ここ数年で、ホント最高だよな!と私が思っているマンガ作品があります。

それはですね

 

「ザ・ファブル」です。

 

 

作者は南勝久先生、「なにわ友あれ」その前編は「ナニワトモアレ」という、大阪の走り屋いわゆる暴走族、

環状を舞台にしているので環状族ともいいますが、を舞台にした作品を15年もの長きにわたり連載されていました。

 

 

 

その作品の特徴はですね、いつもトーンがかけてある、夜を表現している。

 

そして、ドライな人の死、軽妙かつシリアスでリアルな会話、無音、そしてトボケタ味とハードボイルドな空気感ですね。

読むと、ヒリヒリする、そういう作品。

 

あと車の描写がいい。

ジェイソン・ステイサム先生の映画ワイルドスピードのすいぶん前ですからね。

全部のコマに、トーンかかっているでしょう?

 

ほぼフルトーン貼り。

今はコンピューターでトーンは簡単に載りますが、今から20年前から、どんだけトーン貼っとんねん、という絵柄です。

 

とうの昔に、暴走族も走り屋もいなくなっているし、そういう世界はもはや、世の中に存在しないはずなのに、

この「ナニワトモアレ」「なにわ友あれ」シリーズには、大阪のある時期のある青春が、すっごいリアリティで詰まっている。

しかも、高校で田舎から都会に出ちゃった人には、存在しなかった、いわゆる地元の世界です。

 

 

ヤンキー漫画?とも思うのですが、ちょっと違う。

ヤンキー漫画というのは、学校を舞台として世界を狭くすることで、ストーリーを単純化したり、またフィクションであることも伝わる。

そこでのバトルというか暴力描写は、ヤンキー漫画ゆえの様式美みたいなものがありますから、

そういうですね、暴力に対する、安心感があると思うんですね。

 

しかしですね、南勝久の描く世界は、リアルな暴力、目的なき暴力というか吹きだまり感、
しかしそこにあるリアリティには、儚さとか哲学みたいなものが浮かび上がってしまうという純文学的なものなんです。

 

強いて上げるとすれば、私には、中上健次さんの小説に通ずるものを感じました。

映画では、小栗康平監督作品ですね。

 

その南勝久のナニワトモアレは、最初の頃と最後の方ではずいぶんタッチも変わってしまうし、いわば違う作品ともいえるんですが、

その南勝久の世界観を完璧に組み立てて、連載開始しキッチリと終わらせてみせたのが、

 

「ザ・ファブル」なんです。

 

週刊ヤングマガジン』(講談社)で2014年49号から2019年51号まで連載されてました。

 

いやあ、この作品が凄いところはですね、これから解説もするんですが、

私の友人で漫画家で飲み仲間の若林健次さん、以前、同じマンションの上と下の階に住んでたんですが、

私が原作やって作画が若林先生で、いっしょに漫画もつくってたんですが、
その若林先生、他人の漫画作品を読まない人で、

私があれが面白い、これが面白い、読みなよ、といくら言っても、絶対に読まない。

読まないどころか酷評の若林先生が、あるとき

「ファブル、面白いですね、最高です」と、ご報告があった。

 

でしょでしょでしょ、と初めて若林先生と漫画のあのセリフはどうの、あのシーンはどうの、と盛り上がった。

あの若林先生をもして、最高の作品と言わしめているんですよ。

 

それがファブルです。

ストーリーは、まあいつものように割愛しますが、主人公は殺し屋です。

「殺し屋?そんな殺し屋なんて、いつの漫画だよ!」となりそうなものなんですが、

そこは、南勝久です。

 

 

キッチリ、リアルに落とし込んできます。

プロ中のプロ、天才といわれる人達が出てくるというんですが、

本当かよ!と

 

ハリウッド映画みたいな、ジェイソン・ボーンみたいな、ノンストップな始まりかたします。

この第一巻の1話から素晴らしい出だしなんです。

ぜひ、読んでほしい。

 

その主人公の佐藤アキラはひょんなことで大阪に引っ越して一年生活することになるんです。

で、見ず知らずの大阪に、もう一人の殺し屋である佐藤ヨーコと兄妹という設定で静かに暮らすことになります。

 

ま、そもそも、そんな設定で静かに暮らすことが無理なんですが、

 

 

トーンがない!

南勝久、トーンがない!

マジでトーンがない!

昼間です。

 

この家で、殺し屋の佐藤兄妹が暮らすんですが、

家が出て来たら、建物が出て来たら、

 

 

マンガの中の建物にかけては

 

プロ中のプロ、このジャンルで天才といわれる私の出番ですよね。

 

つづく