「清浄道論」(上座部):止(総論) | 仏教の瞑想法と修行体系

「清浄道論」(上座部):止(総論)

「止」の瞑想修行は3段階(三修習)からなります。
「遍作修習(遍作定)」→「近行修習(近行定)」→「安止修習(安止定)」です。

「遍作修習」は初歩的な段階で、「止」の対象を「遍作相」→「取相」→「似相」と順に深めていきます。
「遍作相」は感覚が捉える現実の対象、「取相」は外的感覚なしに心の捉える対象、「似相」は明瞭さが増した純粋な対象です。

「近行修習」は、「止」の対象が「似相」になりますが、まだ、「欲界心」の段階です。
つまり、まだ対象と一体化していない段階です。

この段階では、「五根」(確信・精進・気づき・定・慧)と「七覚支」(気づき・分析・精進・喜・軽安・定・捨)をバランスよく育成することが求められます。
そして「五蓋」(欲愛・怒り・睡眠・後悔・疑)を失くして心を浄化します。
「止」の段階が「心清浄」と名づけられているのはこの意味です。

「安止修習」は「根本定(安止定)」、「色界定」に到達した段階です。
つまり、対象への一点集中が固定できるようになった段階です。

「禅支」と呼ばれる特徴が強固になり、対象に集中した状態を持続できるようになります。
「安止修習」では「四禅(四色界処)」を順に修めて行きます。
それぞれの段階で存在する要素の「禅支」は下記の通りです。

・初禅 :尋・伺・喜・楽・一境性 
・第二禅:伺・喜・楽・一境性
・第三禅:喜・楽・一境性
・第四禅:楽・一境性
・第五禅:捨・一境性

また、それぞれの段階で、下記ように「五自在」を修めます。

・引転自在:出定後に禅支を確認できる
・入定自在:いつでも入定できる
・在定自在:好きなだけ定に留まれる
・出定自在:予定通りの時間で出定できる
・観察自在:禅支を確認できる


「清浄道論」では「止」の対象である「業処」を「四十業処」として40にまとめました。

・十遍:地・水・火・風・青・黄・赤・白・光明・虚空
・十不浄:膨張した・青くなった・膿血した・二分された・食い荒らされた・五体がちぎれた切り刻まれた・血の出た・虫がたかった・骸骨の…以上の状態の死体
・十随念:仏・法・僧・戒・捨・天・死・身至・安般(呼吸)・寂止(涅槃)
・四梵住(四無量):慈・悲・喜・捨
・四無色:空無辺処・識無辺処・無所有処・非想非非想処
・食厭想
・界差別:身体の四大元素

すべての対象で「止」の瞑想をしなければいけないのではなく、修行者の性質に応じて選択して行います。
具体的には下記です。

・貪行者:十不浄観・身至念
・瞋行者:四梵住・四色遍
・癡行者・尋行者:安般念(出入息念)
・信行者:最初の六随念
・覚行者:死随念・寂止随念・界差別・食厭想
・一切人:六遍・四無色定

また、修行者を守る効用から、必ず修業が必要な「四護衛禅」として、

・「慈心観」
・「仏随念」
・「不浄観」
・「死随念」

が挙げられます。

「止」の修行の成果として、5種の神通(「沙門果経」の六神通の「漏尽通」以外)を獲得できるとします。