナーシップ 患者さんとの関係性、信頼関係、関係づくり
では、信頼関係が出来たと判断するのは誰なのかー 当事者の視点から考える事の大切さ
お互いの対等な立場で、共に前に進めていく、行動変容が求められる

◎自浄作用のある組織作り
倫理指針1,人権尊重
精神科医療という閉鎖性、倫理的な組織文化の構築
外部の人の意見を確認する。組織は、非倫理的行為の告発に対しては、それを倫理的な行為として真摯に受け止めて対応する姿勢が求められる。
そういった事実があった場合に、周りの看護師は気づかなかったのかー。そういった場面を見ても声をあげにくい現状。
万が一、非倫理的行為があった場合、おかしい事に対しては、声を上げる事が重要。
決して告発者を罰するようなことがあってはならない。
むしろ、声をあげた人を褒賞するような姿勢が必要。

〇,今後の取り組みについて
→ 倫理綱領改正は、倫理課題の解決に向けた取り組みのスタート
◎全国の精神科看護職への周知→資格の有無を問わず、非会員施設も含めて
倫理綱領に掛かれている事を、それぞれの看護職と患者さんの関係の中で、どの様な教育を進めていく事が出来るか。
◎倫理教育の検討・推進・評価→品利敵感受性を磨き、日常の看護実践に反映できるように
(精神科看護職の倫理綱領とモヤモヤMEMO)
病棟や部署、全体の課題として、それぞれの日常の中の出来事に落とし込んで、モヤモヤした事を、倫理指針に照らし合わせて、カンファレンスの中でみんなで共有しあう。
職場で、看護職自身が、倫理指針を生かす。

◎当事者の皆さんとの共同企画を増やす
→全国規模の企画と都道府県支部主催の企画 倫理綱領の改正に当事者の山田さんに入ってもらう事で、今まで看護職が気が付かなかった事も考えさせられる場面があった。
当事者の皆さんの気持ち、看護者の気持ちが救われる体験もあった。
倫理綱領を考えていく中で、パートナーシップ、相互関係
体調管理・感情のコントロール そういった事を、自己責任として当事者に押し付けてしまうのでは、ゆがみが生じる。看護職の立場で考えている事に、当事者の立場で入ってもらう事で、様々な視点に気づかされる。

精神医療 非自発的 患者の立場で、どう考えるかー
医療を受けない権利もある。
看護職と、双方に意見を出しながら、共に考えていく。
看護者が、倫理綱領を考えるうえで、人々 当事者 患者さん ご家族も含めて考える
看護者が、家族の立場や気持ちを優先してしまう場合もある。
あくまでも、「援助を受ける当事者の立場を一番に考えねばならない」という事をどの様に考えるか。

山田さん〉倫理綱領の改正の【アドボケイト】について

吉川隆博先生〉今回、アドボケイトについて、患者さんの権利・尊重する
患者さんの意思や気持ちを尊重する代弁者・権利擁護

山田さん〉当事者を入れるという事について、

吉川先生〉現場からの抵抗はなかった。全国組織に入って頂くうえで、行政との関係、
当事者個人ではなく、組織に所属して頂いている方、これまでの活動に取り組んでいる

山田さん〉これまでの障がい者権利条約の取り組みなど、

参加者意見〉家族優先は困ります。最大の敵は家族だったりもする。

山田さん〉保護入院をきっかけとして、当事者と家族の関係性が悪化してしまう場合もある。

吉川先生〉家族との関係性は、実際の場面によって変わってくるが、あくまでも援助の対象者は当事者。当事者の事を第一に考える事。一方で、患者さんの様々な日常生活の援助を行う上で、ご家族の意向も聞きながら出ないと、援助を行えない面もある。
内容によって判断しながら、
例えば、退院についての意見が食い違っている場合などにおいて、難しい場面もある。

山田さん〉そういった難しい場面について、課題がある。

吉川先生〉精神科医療に限らず、家族と患者さんの事について、20才を過ぎたら自立と考えるべきではないか。

会場から〉代弁者の大切さ

吉川先生〉本人の意思表明をしてもらえる援助が一番だが、本人が伝えられない際に、ご本人の気持ちを医師に伝える。
山田さん〉お世話になっているからこそ、本人が言えない事もある。その場合に、当事者の立場で言うべきことをいう。

病床数や身体拘束など、一番最後の12番で、
「精神科看護職は、専門職濃人として社会の要請に応えられるよう、専門職組織を通じて対象となる人々の権利擁護や、精神科看護の水準向上、価値の発展のために政策提言等を行う」
ソーシャルワーク的な視点。

鶴田さん〉精神科看護師の倫理を考えるとき、そもそも世界で一番入院が多いという日本の精神科医療の現状そのものを、精神科看護を担う人たちがどう考えるのか、という視点が必要なのではないか。日本の精神科医療の現状にすごく問題があるという視点を、精神科看護師の皆さんに持ってほしい。

宮本有紀さん『コ・プロダクション 共同創造』
サービスの受け手と供給者(給料を得ている人)が対等なパートナーシップでサービスの構築や提供に共に関わる
精神科病棟で働いていた経験をもとに、
・患者さんの視点や思いは精神科医療に入っていただろうか?
・どんな看護、どんな精神科医療が良いのだろう?

WRAP(元気回復行動プラン)やIPS(意図的なピアサポート)の活動で、多くの人と出会いから
・支援する/されるでない関係
・「ピアサポート」への関心
精神科医療を経験した当事者の皆さんと対等な立場でふれあい得た視点

『リカバリーカレッジ』とは
・精神保健福祉領域から始まった場

・英国で2009年より実践が広がり、2019年英国で85以上
・日本では2013年より 現在10~
精神科医療の場で

リカバリーカレッジ


・共同創造
・学ぶ場
・誰でも参加してよい 精神保健サービスの利用者・患者・医療従事者・家族・支援者・市民
従来の治療・福祉ではなく「学ぶ」という考え方でリカバリーに関する事(自便の生活に役立つこと)を受講者が主体的に学ぶ

医療者(専門職)だけ、当事者だけで作るのではなく、
当事者と専門職の共同創造(コ・プロダクション)で運用する

自分が学びたいことを学びに来る場、自分が学びたいことしか学べない。
精神障害がある人の学びたいことって何だろう?医療者だけではわからない。
医療者が患者さんに知っておいてほしい事 ではなく、本人が知りたいこと。
医療者と精神疾患を有する人は、支援する人、される人の関係ではなく、お互いに知恵を提供しあう仲間。
共に創り上げる共同創造


当事者と専門職の力を合わせて

リカバリーカレッジでは、
・精神健康の困難の経験者と専門職者が扱うテーマや講座開催予定を共に作る

コ・プロダクションの世界の流れ
◎英国の保険利用福祉での関心の高まり

精神保健福祉での共同創造 誰にとってもよいものを 力を合わせて共に作り出す
患者・利用者 医療者にとって良いもの 

医療に関するコ・プロダクション(共同創造)
・リカバリーカレッジ
・児童思春期精神福祉保健
意味のある医療を提供するために必要な視点

塩澤拓亮さん『市民参画研究TOGETHERプロジェクト』
⇨なぜ研究が必要になったのかー
1950-1960年代 ロボトミー
地域精神保健に関する研究が必要となった理由
インフォームドコンセプト 患者の知る権利 
治療・支援効果の説明責任の為に研究が必要

研究は、当事者・家族の権利を守るために進んできた

しかし、これまでの地域精神保健に関する研究の限界
2000年~パーソナルリカバリー
ノーマルになる事ではなく、より深みのある人間らしくあるための活動である
⇨当事者や家族が研究に関わる機会がない
研究における当事者・家族との共同の時代
患者・市民参画 研究者が研究を進めるうえで、患者・市民の知見を参考にする事
共同創造 パートナーシップ 研究プロジェクトの最初から最後まで力を合わせ責任を分かち合うアプローチ 海外では国の政策にも当事者が参画

日本では患者・市民参画や共同創造の土壌が無い

【できることから はじめよう! TOGETHER】異なる立場の人が考える、研究で測る関心ごと(アウトカム)は何だろう?

様々な立場の人が参画し、地域精神福祉研究で重要だと考えるアウトカムの項目について、参加者の方と共に合意を図っていく

「合意形成(デルファイ)研究」
専門家グループなどが、 反復型アンケートを使って、直感的意見や地域精神保健研究で測るべき関心ごとは何なのかを 何が大切か投票で決めるような仕組みづくり!

研究者・支援者の考えと、当事者・家族の考えはイコールではない。考え方や重要だと感じるものは人それぞれ異なる。
⇨ 自分の受ける支援は自分で決めたい
⇨近くで見守る立場として 家族の思い
⇨専門家としての支援の考え

例えば。。。「アウトカム」って何?
・治療や支援を受けた結果として、変化が期待されたもの
・研究では、治療や支援の効果によって得られる判定項目
→ 入院の有無、精神病状、血圧、体重、就労、生活の質
調査の中で、研究者が一押しの治療や支援を実施したときに判定する指標

当事者化家族が単に参加しているだけでは、参画にはならない。共通認識をもって、共に
「研究に参画すること」研究者は仕事として取り組んでいるが、当事者・家族にとって
あらゆる立場の人が研究に参画する事自体に対等な条件でいる必要性





宮本さん〉倫理綱領についての、改正の過程についても伺えた。
今までの自分たちのグループではない人が入る事で、発言しやすくなる。
同業者だけだと、そこの力関係で発言できない事もある。
研究チームのミーティングなども、
山田さん〉よそ者が入る事で、概念で語られた事の再確認が出来たりする。

吉川さん〉研究の取り組みの方では、当事者の方たちが複数名入る事がとても良い。
当事者の方に入ってもらう中で、圧倒的に専門職がおおい場合は発言しにくい場合もある。

看護職の場合も、当事者の方に遠慮して発言しにくい場面も。日頃から当事者と共に

山田さん〉数のバランス、雰囲気も含めて場の作り方、

空気をあえて読まないで、信頼関係について、不愉快になった方もいたかもしれないが、切り込んでいった事もあった。

塩澤さん〉倫理綱領改定について伺う中で、同じ専門職で進めていっても、自分たちも意識しない位の共通認識の中で、当事者が入る事で、ハッとするようなことがあったりする。
倫理的な側面をどの様に考えていくのか、当事者が入る事の重要性
暗黙の了解を可視化する。
病棟で看護師として働く中で、自身を振り返って、何を思うか。考えた。

山田さん〉当たり前という事が、良くも悪くもある。外部との接点の中で、築かされること。
立場を超えて取り組む。
ある意味、この指とまれ方式で物事が進んでいく。一方で、研究職の中でも、患者側から研究領域で考える事が、患者側からもメリットになるという視点。
一緒に作っていく切っ掛け。
様々なきっかけづくり、関係性づくり
専門職の専門的な知見と、当事者の専門性
当事者としても、何処まで役割を担えているか。

塩澤さん〉研究 それによって、今ある支援が良くなるために、効果を明らかにする
それを享受できる 結果から影響を受ける人たち
研究者や専門職が大事だと思っても、当事者が望んでいるか 何が大事なのか、そのためにどうしていったらよいのか、その意味でも参画して頂く意味がある。

山田さん〉アウトカムについての研究も、当事者・家族が求めている支援・治療についても
指標づくりと、改めてどの様な指標を立てるか。政策レベルで、何を変えていくべきか、
精神化病床が多いから減らしていくべきかー大切な人権の視点
ちゃんとしたアウトカム、指標があったうえで減らしていく事
長期間の入院と再入院、

15年ぶりの倫理綱領の改正を、今後につなげていくために

吉川先生〉先ほどの、これからの展開の仕方。どういう所と連携して、現場で反映されるようになるのか、一緒に相談に乗ってもらって、一緒に取り組んでいきたい。

山田さん〉まさに、先生から頂いた共同創造、平場できっかけを作っていく事。
悩みながらやってきた中で、一緒に考えて取り組んできた。
当事者性を生かした福祉の仕事、ピアサポート、ピアサポーター。
過渡期を迎えている。こうしたらよいという安直なものは無いが、共に関係性を作っていく機会。これからも、ご相談しながら、共に作っていきたい。