コロナウィルスの感染ルートについてですが、

これまでは、感染した人の咳やくしゃみが飛沫となって飛んで、

そこにウィルスがア存在していたときに、直接吸ってしまったり、直接触ってしまったり、

モノにくっついているのを、間接的に触ってしまうことが懸念されていましたが、

 

 

その後の検証によって、ウィルスは空気中に漂うものと、床に落ちていくものに分かれるということがわかりました。

しかも、床に落ちていくものの方が多いということ。

そして、床の素材によって、案外、ウィルスは生き続けてしまう可能性です。

 

 

現在の建築物の床素材というのは、大きく分けて3つあると思います。

石、木、プラスチック、カーペット。

 

外部やビルのエントランスでは石でしょうか、

住宅の床なら木のフローリング、

オフィスは、プラスチック系のタイルかカーペットでしょうね。

 

特に、現代の建築で非常によく使われているのはPタイルというものです。

 

 

いろんな柄や色が表現できて、汚れにくく掃除しやすく、廉価。

ということで、コンビニやスーパー、病院、学校、オフィス、ほぼすべてこのPタイルで内装されているといっても過言ではないでしょう。

しかしながら、ことコロナウィルスに関しては、他の微生物の競合がなく、

金属イオンの影響もないプラスチック素材が一番ウィルス生存時間が長いのでした。

 

ここで、おさらいすると、

 

銅の上なら1時間から3時間

段ボールの場合は4時間から8時間

ステンレスの上だと6時間から12時間

プラスチックの上だと8時間から14時間

も、ウィルスが感染能力をもっている。

 

で、建築の内装の床材料としてもっとも多く使われているのが!

プラスチック素材、Pタイルなんです。

 

ならば、感染者の人が出したウィルスが床に落ちていて、その上を歩いてしまった靴底。

そこにくっついたウィルスはどうなるでしょうか。

靴底の素材もプラスチック系ですよね。

 

じゃあ、たとえば感染の可能性のある場所を歩いてしまった靴にウィルスがくっつくと、

8時間を経過しても感染能力を秘めている。

病院に行って、コンビニに立ち寄って、駅から電車に乗って家に着いた時点で、まだまだウィルスは活性化しています。

 

そうなると、やはり一番に注意しなければならばいのは、靴底なんです。

 

だから、最初の感染ルートの絵は、こうなる。

ちなみに、電車の床もPタイルです。

 

これは、先週の緊急事態宣言後の東京都内の電車の中の様子です。

乗客も極端に減っていますし、窓も開いていますので、仮にこの中に感染者がいても、

エアロゾル感染はしずらい状況のはずです。

 

しかしながら、もし、床にウィルスが落ちているとしたら、

靴底を介してのウィルスの拡散については、無防備なことがわかりますよね。

 

 

家の出入りや、会社やお店の出入りで、手すりやつり革を触った手の消毒は気にしてるかもしれませんが、

床から靴が拾ってきたウィルスについては無防備なままだと思います。

 

だから、これをやろうね。

という話でした。

 

 

しかしながら、日本ではまだ、靴を脱ぐという習慣があります。

 

靴を脱ぐ習慣?それ習慣なんですか、当たり前じゃないんですか?

と我々は思いますが、そうじゃないんです。

世界中でも、靴を脱ぐ系の人は珍しいんです。

 

先日、ロシアのテレビ局の取材がありまして、

ロシアのHTB局のコロナ特集 4月5日

 

 

日本で感染がある程度抑えられている状況について、都市構造と歴史文化的経緯、衛生慣習について取材を受けて、コメントしました。

日本人は挨拶においてスキンシップがない、手洗い顔洗いの習慣、お風呂など湯水が豊富、アジア圏は建築も夏場の湿気の対策で換気が前提。あと「茶道」が衛生観念を儀式化し形式化したもので、日本の生活スタイルの象徴とかも言ってます。

その中で、室内で土足じゃない、靴を履き替えるのが大きいのではないか…という話もしてます。

 

 

特に、日本では家だけじゃなくて、その他の公共施設でもまあ脱ぐじゃないですか、履き替えますよね。

そもそも、小学校の頃から履き替えています。

 

 

それが、他国ではそこまでじゃないんです。

そんなような話をしました。

 

靴を履き替えるのが当たり前だった日本の建築なんですが、

明治維新、そして戦後の欧米化で靴を履いたままに変わっていったのが、

旅館からホテル、そして最近顕著に変化したのが病院でしょう。

 

ちょっと前までは、玄関でスリッパに履き替えさせられてたんですけどね。

 

そういった意味では、今、コロナウィルスの蔓延においては病院の床が一番怖いんじゃないのかな?と考えているんです。

 

というのも、一見すると、無根拠なイメージとしては、

病院建築がきっと一番、衛生的で、一番安全で、一番に感染症に優れていると思うじゃないですか?

ところが違うんです。

 

私に言わせれば、感染症に対して一番、脆弱なんじゃないのか?と思わせるのが現代の病院建築なんです。

 

たとえば、こんなスケルトンの病院があるとして、なんとなく受付はこの辺で、診療室はこの辺で、ってわかりますよね。

 

出入り口から人の動きを示す動線を記入するとこうなります。

 

こうしてみると、樹木の枝分かれのような感じですね。

人の流れもモノの流れも生物の循環系も、その機能は入力から分岐なので、似たような形態になります。

また、大勢の人たちが立ち振る舞いやすいように最短で結んでいくことが多いのも医院建築の特徴です。

 

この人の動きの中に、外との隔離度でゾーン分けをすると、こうなります。

 

エントランスから直接受付や待合につながっている。

そのゾーンは外気とつながり土足であるゾーン①としてピンクに塗ってみました。

 

そこから、ドアで隔てられたエリア、診療室とか事務関係ですが、黄色のゾーン②です。

 

さらに、外は直接つながっていないのが、黄緑色のゾーン③

 

もっと規模の大きい病院も多数ありますが、単純化して示すとだいたいこのパターンに分けられると思います。

 

大型の病院では、このゾーン①が吹き抜けや庭園だったりしてもっと立派です。

小さな病院だと、廊下スペースまでが中待合として椅子が並んでいたりしますね。

 

この図でわかるように、ほとんどの一般的な医療施設では、待合ホールと廊下(兼待合)がつながっているのです。

そして、上下階もエレベーターや階段でそのままつながっていく。

 

入ってくる人やモノと出ていく人やモノが、ほぼそのままフリーなので、空間の仕組みは

スーパーマーケットや商業施設となんら変わりないんです。

 

なぜか?というと、病院とは体の調子が悪くなった人、病気になった人、怪我をした人、急病人、治療を必要とする人が、

集まるところであって、健康な人が立て籠もる場所ではないからです。

 

つまり、空間のコンセプトとして、入ってくる人を開放している、誰でも受け入れる、オープンなのが病院なんです。

 

同時に、戦後になって致命的な感染症がほぼ克服されて数十年が経過し、あまり感染症に対して意識しなくてよくなった。

かつては不治の病として、大流行で多くの人々が亡くなった怖い病、

ペストとかコレラとかチフスとか赤痢とか天然痘とか結核が、ワクチンの開発や治療薬の開発によって克服された。

先進国に居る限り危険な感染症に遭遇したりすることがなくなった。

 

そのため、知り合いの医師にも聞きましたが、医学の現場においても感染症に対する認識というか、教育というか、対処方法とか、

どのようなことに注意しなければならないのか…おろそかになったんだそうです。

 

感染症の歴史について、こんな記事がありました。

スーパースプレッダーって? コロナ流行の今知る感染症 朝日新聞3月7日

 

わかりやすい「感染症をめぐるできごと」という年表もあるのですが、この年表をさらっと見てしまうと見逃すのですが、

時間軸がすごく変形しているんです。
 

 

ペストの流行っていうのは600年も前のことなんです。

 

600年前に大流行した病気が克服されるまで500年もかかっているんですね。

その理由は病気の原因が「細菌である」ということが見抜けなかったからです。

細菌は小さすぎて、顕微鏡の発達まで見つからなかった。

こんな小さなものが人間の体の中に入って、害をもたらすということがわからなかったんです。

 

細菌は見つけたものの、その退治の仕方を見つけるまでに50年くらいかかっています。

 

結核が不治の病じゃなくなってきたのは、戦後です。

つまり、人類はですね、感染症に勝利してきて、まだ50年くらいしか経過していないんです。

 

年表を修正すると、医学的なできごとはずーっと後半です。
それまで500年以上は感染症にはずーっとやられっぱなしです。

 


500年間はひたすら、感染を避けるしかなかった。

近付かないようにするしかなかったんですね。

 

しかし、ワクチンの開発に成功して以降は圧倒的に封じ込めに成功したので、

感染症の治療を施すケースが、一般の病院からは消えました。

 

よっぽどの未開地とか、未知の細菌やウィルスがいるかもしれないジャングルとか奥地に旅行しにいかない限りは、

普通にしていて、そうした感染症に罹ることがなくなった。

 

だから、病院建築は危険な場所ではなくなったんです。

もしろん、医師や医療関係者も自分たちが罹患を意識するケースも、

エイズや肝炎などの治療で間違って注射針を刺してしまうとか、傷に血液が付くとかがない限り、

ほとんどなくなってしまっていたのです。

 

 

逆に、意外なくらいに感染症に対して厳しく対峙しているのが、養鶏や養豚、酪農の畜産業界。

 

そして、徹底的に防御的な施設は、実は食品工場なんです。

食中毒を起こさせないために徹底的に検証を繰り返して出来上がった食品工場の空間の在り方が、

これからのコロナ対策には有効だと思うんですね。

 

そういったレベルの食品工場は日本中にたくさん存在します。

 

つづく