思い出に浸りながら、散策をして時間を潰し、あのベンチに座り夕焼け空を見ていた。
「懐かしい。後3年・・・。恭太は来てくれるのかな?それとも来ないのかな?」
少し冷めたコーヒーを口にする。
気温も下がり、帰ろうとしたとき
「アンナちゃん」
瑞穂だ。
「えっ?なんでここが分ったの?」
「彼じゃ無くてゴメンね。スタッフさんに頼まれて。今日もしかしたら帰ってこないかもしれないから、迎えに行ってきてって。」
スタッフでもある為、おおよその行き先は伝えてある。
「そっか。でも遠かったでしょ?危なくなかった?変な人から声掛けられなかった?」
少しだけからかう。するといつもの中性的な顔から、男の顔つきに変わり抱き寄せ耳元で
「俺だって男って事忘れないで。」
と囁かれた。
アンナは、ただただうなずくしか出来なかった。かわいい瑞穂から男に変わる瑞穂のギャップにドキッとなり、耳が真っ赤になる。
「アンナちゃん、寒いから手繋ごっ」
いつもの口調。もう訳がわかんない。
言われるがままに手をつないで歩き出す。まるであの時を知っているかのようにコートのポケットの中に手を入れる。
そのやりとりを遠目でだれかが見ていたが、アンナは気づいていない。
「俺のこと忘れてたか・・・。」
男は反対側に歩き出す。