今回視聴したのは、2022年の「ある男」で、アマプラにて拝見しました。
シングルマザーの里枝は、宮崎にある実家の文房具店で、絵の文具を買いに来る大祐と顔見知りになる。
大祐は最近この辺に引っ越してきたおとなしい若者で、林業の職に就いていた。
2人はそれぞれが過去に起こった出来事に対し、大きな傷を持っているようで、その辺が共鳴したのか付き合うようになりやがて結婚。
里枝の息子も大祐によく懐いており、女の子も生まれ4人幸せに暮らしていた。
そんなある日、大祐が仕事中に事故で亡くなってしまう。
大祐の実家に連絡したところ、大祐の兄が訪れ、兄が遺影を見たところ、「これ弟ではありません、別人です」と言い始めます。
大祐は親兄弟とは疎遠だったこともあり、大祐の詳しいことは、大祐との出会い以後の自分たち家族の思い出しかなく、そんなこと言われてもどうしたもんか、っていうか大祐って何者なの?といった事態に追い込まれ、困った里枝は、昔、世話になった弁護士の城戸に相談することに。
城戸は里枝から遺留品を預かり、大祐が何者だったのかを調べ始める。
こういった感じで話は進んでいくのですが、ここまでで、人の陰口表現がちょいちょい出てくる。
この表現は最後まで続いており、オチの発動条件となっているが、どうもちょっとした噂話や、気に食わない人間に対する世間の感情に、差別といった感覚がどういったシチュエーションで人の心に宿るのかといったことを表現して、観客をそういった世界へいざなっているようである。
また、この世間の外圧に対し、自分ではどうしようもない境遇を持つ人達の世界を、内側と外側とで2重に描いており、逃げ出したい、自分を変えたいと願った人たちを通じて、それを垣間見た弁護士の心の葛藤としても描いている。
つまり、観客もこの弁護士同様に、物語の中へいざなわれているのである。
これは冒頭で、合わせ鏡のごとく、鏡に映った男性の絵が登場するが、正面ではなく背中をこちらに向けた絵面で、ラストで人数が3人に増えて再登場する。
つまり、増えた3人目もそうであるが、観客もその後に続いてどうぞお並び下さいといったメッセージで、こんなクソみたいな世の中なんかにいないで、新しい世界へいらっしゃいといったことでもある。
因みに本作では、大祐が何者だったのかを謎解きのように推理捜索していくが、ここで詐欺師に行きつく。
実はこの詐欺師こそが謎解きのキーパーソンであり、しかも本作で問題提起したことに対するカギを握っている人物となっている。
そしてこの作品には、なり代わりに関して3組のカップルが登場している。
妻夫木聡-真木よう子
窪田正孝-安藤サクラ
仲野太賀-清野菜名
ふた組は幸せなカップルとなるのだが、ひと組はビックリの展開となり、その原因となる役を真木よう子が演じており、プライベートで騒動を起こしているせいか、この作品で毒嫁を演じている様がやけにリアルで怖く、観客をビビらせる。
これは、安藤サクラと清野菜名の両名は愛を持った役どころで、真木よう子だけが毒であったわけで、見事なキャスティングとしか言いようがないヤバさである。
男性を弱者な被害者として描いており、女性を母性または毒として描いているのも興味深い。
という訳で今回のMVPであるが、本作のキーパーソンである詐欺師役の柄本明と、世人の中でも毒すぎる真木よう子に決定します。
こんな感じです。
・猫のユーリさんの動画
・猫ユーリ博士の動画