「成唯識論」(唯識派:護法):各論
続いて、「成唯識論」の五位(五道)を具体的に説明しましょう。
<資糧位(資糧道)>
四諦と唯識の教説を聞いて学ぶのが「資糧道」です。
同時に、「六波羅蜜多」と「三十七菩提分法」や利他行にも励みます。
利他行としては、「四摂事(布施・愛語・利行・同事)」の行為と、「四無量」の「止」の瞑想があります。
他に「止」や「観」に関する具体的な記述はありません。
<加行位(加行道)>
止観によって教説を思索して、後天的な(分別起の)煩悩障を抑えるのが「加行道」です。
具体的には、「倶舎論」、「現観荘厳論」と同じく、「四善根」の瞑想を行います。
その特徴は、「倶舎論」とは違って、四諦を対象にしたり、四念所を行うのではなく、「唯識観」と呼ばれる唯識派の教学に沿った観法を行う点です。
主客の空を認識するという点では「現観荘厳論」と似ています。
「四善根」の最初の2段階は「四尋思観」と呼ばれます。
具体的には、認識の対象である言葉・概念・主語性・述語性の4つは仮の存在であり、実在しないと観察・思索します(法無我)。
第1段階の「煖(なん)」の瞑想は、「明得定」と呼ばれます。
第2段階の「頂」は、より思索を深める段階で、その瞑想は「明増定」と呼ばれます。
後半の2段階は「四如実智観」と呼ばれます。
具体的には、先の認識の4つの対象を作り出した主体も存在しないと観察・思索します(人無我)。
第3段階の「忍」では、第四禅で、対象に続いて主体の空を思索します。
その瞑想は「印順定」と呼ばれます。
第4段階の「世第一法」では、第四禅で主客同時に空を思索します。
次の刹那で通達位に達して真如を体得できるので、その瞑想は「無間定」と呼ばれます。
<通達位(見道)>
無漏で無概念の「無分別智」によってあるがままの真如を見る段階です。
これによって、後天的な煩悩障を断じます。
そして、「妙観察智」と「平等智」が意識と末那識から生じます。
「見道」は大きく「真見道」と「相見道」の2段階から構成されます。
「真見道」は無概念の「無分別智」による認識です。
「相見道」はその認識を後で「後得智」によって概念的に認識します。
それを四諦の観察によって行います。
「後得智」は大乗仏教が重視する、利他に必要な智慧です。
さらにどちらも、「無間道」、「解脱道」から構成されます。
「成唯識論」の見道は、「倶舎論」、「現観荘厳論」をベースにしていますが、より複雑な構成になっています。
四諦の観察は「後得智」の段階のみになっています。
また、「後得智」を対象にした「後得智」というようなメタレベルな智を求めています。
「真見道」では、「無分別智」(般若学で言う「等引智」)によって真如を認識し、煩悩を断じます。
「一心真見道」とも呼びます。
主客の空を無概念で直観的に認識した時点で、「唯識に住する」という状態になります。
その「無間道」では、分別起の煩悩障と所知障の「種子」を断じます。
これは世第一法からの一刹那で行います。
「解脱道」では、煩悩の「習気(香のように残る影響)」を断じます。
これは「無間道」の次の一刹那で行います。
「倶舎論」、「現観荘厳論」では「煩悩を断じる」→「断じたことを確証して離れる」という2段階だったものが、「成唯識論」では、唯識の種子の考え方で捉え直され、「種子を断じる」→「習気を断じる」の2段階になっています。
2段階なので「二心真見道」と表現しても良さそうですが、「無分別智」だからか、あえて「一心真見道」と表現するのでしょうか。
「相見道」では、「後得智」(無漏の分別知)によって「真見道」で得た認識を理解しなおして、衆生救済を決意します。
「相見道」は、「三心相見道」と「十六心相見道」の2つの観法があります。
「三心相見道」は主客の空を対象にし、「十六心相見道」は、四諦を対象にします。
「三心相見道」の「無間道」では、まず主体である自己(我)が空であると観察します。
次に、五蘊をはじめ諸法が空であると見ます。
この2つを「法智」と呼びます。
「解脱道」では、自己と諸法を同時に空であると見ます。
これを「類智」と呼びます。
「十六心相見道」では、四諦のそれぞれを対象にして順に、4段階の智(法智忍→法智→類智忍→類智)で観察します。
これを2種類の方法で行います。
1つは、対象である「真如」と、主体である「無分別智」を対象にして、四諦に関する観察を行います。(四諦×二取×二道)
それぞれには次のような4段階があります。
・法智忍:煩悩の種子を断じることを確認(真見道の無間道の確認)
・法智 :煩悩の種子を断じたことを確認(真見道の無間道の確認)
・類智忍:以上の2智を確認
・類智 :類智忍を確証
「法智」を得た時点で、無漏の分析的な智慧が生まれるので、「類智忍」と「類智」はそれで観察します。
もう一つは、説一切有部(倶舎論)と同じで、上下2界で行います。(四諦×二界×二道)
次の4段階で行われます。
・法智忍:欲界の四諦を観察(真見道の無間道の認識によって)
・法智 :欲界の四諦を観察(真見道の解脱道の見分によって)
・類智忍:色界・無色界の四諦を観察(真見道の無間道の見分によって)
・類智 :色界・無色界の四諦を観察(真見道の解脱道の見分によって)
この「見道」を修習することで、菩薩の十地の最初である「極喜地」に到達します。
<修習位(修道)>
波羅蜜を行じながら先天的な(任運起の・倶生起の)煩悩障と所知障(部派仏教にはない、法我執)の種子と習気を断じます。
そして、「妙観察智」と「平等智」が成長します。
菩薩道の十地では、下記のように、各段階でそれぞれ「十勝行(十波羅蜜多)」を修します。
・極喜地(施波羅蜜多):初めて無漏無分別智を発し、人法二空を証し菩提心を起こす
・離垢地(戒波羅蜜多):清浄な戒を具して、微細な煩悩の垢からも離れる(ここから修道)
・発光地(忍波羅蜜多):優れた定と記憶を成就し、智慧の光を発する
・焔慧地(精進波羅蜜多):三十七菩提分法に安住し、煩悩を焼き尽くす智慧が増大する
・極難勝地(定波羅蜜多):四諦を証する無分別智と、世間の技術・学芸を修する有分別智の二者を具する
・現前地(般若波羅蜜多):十二縁起を観ずる清浄な般若智を生じる
・遠行地(方便波羅蜜多):無相観を修して意識的な計らいの限界まで至り、声聞・独覚の世界を超える
・不動地(願波羅蜜多):無分別智が自然に常に働く(煩悩障が断じられ、以降は無漏智のみ)
・善慧地(力波羅蜜多):自在に言葉を操って説法を行う
・法雲地(智波羅蜜多):一切法を縁ずる大法智を生じ、「金剛喩定」を起こす(残しておいた煩悩を断じる)
<究極位(無学道)>
「究極位」は仏となった段階です。
修習位の「金剛喩定」で煩悩を断じた次の刹那に到達します。
煩悩障をなくすことで、「大涅槃」、「自性身」を獲得します。
また、「大円鏡智」と「成所作智」が生まれ・完成し、「妙観察智」と「平等智」が完成します。
所知障をなくすことで、「大菩提」、「法身(仏の三身)」を獲得します。
唯識派の涅槃は「大涅槃」と「大菩提」を併せ持つ涅槃で、「無住処涅槃」と呼ばれます。
これは、自由に輪廻世界に現れて人を救うことができるという、大乗仏教が目指す涅槃です。
<資糧位(資糧道)>
四諦と唯識の教説を聞いて学ぶのが「資糧道」です。
同時に、「六波羅蜜多」と「三十七菩提分法」や利他行にも励みます。
利他行としては、「四摂事(布施・愛語・利行・同事)」の行為と、「四無量」の「止」の瞑想があります。
他に「止」や「観」に関する具体的な記述はありません。
<加行位(加行道)>
止観によって教説を思索して、後天的な(分別起の)煩悩障を抑えるのが「加行道」です。
具体的には、「倶舎論」、「現観荘厳論」と同じく、「四善根」の瞑想を行います。
その特徴は、「倶舎論」とは違って、四諦を対象にしたり、四念所を行うのではなく、「唯識観」と呼ばれる唯識派の教学に沿った観法を行う点です。
主客の空を認識するという点では「現観荘厳論」と似ています。
「四善根」の最初の2段階は「四尋思観」と呼ばれます。
具体的には、認識の対象である言葉・概念・主語性・述語性の4つは仮の存在であり、実在しないと観察・思索します(法無我)。
第1段階の「煖(なん)」の瞑想は、「明得定」と呼ばれます。
第2段階の「頂」は、より思索を深める段階で、その瞑想は「明増定」と呼ばれます。
後半の2段階は「四如実智観」と呼ばれます。
具体的には、先の認識の4つの対象を作り出した主体も存在しないと観察・思索します(人無我)。
第3段階の「忍」では、第四禅で、対象に続いて主体の空を思索します。
その瞑想は「印順定」と呼ばれます。
第4段階の「世第一法」では、第四禅で主客同時に空を思索します。
次の刹那で通達位に達して真如を体得できるので、その瞑想は「無間定」と呼ばれます。
<通達位(見道)>
無漏で無概念の「無分別智」によってあるがままの真如を見る段階です。
これによって、後天的な煩悩障を断じます。
そして、「妙観察智」と「平等智」が意識と末那識から生じます。
「見道」は大きく「真見道」と「相見道」の2段階から構成されます。
「真見道」は無概念の「無分別智」による認識です。
「相見道」はその認識を後で「後得智」によって概念的に認識します。
それを四諦の観察によって行います。
「後得智」は大乗仏教が重視する、利他に必要な智慧です。
さらにどちらも、「無間道」、「解脱道」から構成されます。
「成唯識論」の見道は、「倶舎論」、「現観荘厳論」をベースにしていますが、より複雑な構成になっています。
四諦の観察は「後得智」の段階のみになっています。
また、「後得智」を対象にした「後得智」というようなメタレベルな智を求めています。
「真見道」では、「無分別智」(般若学で言う「等引智」)によって真如を認識し、煩悩を断じます。
「一心真見道」とも呼びます。
主客の空を無概念で直観的に認識した時点で、「唯識に住する」という状態になります。
その「無間道」では、分別起の煩悩障と所知障の「種子」を断じます。
これは世第一法からの一刹那で行います。
「解脱道」では、煩悩の「習気(香のように残る影響)」を断じます。
これは「無間道」の次の一刹那で行います。
「倶舎論」、「現観荘厳論」では「煩悩を断じる」→「断じたことを確証して離れる」という2段階だったものが、「成唯識論」では、唯識の種子の考え方で捉え直され、「種子を断じる」→「習気を断じる」の2段階になっています。
2段階なので「二心真見道」と表現しても良さそうですが、「無分別智」だからか、あえて「一心真見道」と表現するのでしょうか。
「相見道」では、「後得智」(無漏の分別知)によって「真見道」で得た認識を理解しなおして、衆生救済を決意します。
「相見道」は、「三心相見道」と「十六心相見道」の2つの観法があります。
「三心相見道」は主客の空を対象にし、「十六心相見道」は、四諦を対象にします。
「三心相見道」の「無間道」では、まず主体である自己(我)が空であると観察します。
次に、五蘊をはじめ諸法が空であると見ます。
この2つを「法智」と呼びます。
「解脱道」では、自己と諸法を同時に空であると見ます。
これを「類智」と呼びます。
「十六心相見道」では、四諦のそれぞれを対象にして順に、4段階の智(法智忍→法智→類智忍→類智)で観察します。
これを2種類の方法で行います。
1つは、対象である「真如」と、主体である「無分別智」を対象にして、四諦に関する観察を行います。(四諦×二取×二道)
それぞれには次のような4段階があります。
・法智忍:煩悩の種子を断じることを確認(真見道の無間道の確認)
・法智 :煩悩の種子を断じたことを確認(真見道の無間道の確認)
・類智忍:以上の2智を確認
・類智 :類智忍を確証
「法智」を得た時点で、無漏の分析的な智慧が生まれるので、「類智忍」と「類智」はそれで観察します。
もう一つは、説一切有部(倶舎論)と同じで、上下2界で行います。(四諦×二界×二道)
次の4段階で行われます。
・法智忍:欲界の四諦を観察(真見道の無間道の認識によって)
・法智 :欲界の四諦を観察(真見道の解脱道の見分によって)
・類智忍:色界・無色界の四諦を観察(真見道の無間道の見分によって)
・類智 :色界・無色界の四諦を観察(真見道の解脱道の見分によって)
この「見道」を修習することで、菩薩の十地の最初である「極喜地」に到達します。
<修習位(修道)>
波羅蜜を行じながら先天的な(任運起の・倶生起の)煩悩障と所知障(部派仏教にはない、法我執)の種子と習気を断じます。
そして、「妙観察智」と「平等智」が成長します。
菩薩道の十地では、下記のように、各段階でそれぞれ「十勝行(十波羅蜜多)」を修します。
・極喜地(施波羅蜜多):初めて無漏無分別智を発し、人法二空を証し菩提心を起こす
・離垢地(戒波羅蜜多):清浄な戒を具して、微細な煩悩の垢からも離れる(ここから修道)
・発光地(忍波羅蜜多):優れた定と記憶を成就し、智慧の光を発する
・焔慧地(精進波羅蜜多):三十七菩提分法に安住し、煩悩を焼き尽くす智慧が増大する
・極難勝地(定波羅蜜多):四諦を証する無分別智と、世間の技術・学芸を修する有分別智の二者を具する
・現前地(般若波羅蜜多):十二縁起を観ずる清浄な般若智を生じる
・遠行地(方便波羅蜜多):無相観を修して意識的な計らいの限界まで至り、声聞・独覚の世界を超える
・不動地(願波羅蜜多):無分別智が自然に常に働く(煩悩障が断じられ、以降は無漏智のみ)
・善慧地(力波羅蜜多):自在に言葉を操って説法を行う
・法雲地(智波羅蜜多):一切法を縁ずる大法智を生じ、「金剛喩定」を起こす(残しておいた煩悩を断じる)
<究極位(無学道)>
「究極位」は仏となった段階です。
修習位の「金剛喩定」で煩悩を断じた次の刹那に到達します。
煩悩障をなくすことで、「大涅槃」、「自性身」を獲得します。
また、「大円鏡智」と「成所作智」が生まれ・完成し、「妙観察智」と「平等智」が完成します。
所知障をなくすことで、「大菩提」、「法身(仏の三身)」を獲得します。
唯識派の涅槃は「大涅槃」と「大菩提」を併せ持つ涅槃で、「無住処涅槃」と呼ばれます。
これは、自由に輪廻世界に現れて人を救うことができるという、大乗仏教が目指す涅槃です。
(成唯識論の修行体系) |
| 資糧位(資糧道) ・唯識の教説を聞いて学ぶ ・六波羅蜜多、三十七菩提分法、四摂事、四無量 |
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