ヒグマとツキノワグマは遺伝子的に交雑が起こる可能性は低いが、完全には否定できない。

 

 

ヒグマのようなツキノワグマが出ているという話があり、両者の雑種だといううわさがあります。

実際、両者は種が違うので雑種は起こりにくいが、仮に雑種が誕生したとしてもF1(雑種第一代)が誕生したとしてもF2以降はまず起こらないだろう、というのが最も妥当な表現だと思います。

 

本来「種」というものは「種は実際にあるいは潜在的に相互交配する自然集団のグループであり、他の同様の集団から生殖的に隔離されている(マイヤー 1942年)」、wikipedia を引用すると「同地域に分布する生物集団が自然条件下で交配し、子孫を残すならば、それを同一の種とみなす」であり、特にほ乳類では雑種は起きないか、起きても雑種としてはほぼ固定しません。

 

しかし、ほ乳類でもイヌ属では交雑が起きており、ヒョウ属でも有る程度までは交雑が可能だと言われています。

 

イヌ属やヒョウ属と同じ食肉目のクマ属についても wikipedia に交雑可否の表が載っているのですが、今回はこれについておかしな話が出ているので話をしたいと思います。この表の「×」は交雑可能性があるものを指していと思われます。なぜならハイイログマ(Ursus arctos、ヒグマの亜種)とホッキョクグマ(Ursus maritimus)は交雑可能だからです。この表を見るとツキノワグマ(Ursus thibetanus)とヒグマは、ツキノワグマ(オス)×ヒグマ(メス)では交雑不可能ですが、ツキノワグマ(メス)×ヒグマ(オス)では交雑可能になっています。

 

今回この話をとりあげたのは「この表はソースが記されていないので信頼できない」という話がインターネット上でまことしやかに出回っているからです。ところが少なくとも wikipedia には「A. Gray, 1972, «Mammalian Hybrids», second edition」と書かれており、その本が存在することも確認できました。

 

 

本当にこの本に載っているのか、またこのヒョウの内容が正しいかどうかはともかく、ソースが明らかでないというのはこれを言っている人達が単に wikipedia をきちんと見ていないだけだと思います。

 

最後に、ヒグマとツキノワグマの交雑は理論上は可能でも雑種としては固定されることはまずないでしょうし、交雑自体も北海道と本州をヒグマが渡った事例がないこと、大きさが違うことなどによりほぼ不可能とは思いますので、勘違いして交雑種が存在するとは思わない方が良いと思います。

 

 

(表も一応載せておきます。wikipedia から消えるかもしれませんので…)