田井中家の考察つづきです。

ということで、なんとなくの玄関周りからリビングまでの構成を想定してみたわけですが、
再度本編を眺めていたところ、驚くべきことに気づいたんです。

それは、田井中家は第1期から第2期放映までの間に、
ササッとリフォームしていたんですよ。
ちょうど律ちゃんが高校2年の冬から、3年生までの間のどこかで、

この第1期の玄関内部を見てください。

質素ですが意外と風格があるつくりです。
しっくい塗り風の白壁に桧とか白木の柾目っぽい板で構成されています。

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そして、これが2期の玄関内部です。
なんかモダンになっています。
扉も木目シートとかMDFコーティング系の新建材に変わっています。

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これは、同じ玄関ホールですが、素材が明らかに違いますね。

まず、1期の時点では壁の色からして綺麗になっています。
一番大きな違いは、内装が真壁から大壁になっていることです。
真壁(しんかべ)というのは、
昔の伝統木造工法のように柱や梁をむき出しにするように表現する壁の構成方法。
一方、大壁(おおかべ)というのは、柱や梁を隠すように壁仕上げをする構成方法のことです。

さらに、律ちゃん2年生時には、トイレの扉はそのままですが玄関ホールの突き当たりに扉があります。
3年生のときの玄関ホールにはトイレと並んで扉がありますね。
フローリングもくすんだ板張りから、赤茶色系のツヤツヤしたもの、おそらくカリンフローリングに新調されています。

リフォーム前後の玄関周りはこんな感じです。

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せっかくビフォアーアフターをしているのに、仕上げ以外はなにがどう変化したのかさっぱりわかりません。
玄関ホールの奥行きが出たくらいでしょうかねえ。
ちっとも劇的ではないビフォアー・アフターです。
もともとの真壁づくりの日本家屋の内装を洋風にリフォームしたのは間違いないようです。

そういった意味では、あの掘り炬燵式のダイニングや、コの字型の低い作りつけ収納、レッドシダーかチークのような板張り壁面なんかも新調したものでしょう。

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ともかく、このリフォームで綺麗になった家が嬉しくて、
律っちゃんは軽音楽部のみんなをご招待したんではないでしょうか。

田井中さんちのご両親は意外と趣味人で普請道楽なんです。

そうなると、田井中家での一番の疑問が氷解してきます。
あの謎のへっこみとH型鋼材スチールのフレームの存在です。

皆さんも道を歩いていて、たまにこういったH型鋼によるフレームが建物前面に
配されているのを見たことはありませんか?
普通、こういったケースはRC打ち放し建物などに装飾としてついていることが
多い処理です。
マンション入り口とかにも見られますね。

しかし、田井中家は明らかに在来木造住宅。そこに鉄骨フレームを設置。
しかも駐車スペースにまでこのフレーム構造物が存在しています。
これは明らかにかざりなんてものではない、増築に向けた確固たる意思。

となると、
謎のへっこみ部分も増築したときの接続部として構想していることになります。

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なんで、こんな手の込んだことをするの?
と思われがちですが、きっと現況ではこの敷地エリアでは法的に建ペイ率制限が、
厳しかったんではないかと思われます。
建ペイ率というのは、敷地の何パーセントまで建物が覆っていいのかという制限で、
これが厳しいと、広い敷地を入手しても建物をいっぱいに建てることはできないのです。
たまに閑静な住宅地に存在するのですが、建ペイ率40%容積80%というエリアに
田井中家は立地しているんではないでしょうか?

それで、後工事でじわじわと、もしくは法改正を見越してあらかじめ構造部材を新築時に設置済みなのかもしれません。
そんな裏ワザを駆使できるということは、

変形プランの平沢さん家が建築通と思っていましたが、実はけいおん!の中でも、
一見地味に見えながら田井中さん家が一番の建築マニアなのかもしれません。
もしくは田井中父は建築のプロではないかと思われるのです。