これまで、当ブログにて『四日市市の人件費管理問題』について、連載で取り上げてきました。


≪前回ブログ≫

【四日市市の人件費管理に切り込む!⑤】人件費の実額管理、公会計改革を適正な組織運営につなげる!

http://ameblo.jp/mori-tomohiro/entry-12091121894.html


 過去のブログでも述べていますが、コスト意識、人件費管理の徹底を行うには地方自治体の会計システムを抜本的に変えていく必要があります。


 私も市議会議員として、地方自治体の会計制度について5年間携わってきましたが、民間企業会計制度と比べるとまだまだ不十分な点が多いです。


 総務省は、全国の地方自治体に対して発生主義、複式簿記の要素が組み込まれた財務諸表(貸借対照表、行政コスト計算書、資金収支計算書、純資産変動計算書)作成の努力義務を課しています。


 四日市市においても、 平成20年度から財務諸表の作成を始めています。


 平成25年度決算において1,788ある地方自治体の内、93.7%にあたる1,675の自治体が財務書類を作成又は作成中という状況です。


 殆どの地方自治体が財務諸表を作成している訳ですが、その財務諸表を作成する基準となる公会計モデルには、様々なモデルがあります。


主な会計モデルは、「基準モデル」「総務省方式改定モデル」等です。


 四日市市は、『基準モデル』を採用して財務諸表を作成しています。


「基準モデル」は、個々の取引等について発生主義により複式仕訳を行うと共に、固定資産台帳を整備して財務諸表を作成するモデルです。


「総務省方式改定モデル」は、公有財産の状況や発生主義による取引情報を、個々の複式仕訳によらず、既存の決算統計情報を活用して作成するモデルです。


 上記のそれぞれの会計モデルの説明を読んで頂ければ分かりますが、「基準モデル」は複式仕訳を実際に行ったり固定資産台帳を作成する等より企業会計に近い考え方を取っている一方で、「総務省方式改定モデル」は複式仕訳を行わず既存の決算統計情報のデータを加工し財務諸表を作成する簡便的な方法です。


 つまり、「総務省方式改定モデル」は財務諸表を本格的に作成する技術や体力、方針が無い自治体が採用する極めて簡便的なモデルと言えます。


 財務諸表を作成している地方自治体において、その75%を超える自治体が「総務省方式改定モデル」を採用しており、四日市市が採用している「基準モデル」は全体の15%程度に留まります。



 そういった点から、四日市市は公会計制度の中でもレベルの高い水準にいるのですが、それは全体の中での相対的なレベルの話であって、企業会計制度から比べると公会計制度自体の水準が低い為、絶対的なレベルで言うと「基準モデル」もまだまだ改善が必要なレベルです。


 前回のブログで紹介した様に、部門別、事業別の財務諸表は作成されておらず、複式簿記の仕訳も財政経営課が行う期末一括仕訳となっており、日々複式簿記が採用されている訳ではありません。


 ですから、部門別での人件費管理も十分に出来ていないのです。


それを解消する会計モデルが東京都を中心とする一部の地方自治体が採用している「東京都モデル」なのです。


 「東京都モデル」では、部門毎に日々の仕訳を入力し、部門別管理が実施出来るの仕組みになっています。


 先日、「東京都モデル」を採用している町田市に視察に行きましたが、町田市は部門別、事業別の財務諸表を作成し、それを決算、予算編成に活用しています。


 人件費も各部署で毎月支払実額の仕訳を行う為、部署毎の人件費管理も支払実額で行う為、部門単位での人件費管理もリアルな数字で把握し、議論出来る訳です。


 組織を管理していくには、責任が明確化される実態の把握が必要です。


次回のブログでは、今後の四日市市が取っていくべき公会計改革の方向性についてまとめていきます。