【都議会厚生委員会報告】
本日は付託された議案について採決が行われ、採決に先立ち12月14日質疑を行いました。
『都立病院の現状と課題(中間まとめ)』について もり愛
 都立病院経営委員会より「今後の都立病院のあり方について」の報告が本年1月に発表。報告の中では現行の病院運営における制度的な課題が指摘されており、都立病院が安定した経営基盤を確立し今後も担うべき役割を果たせるようにするためには、その制度的課題に都がどのように取り組んでいくべきかが問われております。
 そこで、今回示された都立病院の現状と課題の検証(中間まとめ)を踏まえて、都立病院がこれまで行ってきた取組や課題、そして制度的制約について質問させて頂きます。

Q1
まず、都立病院が担うべき役割について、改めてお伺いします。

A1病院経営本部〉
 都立病院は、高水準で専門性の高い総合診療基盤に支えられた「行政的医療」を適正に都民に提供し、他の医療機関等との適切な役割分担と密接な連携を通じて、都における良質な医療サービスの確保を図ることが基本的な役割
 また、超高齢社会を迎え、今後、医療提供の在り方が病院完結型から地域完結型に転換が図られる中、都立病院は、地域の医療提供体制が確実に整えられていくよう、地域の状況に応じ、地域医療の充実に貢献することも都立病院の役割に位置付け
 都立病院は、この2つの役割を担い、東京の医療の充実に率先して取り組んでいく。

もり愛〉都立病院は行政的医療の提供と地域医療の充実への貢献を役割としているとのことであり、どちらも公立病院として一層の取組が期待されます。
 今後、高齢化の進展を支える地域完結型医療への転換が求められる中で、地域の中でどういった医療ニーズが求められるのか、必要な医療体制の確保を図るため、公・民の適切な役割分担が求められます。
 都立病院が地域においてどのような医療ニーズを担うべきかの議論は、病院経営そのものを左右する重要な課題です。
 私の地元大田区にある東京都保健医療公社の荏原病院では、都の委託を受け重症心身障害児が短期入所するための病床を確保する取組を行い、地域から感謝されており、医療と福祉が柔軟に連携していくことは重要です。
 小児在宅医療の充実については、先の議会でも質問したが、今回の「都立病院の現状と課題の検証(中間まとめ)」にも記載があることから、まず小児の在宅医療について質問致します。
 医療の高度化を背景として近年医療的ケアを必要とするお子さんが増加している現状があります。
Q2
 小児在宅医療に対応する地域の診療所の状況と課題についてあらためて伺います。

A2病院経営本部〉
 都が行った調査によると、訪問診療を実施していると回答した都内の一般診療所1,748施設のうち、小児在宅医療に対応しているまたは今後対応予定と回答した診療所は約1割
 また、小児在宅医療への対応は考えていないと回答した診療所の約3割が、対応していない理由として、「対応の仕方がわからない。経験・知識がない」
 こうしたことから、医療的ケア児が住み慣れた地域で適切な医療や生活支援を受けながら安心し、生活や通園・通学できるよう、都立病院が有する小児医療の高度で専門的な知識やノウハウ等を地域医療機関の医師等と共有するなど技術面での協力が必要であると認識

もり愛〉 子どもたちが住み慣れた地域で家族と安心して過ごせることが大変重要ですが、小児在宅医療に対応している一般診療所は少ない状況があります。

 区南部医療圏の療育施設は、都立北療育センターの城南分園に限られております。大田区から府中療育センターまで通っている医療的ケアを必要とする小児もおり、切実な声が寄せられております。医療・福祉の所管を超えて隣接する荏原病院との一層の連携を強く要望致します。

 都立病院新改革実行プラン2018では医療的ケアを必要とする小児が、円滑に在宅に移行できるよう、地域の実情に応じて、医療・福祉・教育など多くの関係職種及び関係機関との連携体制を構築することが必要となるとしています。
 小児医療に限らず都立病院が有する高い専門性や知見、医療人材などの医療資源を活かし、地域医療の確保・充実に貢献していくことが必要です。
Q3
 このような課題に対して都立病院が取り組んでいくにあたって、どのような制約があるのか伺います。

A3病院経営本部〉
 医療提供の在り方が病院完結型から地域完結型に転換が図られる中、小児医療に限らず、地域医療の充実への貢献に向けて、先ほどご答弁したような地域医療を担う人材の育成支援や地域医療機関への技術面での協力に加え、地域医療を支えるモデルとなる取組の発信が必要
 そのため、今後、都立病院の専門性やノウハウを活かし、地域医療機関等へ職員を派遣して行う診療応援などの人材交流が必要となるが、地方公務員法による服務の制約により、民間医療機関への診療応援等は困難

 地域の求めに応じて、都立病院の豊富な人材を生かし、特色ある専門性を地域に還元していくため、こうした課題を解決するための検討を引き続き進めていただきたいです。

もり愛〉 行政的医療の提供や先ほどの地域医療の充実への貢献を支えているのは、医療現場にいる職員であり、職員が働きやすい環境をつくることは医療サービスの充実にもつながると考えます。
 本年第2回定例会ではライフ・ワーク・バランスについての質問を致しましたが、今回は特に女性活躍の視点から、全国的に不足している医師の中でも女性医師の多様な働き方の実現について質問をさせて頂きます。
 今回の報告において女性医師の例が挙げられており、全国の女性医師の割合は21.1%なのに対して東京都においては29.2%と高い割合となって居ます。
Q4
 都立病院における女性医師の割合と推移を伺います。

A4病院経営本部〉 
 都立病院に勤務する女性医師の割合の推移は、各年度11月1日現在でみると平成28年度は27.7%、平成29年度は28.1%、平成30年度は29.0%

もり愛〉 都立病院における女性医師の割合は約3割と都内全体と同様に全国の平均よりも高い事が分かりました。
 女性医師のキャリア形成と育児・介護などを両立できるよう、環境整備を進めていくことが重要です。
Q5
 そこで、女性医師が働きやすい職場環境整備に向けた取組について伺います。

A5 病院経営本部〉 
 都立病院では、昭和44年4月に院内保育室の運用を開始し、平成20年4月から24時間対応にも取り組んでいる。さらに、平成20年7月から育児短時間勤務制度を導入するなど女性が働きやすい職場環境の整備に努めている。
 なお、平成30年11月1日現在、育児短時間勤務制度は、8名の女性医師が利用。院内保育室については全利用者90名のうち女性医師が37名利用しており、利用者に占める割合は41.1%

もり愛〉 院内保育室の24時間対応や育児短時間勤務制度の導入などに取り組んできたことが分かりましたが、今回の報告において、未だ課題があると示されています。
Q6
 女性医師が働きやすい職場環境整備を一層進めていくにあたって、どのような制約があるのかお伺いします。

A6 病院経営本〉
 病院現場からは、育児や介護と仕事の両立ができる多様な勤務時間の設定や、タスクシフトによる負担軽減の推進等を求める声
 このため、専門医を安定的に確保・活用することは質の高い医療サービスの提供につながっていくことから、育児等との両立など、女性医師の定着に資するより柔軟な勤務制度の構築が重要
 しかしながら、勤務時間については地方公務員法により、国や他の地方公共団体等との均衡が求められているため、病院の実情に合わせた勤務制度を構築することは困難であるといった制約

もり愛〉医科大における女性減点問題に関して、我が会派としても要望書を提出致しました。女性医師が働きやすい社会環境を推進することは都の責務です。
 女性医師の活躍の実現に向けた働きやすい環境づくりを念頭に今後の検討を進めていただきたいと要望します。
 また、働きやすい環境を作るためにはICTを活用した業務の効率化を図ることも重要です。
 ICTを活用することで職員の働きやすさが増すばかりでなく、患者にとってもサービス向上につながっていくと考えます。
Q7
 都立病院におけるICTの活用について伺います。

A7病院経営本部〉
 都立病院では、平成15年度から電子カルテシステムを順次導入、更新しており、現在、全ての病院で効率的かつ安定的なシステム運用を実施
 電子カルテシステムの導入により、紙カルテやレントゲンフィルムの削減による関連業務の効率化に加え、患者待ち時間の短縮、各種チェック機能による医療の安全性向上など患者サービスの充実や異なる職種間で必要な診療情報を電子的に共有することによるチーム医療の推進などを実施
 また、一部の診療科において問診票の記入にタブレット端末を活用するなど、ICT機器の導入による効率化と利便性向上
 さらに、全都立、公社病院の電子カルテシステム等に蓄積された膨大な診療データを、診療や臨床研究への支援等に活用することを目的に、平成27年度から、外部の有識者等で構成する「都立・公社病院診療データバンク構想検討委員会」を設置し、現在、最終報告をとりまとめ

もり愛〉引き続きICTの活用について検討して頂きたいです。
 また、今回の報告にあったように、診療データ等を分析・活用して都民に治療の選択肢を見える化することで、患者が主体的に医療に参加できるように取り組みを期待します。
 これまで都立病院の運営上の課題などについて伺ってきましたが、都立病院経営委員会の報告では、「制度的に最も柔軟で今後の都立病院にふさわしい経営形態である一般地方独立行政法人への移行の検討」の提言がありました。
 いかなる経営形態であっても、冒頭の答弁にもありましたように、都立病院の基本的役割である行政的医療を将来にわたり提供していくことが何よりも重要です。
 現在、都立病院は採算を確保することが困難な行政的医療等にかかる経費の一部について、一般会計からの繰入金約400億円を受入れております。
Q8
 そこで、仮に地方独立行政法人化された場合、行政的医療への財源措置はどのようになるのか伺います。

A8病院経営本部〉
 病院事業を実施する場合に適用される、公営企業型地方独立行政法人は、現行の都立病院と同様に採算の確保が困難な医療などにかかる経費について、設立団体が経費を負担することが法定
 したがって、都立病院が地方独立行政法人に移行した場合にも、行政的医療の提供にかかる必要な経費は引き続き都が負担

もり愛〉 現在の都立病院と同様に行政的医療に必要な経費について、都が財源を確保する仕組みがあることを確認しました。
 高齢化の進展に伴い行政的医療の量的・質的変化、高齢者における救急医療のニーズは増加の見込み。一方で、高齢化が進んだ地域ほど入院医療費は伸びにくいと指摘されており、80歳以上人口比率が高い地域では既に入院医療費が減少し始めているところも見られると、厚生労働省の「医療費の動向調査」で指摘されております。
 このような状況下において、全国の自治体病院の経営状況は悪化傾向にあり、都立病院も同様。都立病院を取り巻く厳しい病院運営に対しては、より一層効率的な病院運営が必要であり、経営力向上に向けた運営上の課題を解決するための検討も進めて頂きたいと考えます。
 さらに、都立病院が行政的医療や地域医療の充実への貢献などの役割を果たしていくためには、どのような経営形態であったとしても都と緊密に連携して取り組んでいくことが必要です。
Q9
地方独立行政法人の場合、東京都や都議会の関与はどのようなものとなるのか伺います。

A9病院経営本部〉
 地方独立行政法人法では、公営企業型地方独立行政法人が達成すべき住民サービスや業務改善等に関する中期目標について、議会の議決を経て知事が定める
 また、法人は中期目標を達成するため、住民サービス、収支計画、料金などを中期計画として策定し、議会の議決を経て知事が認可
 さらに、各事業年度及び中期計画終了時に法人の業務実績について、評価委員会の意見を聞いて知事は評価を行い議会に報告
 このほか、都が行政的医療などの経費について行う財源措置についても、毎年度議会の予算審議の関与あり

もり愛〉地方独立行政法人は様々な機会を通じて議会が関与する仕組みが定められていることが分かりました。
 地方独立行政法人に対するチェック機能は必要だと考えます。
先も申し上げましたが、特に今後地域完結型医療を目指す上においては、地域の中にどういった医療ニーズがあり、不足している医療ニーズに都立病院がどの様に貢献して行くことができるか、公民全体を見通して地域の医療資源を考える必要があり、
また、地域包括ケアシステムの構築に向けても、医療と介護・福祉の連携を一層進めていく事が求められます。

 医療環境が変化する中でも都立病院がその役割を果たし続けるために、経営形態のあり方を検討していくことは重要です。
 病院現場の実情に向き合い、日々医療現場で業務に就いているスタッフがより働きやすい環境を作っていくとともに、医療の質向上や見える化の推進など都民サービスを充実していくという視点から引き続き検討を進めて頂きますよう申し上げ、全質問を終わります。ありがとうございました。