「検死を待ってちゃ遅いからな、堅いこと言うな」
鬼頭は瑠璃に黙ってろとでも言わんばかりの口調で言い返した。
いつもこんな事してたのか・・・
呆れ顔の瑠璃をよそに、蒼はしゃべりだす。
「うーん、これは、流石に犯人の目的までは判りませんが、犯人は、左利きで何より強い殺意があったことは確かですね」
蒼はまるで被害者を実際に診察したかの様な口ぶりで言った。
「専門外のあなたになぜそんなことが判るんですか?」
瑠璃は疑いの眼差しを向け聞いた。
「162センチ48キロ・・・上から85、57,78どうです?ぴったりでしょう?素晴らしいプロポーションです」
蒼は自信有り気に瑠璃に言い返した
「えっ!?そんなこと聴いてるんじゃないんです!」
瑠璃は、赤面して怒鳴った。
何せ、初対面の男にスリーサイズをピタリと言い当てられる事など
初めての経験であったからだ。
「これがこのせんせーの能力さ、人体、いや見たものすべてをレントゲンのように見通す目、‘診眼’」
「瑠璃さんあなた、骨格が歪んでますよ、健康な身体にこそ、健康な心が宿るもの・・・一度、私に身を委ねてみませんか?」
蒼はいたって真面目な顔で言ったが、
鬼頭は蒼の言葉にニヤニヤしながら瑠璃を見ていた。
「結構です!」
瑠璃はまた、赤面して怒鳴った。
「おい、あんまり新米をいじめるなよ」
鬼頭はニヤニヤしながら言った。
「わかりました、治療は次の機会にしましょう。これを見てください」
蒼は二人にナイフが深々と刺さったであろう被害者の傷口の写真を見せる
「この身長の人間にこのように刃物を突き刺すのは172センチの人間、それにこの傷は普通に刺した後、刃物を回しているんですよ・・・確実に殺すためにね・・・その刃物が左回りになってるんです、こうやってね」
そう言って蒼は瑠璃達に左の手首をひねって見せた。
「この方の遺族は?」
「娘が一人な、その娘も今回の被害者で国立第一病院に入院してる。父親がいなくてな・・・退院後は施設に入るそうだ」
鬼頭は蒼を一瞥して言った
「施設ですか・・・一度会いに行きましょう」
蒼は何かを思い出すかのように言った。
「悪いなぁ、俺は次の事件があるんだ、俺は歩きでいいから、高峰、お前連れてってやれ」
そう言いながら、鬼頭は席を立った。
「あ、はい」
瑠璃は返事をして、テーブルの上のキーを手に取った。
「では行きましょう。瑠璃さん」
蒼と瑠璃の二人は少女が入院しているという国立第一病院に向かった。