東方医学者 天宮蒼の診察6/9 | 森ソース

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絵がからっきし下手な男が小説を書いてみました。

基本的には、短編が多くなると思います。


森ソース-雨宮蒼

「愛ちゃん、辛いこともあるでしょうが、ママの分までがんばって下さい」


蒼は少女を抱きしめたまま、耳元でやさしく呟いた。


そして、腕を解くと次は目を見て問いかけた。


「悪者は笑ってたのに怖い顔だったの?」


「うん」


少女も蒼の目を見て答えた。


「教えてくれて、ありがとう、瑠璃さん行きましょう」


そう言うと、蒼は少女に手を振った


「えっ、もういいんですか?」


「ええ」


少女の病室に来てから、少し話をして、聞き出した事と言えば、


‘犯人の笑顔が怖かった’という情報だけだった。


病室にいた時間は10分にも満たない。だが、蒼は満足そうな顔で病院を出た。

面会を終え、車に戻った二人は駐車場に停めたままで話しだした。


「先生、何か判った事ありましたか?」


「えぇ、そうですねぇ、瑠璃さん、被害者の方に共通点は」


「ありきたりですが、死亡した被害者は全員、幼い子供の母親です。」


瑠璃は仕事用の手帳を開いて答えた。


そこに書かれたメモを見ながら、ふと横を見ると、蒼は携帯をいじっていた。


「話、聞いてます?何してるんですか?」


「鬼頭警部に前の2件の被害者の方の傷口の写真を送ってもらったんですよ」


蒼は当然の事の様に答えた。


「また・・・」


瑠璃は、この話題になると相変わらず呆れた表情を浮かべていた。


「これは・・・」


携帯に送られてきた傷口の画像を見て、蒼の表情は一気に曇った。


「どうかしましたか?」


今まで冷静だった蒼の顔色が変わったのを見て、瑠璃は尋ねた。


「1人目は両手首をズタズタに、二人目は頚動脈を切断されている」


「ええ、確かにその通りですが」


瑠璃は蒼の携帯を覗き込むと自分のメモと見比べながら言った。


「人は普通、傷口を押さえるもの、すると・・・数分の間苦しんで、死んでいく・・・それを見せる為に子供は殺さなかったんです、犯人はそんな様を楽しんでいるのかもしれません・・・早急に手を打たないとまた犠牲者が出る可能性が高い!」


蒼の言葉を聞いて、瑠璃は表情を一気に引きつらせた。