飯塚事件の再審棄却の福岡地裁が決定は妥当

 
本日、飯塚事件の第二次再審請求審が地裁で棄却されました。
今回の再審請求審の根拠として2つの証言がありましたが、地裁は証言を認めませんでした。
地裁の決定文がRKBオンラインに載っていましたので引用します。
 

主文

本件再審請求を棄却する

 

理由の骨子

1 本件は、女児2人に対する略取誘拐、殺人、死体遺棄の罪により事件本人を死刑に処する旨の確定判決に対し、その妻が2度目の再審請求をした事案である。当審において、A及びBの証人尋問が実施され、弁護人は、主にこれら2名の証言が再審を開始すべき新証拠に該当すると主張するから、以下、その信用性を中心に検討する。

2 A証言について

 確定判決は、Aの検察官調書等に基づいて、事件当日、被害者両名を最後に目撃したのはAであると認定し、犯行現場を特定している。

これに対し、Aは、当審において、被害者両名を目撃したのは事件当日では無かったのに、捜査機関に無理矢理記憶と異なる調書を作成されてしまったと述べ、各調書の内容は、目撃日時、場所、内容いずれについても自らの記憶に反する部分があると証言する。

 しかし、Aの警察官調書が作成されたのは、事件発生から約10日後のことであり、客観的証拠や他の目撃者の存否を含め未だ捜査が流動的な状況にあったにもかかわらず、目撃日時、場所から内容に至るまで、捜査機関が無理にAの記憶に反する調書を作成する動機、必要性は見出せない。

また、Aの各調書は、具体性に富む一方で、他の証拠と整合しない点や、作成時期に応じて記憶の減退が反映されたと見受けられる点も含まれており、捜査機関がAの供述内容を歪めて作成したとは考えにくい内容にもなっている。

これらを踏まえると、捜査機関が、無理やりAの記憶とは異なる調書を作成したとは考えられない。

さらに、Aは、目撃日時、場所という核心部分について、弁護人作成の供述録取書からでさえ、合理的な理由なく、供述を変遷させている。

以上によれば、当審におけるA証言は信用できない。

 

3 B証言について

 Bは、当審において、事件当日、女の子2名が乗った不審車両を目撃し、しかもその女の子2名は間違いなく被害者両名と同じ小学校1年生で、顔も被害者両名と似ていたと証言する。

しかし、Bは、目撃した女の子2名と被害者両名のどこが似ていたのかという質問に対しても、全体の雰囲気が似ていたと繰り返すばかりで、似ていたと判断した具体的根拠を全く示すことができていない。

また、Bは、目撃した女の子らにつき、服装などの目につきやすい特徴については記憶がないと述べ、ランドセルの色については記憶違いもしている一方、本件から26年経った今でも、車で追い越しざまに目撃した面識のない女の子2名の顔をはっきり覚えているという供述内容自体、不自然な感が否めない。

さらに、Bは、目撃時刻についても、弁護士作成の2通の供述録取書と証人尋問を通じて変遷を重ねており、年月の経過に伴い、記憶が曖昧になっていることを自認するに至っている。

加えて、Bの目撃内容自体、被害者両名の死亡時刻と抵触する上、関係各所の位置関係に照らすと、犯人の行動としても不自然である。以上によれば、B証言は信用できない。

 

4 以上のほか、当審において弁護人が提出した証拠は、いずれも無罪を言い渡すべきことが明らかな証拠とは認められない。

 

よって、本件再審請求は理由がない。

 

福岡地方裁判所

 

今回、被害者の最後の目撃者であるA氏は「被害者両名を目撃したのは事件当日では無かったのに、捜査機関に無理矢理記憶と異なる調書を作成されてしまった」と証言したと弁護団は主張しました。

これに対して地裁は警察官調書は事件発生から10日後であったこと、調書が他の証言と整合しない点、複数の作成時期の調書で作成時期に応じて記憶の減衰が反映されていることからも無理やり作成した調書にサインさせたとは考えにくい点、弁護人作成の調書からも内容が変わっているため、信用できないと判断しました。

 

また、新たにB氏が「事件当日に八木山バイパスで軽バンに乗っている被害者を目撃していた」という内容を証言していました。これに対して地裁は「被害者であることに間違いはない」と言いつつも、その証拠については全体の雰囲気が似ていたと繰り返すばかりで、似ていたと判断した具体的根拠を全く示すことができなかったこと、ランドセルの色についても間違っていること、それでも「被害者であることに間違いはない」という内容が不自然なこと、また、目撃時刻も供述調書と裁判所での証人尋問でも整合性が取れていないことも、記憶があいまいになっていることをB氏が自認していることからも信用できないと判断しました。

 

これらの内容はニュースを見ながらも想定されていた内容ですので、地裁の判決は妥当だと思います。

弁護側は抗告をしていくと思いますが、上記証言を確証づけるだけの証拠を出さないとおそらく棄却されていくでしょう。