降臨日が近づくと村には多くの人々が周辺地域から集まってきていた。
スズの家付近でも、今年の遺族と思われる数珠を持った人々が降臨日を話題に話をしている。
「今年の降臨日は随分と遅いねぇ」
「ウチのが本当に来るか判らないってのがねぇ・・・いつまでも待ってるわけにもいかないしねぇ」
「来ない方が良いって言うけどやっぱり最期に見ておきたいよねぇ」
スズは周りの話が耳に入りながら、トウマの言葉を思い出していた。
「そうだよ、来ない方がいいに決まってる・・・」
そう考えようとしても、父親ギンジの事がスズ頭から離れる事はなかった。
その夜、トウマは忍び装束のような漆黒の戦闘服に身を包んで剣術の鍛錬をしながら、考えていた。
「・・・ギンジさん、あなたは・・・」
半年前―スズの家
「ギンジさん!しっかり!がんばるんだ!スズちゃんを一人にする気か!?」
トウマは床に横たわるギンジの看病をしていた。
その周りには彼の為に調合した薬草の数々が並んでいる。
「父さん!がんばって!」
「はぁ、はぁ、トウマさん助けてくれ・・・死ぬ訳にはいかんのだ!スズの母親はこの子を産んだ時に死んでしまって・・・まだスズを一人にする訳にはいかないんだ」
「わかってる!がんばって!」
ギンジは必死に助けを求めたが、無医村であるこの村にはトウマの薬草以上の治療法は無く、ギンジの容体は既にその領域を超えていた。
「ス・・・ズ・・・ガハッ」
ギンジの激しい吐血がトウマの顔に掛かった。
トウマはこの時、顔を真っ赤に染めながら自分の無力を呪った。
「ギンジさん!」
「お父さん・・・お父さん!」
父親の死を悟るとスズはその場に泣き崩れた。