仏教の瞑想法と修行体系 -51ページ目

「清浄道論」(上座部):観(総論)

最初に「清浄道論」の「観」の瞑想階梯の全体像を説明します。

「清浄道論」の7清浄の体系の中で、「観」に対応する段階は、

>「見清浄」→「度疑清浄」→「道非道智見清浄」→「行道智見清浄」→「智見清浄」

の5清浄です。

最初の4つの清浄は有漏の世間智、最後の「智見清浄」は、四沙門の段階の無漏の出世間智です。


最初の「見清浄」は、名色(精神と物質)を知り、心身に私としての実体はなく、ただ無常である様々な名と色があるのみである理解する段階です。
より細かくは、名の認識と、色の認識の2段階からなります。
これは「苦諦」の理解に相当します。

次の「度疑清浄」は、名色の因縁を知って、輪廻など三世に関する疑惑をなくす段階です。
これは「集諦」の理解に相当します。

3つ目の「道非道智見清浄」は、正しい修行道と非道を区別する段階です。
北伝や大乗仏教の加行道段階に当たると思います。
より細かくは、「聚思惟」と「生滅随観智」などからなります。
これは「道諦」の理解に相当します。

4つ目の「行道智見清浄」は、正しい修行の過程を知る段階です。
より細かくは、「八智」と呼ばれる8つの智と、総まとめ的な「随順智」からなります。
これも「道諦」の理解に相当するのかもしれません。 

最後の「智見清浄」への移行段階として「種姓智」があります。

「智見清浄」は、煩悩を離れて四諦を直接知る段階です。
北伝や大乗仏教の見道段階以降に当たると思います。
より細かくは、「四道智」からなります。
これは、「滅諦」の理解に相当するでしょう。


また、5清浄の段階は、大きく「三遍知」という観点からも捉えられます。
「三遍知」は、

>「知遍知」→「度遍知」→「断遍知」

の3段階からなります。

「知遍知」は、名色の各個別相を認識する知です。
実体(法)としての個々の名と色を分別し、その因果関係を認識します。
「見清浄」と「度疑清浄」がこれに当たります。

次の「度遍知」は、個々の名色の共通相(苦・無常・無我)を認識する知です。
「道非道智見清浄」と、「行道智見清浄」の最初(生滅随観智)がこれに当たります。

最後の「断遍知」は、名色が常なるもの、楽なもの、我であるという認識の間違いをなくし、執着を絶つ知です。
「行道智見清浄」の最初(生滅随観智)以外は、「断遍知」でもありますが、同時にまだ、2つ目の「度遍知」の側面も持っています。

5清浄目の「智見清浄」は純粋に「断遍知」です。

世間智・有漏

知遍知
見清浄
分別智
度疑清浄
法住智・如実智
度遍知
道非道智見清浄
聚思惟
生滅随観智
行道智見清浄
生滅随観智
度遍知・断遍知
壊滅随観智
怖畏智
過患随観智
厭離随観智
脱欲智
省察髄観智
行捨智
随順智
 
断遍知
 
種姓智
出世間智・無漏
智見清浄
預流道智
一来道智
不還道智
阿羅漢道智