「築地市場移転の前に豊洲市場問題はまったく解決していない」ってことで、
先日、6月2日のことですが、東京お茶の水の明治大学のリバティタワーで講演してきました。
当日の模様は、いくつか動画サイトでもご覧いただけるようですが、
プレゼン資料をご紹介しておきます。
同時に、ちょこっと講演中の再現コメントも入れておきます。
2年前の東京都HPですが、28年に移転延期されましたけれども、豊洲市場の問題は放置されたまま。
なにも解決されていない、ということです。
最初に断言しておきますが、豊洲市場施設は出来損ないです。
その出来損ないを見て「綺麗だー」、「これでいい」と言ってる人は素人なんです。
それは、ちょうど、パソコンのケースだけを見て、「綺麗だー」、「素晴らしい」と言ってるようなものなのです。
マニアはケース無しでも自作パソコンを使ってたりします。
配線や基板も剥き出しですが、それはその方が改造が楽だったり、自由が利くからです。
つまりは、パソコンはケースではなく中身なんです。
そんな中身のない状態の建築を見て、中身と関係ない屋上で見学会をおこなう都知事の愚行は、
パソコンのケースだけを見て、立派なコンピューターに違いない、と判断しているのと同じ滑稽さなんです。
ここで、パソコンの話しをしているのには理由がありまして、パソコンはケースの外からではブラックボックスであるように、
市場というものも外からいくら見いても、ちょこっと2~3回覗いたくらいでは、本当の機能や意図は何がなんだか分からないんです。
それは、パソコンの中身である、様々な基盤や配線や部品と同じように、
市場で働く業者さんも何らかの機能に特化したひとつの部分でしかないからなんです。
みなさん、自分の職務に誠実かつ忠実に迅速に取り組んでいるわけで、
全体を把握できている人は市場内にもいません。
全体をわかっているのは、築地研究で有名な人類学者のテオドール・ベスターさんか、私だけです。
いや、この数年間、築地市場内を調べまくり歩きまくり、建築空間との関係を理解しているという意味では、
この巨大なコンピューターともいえる築地市場をタイムリーに分かっているのは、私だけでしょう。
コンピューターの機能と非常に似ているのは、大量の入力を迅速に捌き出力する。
同時多発的に処理と貯蔵がおこなわれていくということです。
コンピューターの場合には流動するものが情報というか電子信号ですが、
築地市場の場合は、情報と物体と人の具体的質量をともなう動きです。
築地市場の空間構成と機能を理解してもらうために、皆さんが体験したことがある建築として、
私がよく説明に使っているのは、空港です。
しかも、国際線と国内線の乗り換え空港をイメージしてください。
大量の人が時間どおりに同時多発的に動いている。
ひとりひとりは自己目的の充足でしかないのに、全体が有機的に機能している。
それを可能にしているのが今の市場です。
市場機能をもっと端的に表現すると、「集める」「拡げる」の繰り返しともいえます。
それは、呼吸する大きな渦と小さな渦の集合のような空間といってもいいでしょう。
そこまで、市場機能と空間が理解できれば
現在の豊洲市場施設が、いかに出来損ないかご理解いただけるでしょう。
この中身のないパソコンケースのようなものを見て、
移転できると信じ込んでいるのが、現在の都知事の姿なのです。
一昨年の市場問題PTでも、中身がまったくうまく入らないことが証明されています。
それを無視して移転日を決めてしまった都知事は今後大混乱の責任をとらせることになるし、
その事実を知りながら、
知事に適切にアドバイスできていない、知事の側近の小島敏郎氏の罪は大きいです。
では、出来損ないの②について
目指したものと相違がありながら、放置されています。
東京都は4つの目標を掲げていました。
目標の1、食の安全・安心ははなっから捨てていることがわかっています。
しかも、その危険な埋立地への対処方法。
その約束が全部うそだったということが判明しております。
土壌汚染対策法に抵触するだけえなく
環境アセスメントのやり直しの必要もあり、水質汚濁防止法にも抵触する。
最大の問題は、地下で汚染された土壌を撹拌し続け、雨水の流入により汚染物質が上昇し、
海面とつなっがった水域に地下でつながり、地上からは垂れ流しているという、
満潮干潮ごとに汚染水がかきまぜられるような構造になっていた、という問題です。
目標の2、効果的な物流は実現できませんでした。
これは、ほうぼうで繰り返し報道されたとおり、市場の空間連続性がない。
2000代以上のターレやフォークが何往復もすることを想定していない。
結果として人もモノも渋滞します。
次も、もうみなさんご存知のトラック搬入時の欠陥。
駐車できないくらい詰め詰めの駐車場計画
ウィング車が使えない荷捌き駐車場
自動車を運転したことがない人物が設計したんだと思われます。
仲卸業者さんのお店の寸法がメチャクチャです。
1.8メートル必要だった間口を1.35まで縮めて設計するという、
なんというか、真の無能とは、こういうことを言うんではないかと思います。
で、ですね、実際に車両を動かしたときの動画を紹介しました。
百聞は一見にしかず、といいますか
百回聞いてもわからないバカは1回見ても、この問題事実を無視していますが
なにもかもが狭いんです。
移転前の築地市場よりも狭く設計する、なんという愚行、なんというビフォア―・アフター、なんて無能な設計者なんでしょう。
そう思って市場問題PTで設計者ヒアリングしたんですが、実際の設計者さんはわかっていましたし、
都の指示によるもので、やむを得なかった、と悔しがっていました。が、都もそのことを公表することなく今に至っています。
Youtube動画を貼りましたので見てください。
駐車場から外に出ようとするところからです。
一昨年にわかっていた、都も立ち会いの動線の欠陥です。
市場でもっとも迅速におこなわなかればいけない荷物処理がまったくうまくいかない。
買い出し人と搬入トラックの動線もぶつかっている。
とにかく、駐車場のキャパシティが足りない。
築地に荷物を運んでこられる全国のトラッカーのみなさんが最も気にしているのは、荷物の到着時間の厳守です。
せっかく市場に早く到着しても、市場内でもたもたしたんではその努力も台無しです。
というわけで、働く自動車に関する雑誌書籍で、一部では有名な、マニアごころをくすぐる雑誌を多数出している、
芸文社さんという出版社をご紹介します。
「カミオン」というトラックに特化した雑誌の2018年5月号で、大間から築地にマグロを運ぶ運送会社さんの奮闘を描いたドキュメンタリーDVDが付属しています。
このビデオが大変すばらしいので、ちょっとここで紹介します。
ここでいったん休憩
後半に移ります。
さて、大問題の築地市場移転の豊洲市場問題なのですが、もっともっと大問題になるであろう市場問題があります。
ビッグサイトが2年近くも使えない問題です。
これは、商品見本市、ビジネス見本市が2年間開けなくなってしまうことを意味します。
見本市というのは、自動車なら自動車業界、ホテル・レストラならその業界、建材業界、宝飾業界、メガネ業界、スポーツグッズ業界、食品加工機械、ファッション業界、ガーデニング業界、通信機器業界、医療業界、・・・・
多種多様な業界の集まりです。
見本市というのは年に1~2回の頻度で日本の世界の様々な業界が集まるイベントです。
イベントといってもPRだけではありません。
そこで、仕事が売り買いされる、事業が目利きされる、取引先がせりにかけられる。
いわば、一日築地市場現象です。
つまり、建材見本市を例にあげれば、その日は「建材のための築地市場」みたいなものが、
ビッグサイトに出現します。
その2~3日の間だけ、さまざまな、ありとあらゆる建材が集められます。
参加する企業も、超有名大手一部上場企業から、この日のために企業したベンチャー、家族経営の中小企業まで、木材から壁材から屋根から、断熱材や窓やドア、金具やネジや釘のたぐいまで、北米やヨーロッパやアジアからも、小さなサンプルや大きな原寸大モックアップを組んでやってきます。
その場で商談がおこなわれます。
これを買う、あれを売る、というよりも、このビジネスのパートナーになる、この商品の代理店になる、といった具合にです。
私も過去、いくつかの建材メーカーの役員やったり開発のお手伝いやったりした関係で、この見本市のブースに出たことがあります。築地でいえば仲卸業者さんをやってみたようなものですが、、、
多くの目利きや新しい商売を探す来訪者と喧々諤々のやりとりがあったりする、そういう場です。
この見本市で仕事を生み出すのです。
そのビジネスマッチングが2年間閉鎖ということは、人間でいえば2年間、男女の出会い中止、結婚禁止、みたいなもので、
そんなことがおこなわれたら、日本が滅亡しますよね。
それがね
おこなわれようとしています。
大変な事態なんです。
見本市の発祥はドイツと言われております。
それは、ヨーロッパ大陸の中心であったということ
800年間も続いているのは、公平な市場原理という信用があるからです。
その結果、誰もが参加でき、世界にデビューできる産業の入口となっています。
今でも世界最大級の見本市・メッセはドイツで開かれています。
それだけ継続してきた、毎年おこなわれてきた、という安定の歴史が重要なのです。
それが・・・2年も閉鎖
しかも・・・オリンピックのメディアセンターで?
世界中の見本市関係者の人が目を丸くしていました。
ホワイ?ジャパニーズピーポー
オリンぴくとメッセ、カンケイありますか?
すトゅーぴとでしょ、だれ?そんなこと言ってるの?
だそうです。
もし、オリンピックメディアセンターが必要ならどこかに新築すればいい。
なぜなら、見本市は産業の出発点なので、
いわば、経済の種子みたいなものだから、
その川上で、スタートで、息の根を止めると、
産業の未来が連鎖的に死ぬ。
数年後の日本経済が必然的に崩壊する。
まず、ステージたる見本市産業だけで1兆円です。
そのステージに乗っている産業は300種以上。
日本の就労人口6000万人を超える人々に影響がある。
ホント、今すぐに目を覚ませよ、東京都。
ではですね、五輪メディアセンターってどんだけすごい施設なんじゃい!
どんだけ重要な施設なんじゃい!
日本経済を破壊してまで作ろうとしている五輪メディアセンターってよっぽどすごいのか?
と調べてみますと
ロンドン五輪のメディアセンターですが
大したことない四角四面の四階建てくらいのもの
イオンモールと大差ない。
まあ、臨時のTV局みたいなものですから、スタジオと事務所が並んでるだけですからね。
大事なのは熱を出す通信機材のスタジオの空調です。
リオデジャネイロの五輪メディアセンターですが
同じく、四角四面の四階建てくらいのもの
がらんどう、鉄骨の単純なハコ、倉庫
しかも、どっかで見たことある感じ
豊洲じゃん、豊洲の中身のないパソコンケースだけ建物じゃん。
ということで、使えない使えない使えないと思っていた、豊洲市場施設。
五輪メディアセンターに使えるじゃん!ということで
入れてみました。
ピッタリ入ります。
ロンドン五輪のメディアセンターが!
中身も入れてみましたよ。
ロンドン五輪メディアセンターとしてのプランを当てはめてみました!
ピッタリ過ぎる!
これでいい。
むしろ、初めから五輪メディアセンターとして考えてたんじゃないのか
というくらいの当てはまり具合。
ならば、五輪後も壊すことなく、五輪メディアセンターという名の臨時のTV局は
本式のテレビ局にすればいい。
ならば、もったいなくない!
実際に、ロンドン五輪のメディアセンター跡地は
そういったメディア系企業の拠点となっています。
デジタルメディア拠点施設、ロンドン「ヒアイースト」
直訳すれば、デジタルタウン「そのまんま東」
それがいい。
むしろその方が、東京の都市計画的にも最適な計画。
なぜならば、発展する産業は城下町を形成するからです。
逆にいえば、城づくりは産業誘致なのです。
それは、ちょうど築地市場がわかりやすく典型的な例ですが、
市場というのはいわば「場内」といわれています。
ツウは、場(ジョー)とかいいますね。
そういえば、競艇の人達も競艇場のことを、ジョーと言ってますね。
ツウぶりたい人は一度、場外で試してみてください。
「ジョーの人?」とか、「今日、ジョーはどう?」とか、
その場内に対し、同じように発展してきたのが「場外」
場内と場外は別だ、という人がいますが、それは管轄や所有者が公か民か、の違いです。
公的に設置された市場施設内を「場内市場」、その周りに発展してきたのが「場外市場」と読んでいるのです。
その市場内部に無く、市場内部に必要なものを供給し、
同時に市場から出てくるものを一般に拡散しているのが場外市場です。
みなさんが観光地として知っているのは場外市場なんです。
そしてTVで紹介されている築地市場の風景も、実際は場外市場であることがほとんどです。
それは!場内の取材には許可が必要であり、
取材内容や取材場所を規制し、報道管制しているからです。
なので!市場問題でも、市場内の本当のこと、市場内の実際の状況、市場内での事実取材、
そういったものが、ほとんどというか全くできていないのも事実です。
まず、この取材規制、報道管制を取り除かせねば、真実の市場内部の姿は見えません。
偽魚河岸三代目とそれにくっついてる議員がマスコミでしゃべっていることのほとんどは嘘です。
さて、なぜ、場外が生じたかというと社会的要請や時代の要請です。
つまりは、自然発生的な自由経済が生んだ城下町なのです。
そのような城下町のひとつにマスコミ産業の城下町があります。
それはTV局を中心とした城下町ですね。
TV局というのも局だけでは存在していなくて、その周辺にTVの業務にかかわる非常にたくさんの業者が集まっています。
制作プロダクション、編集室、タレント事務所、モデル事務所、美術製作、音声処理、機械メンテ、ロケバス、飲食関連、等々
多くの人々が働くという意味で、局という城を中心とした城下町が形成されます。
TV局の空間と市場の空間も大変よく似ておりまして、早朝から夜中まで動いている。
情報も鮮度が命、タイムリーならスクープで番組の評価も上がりますが、情報も遅れれば無価値になる。
多局に先駆けて自社で情報ソースやコメンテータ、タレントさんを抑えたい。
生放送は修正がきかないのぶっつけ本番、スピードと精度が命、時間とネタの目利き力が必要。
各製作会社は築地の仲卸さんとか、老舗のすし屋さんとか料亭みたいなものです。
プロとプロが情報という素材をつかって、タレントさんの加工や仕入れの目利き勝負をしている。
テレビ局は情報の市場です。
早朝まら深夜まで、不夜城ともいわれるのがTV局ですね。
そういえばここでもツウは、局(キョク)とかいいますね。
都内に大きなテレビの城と城下町がかつて5か所ありました。
NHKの神南城と渋谷の城下町
日テレの麹町城と番町・麹町
TBSの赤坂城と赤坂・乃木坂の城下町
テレ朝の六本木城と麻布・六本木の城下町
フジTVの河田町城と河和田町・荒木町
そして東京タワー下の砦にテレ東
それらの、各城下町が数珠つなぎのように連鎖して、メディア城下町を形成してます。
いえ、してました。
非常に珍しいことが起きたのですが、そのうちの一城が街から消えました。
それがフジテレビです。
上の地図でも入りきらない海の方に出て行ったのです、局のみ単独で。
行った先はお台場というところですが、周囲に街がありませんでした。
周囲に城下町が形成可能な街区もありませんでした。
結果として、フジTVだけが、裸城で戦いを余儀なくされています。
しかも、この城へ向かう交通機関が、わざと遠回りするようにルート設定された遊覧電車かよ!の、
ゆるゆるの「ゆりかもめ」しかありません。
急ぐ人はみなタクシーになるのですが、レインボーブリッジしかルートがないので、
このルートが渋滞したり、暴風雨や雪で止まってしまうと、間に合わなかったりします。
なので!
フジテレビが豊洲市場の跡地にくれば
メディア城下町に再接続されて、ニューメディアタウンとして大復活すると思うのです。
で、お台場の方はホテルに改装です。
局で働く方々の建物への評価を耳にして、
何度か行ってみてわかったことですが、
この建築はテレビ局よりもホテルに向いています。
つづく