先日の八代亜紀さんのコンサートの後の話です。時計を見れば、もう六時を過ぎていました。私は決心しました。何を決心したかと言いますと、丸福珈琲店へ行くことです。もう夕食の時間になっていましたし、私は一人になりたかったのです。
一人になりたいのは、毎日の寂しさに疲れた時です。寂しいと思うのは、大切な想い出があるからなのです。
去年の今頃だわ、と私はカレンダーを見つめていました。一年前の今頃から、私のつまらない悲しみが始まりました。
つまらないとか情けない等の言葉が似合うのが、私のその想い出です。その感傷は時間と共に消えていく予感があります。消えても良いでしょうね。
でも今は消えずにいます。私は下らないと思いながらも、まだ思い出すのです。
九月の誕生日の記念に丸福珈琲店へ行きました。広くて薄暗いお店で上等な珈琲を飲みながら、私は消えない想いをじっくりとかみしめるつもりでした。
しかし私が向き合った想い出は、高校時代のものでした。私は幻滅してしまいました。もちろん、丸福珈琲店に幻滅したのではありません。私の芝居がかったような感傷に嫌気がしました。本当に下らない、そう言えば良いでしょうね。
それでも丸福珈琲店のつくりは魅力的でした。以前にも書いたような気がしますが、若い頃に一人で通った喫茶店と似た雰囲気がしたのです。丸福珈琲店とはお店の規模は違いますが、その暗さに魅力を感じていた喫茶店です。地下鉄の本町の駅にありました。名前は「街」だったと思います。漢字なのか平仮名なのか覚えていません。
席は仕切りがあり独立していたと思います。ソファに座ると鏡に映った私が見えました。鏡なのか、鏡のような壁なのかも忘れています。もう遠い日の、昭和五十年代の話です。会社の帰り道に本町で降りて、その喫茶店へ行きました。
消えない想い出のためではなく、落ち着いた暗さの丸福珈琲店でくつろぐために行くのです。丸福珈琲店の奥の静けさに、心ひかれていました。
「お一人様ですか」と聞かれた私はうなづきました。しかし案内されたのは奥の席ではありません。中央あたり、しかも厨房の前でした。決して静かではないでしょう。
「奥の席はだめですか。奥に座りたいのです」
私は頼みました。店内はすいていますから、出来ると思ったのです。しかし残念でした。私が行きたかった奥のスペースは喫煙席でした。煙草を吸わない私には無理です。私は諦めました。
厨房の前は嫌ですから、結局は前回のように、入り口から右側のスペースに座りました。
頼んだのは、カレーチーズトーストセットです。二回に分けてに運ばれて来ましたから、来たものから適当に食べ始めました。
今回はお代わりをすることもなく、私はすぐにお店を出ました。時間もそんなには、なかったのです。レジで支払いの時に、ちょっと聞いてみました。新歌舞伎座で鑑賞したあとの半券を見せたら、特典があるそうです。丸福珈琲店ではプレゼントが貰えました。珈琲とお菓子があり、どちらかを選べるのです。迷ったのですが、珈琲を選びました。
私は何をしようと考えたのでしょう。何のために丸福珈琲店へ行ったのでしょうか。よく分からないのです。
でも丸福珈琲店さんは広々としていました。程よい暗さも落ち着きます。テーブルなど見ても、そう思いました。
珈琲は濃いくて味わいがありますね。
プリンは本当に美味しいです。レジで販売していましたから、買おうとしたのです。しかし止めてしまいました。次の楽しみにおいておきます。
今度は何も考えないで、明るい気分で行きたいですね。
一人になりたいのは、毎日の寂しさに疲れた時です。寂しいと思うのは、大切な想い出があるからなのです。
去年の今頃だわ、と私はカレンダーを見つめていました。一年前の今頃から、私のつまらない悲しみが始まりました。
つまらないとか情けない等の言葉が似合うのが、私のその想い出です。その感傷は時間と共に消えていく予感があります。消えても良いでしょうね。
でも今は消えずにいます。私は下らないと思いながらも、まだ思い出すのです。
九月の誕生日の記念に丸福珈琲店へ行きました。広くて薄暗いお店で上等な珈琲を飲みながら、私は消えない想いをじっくりとかみしめるつもりでした。
しかし私が向き合った想い出は、高校時代のものでした。私は幻滅してしまいました。もちろん、丸福珈琲店に幻滅したのではありません。私の芝居がかったような感傷に嫌気がしました。本当に下らない、そう言えば良いでしょうね。
それでも丸福珈琲店のつくりは魅力的でした。以前にも書いたような気がしますが、若い頃に一人で通った喫茶店と似た雰囲気がしたのです。丸福珈琲店とはお店の規模は違いますが、その暗さに魅力を感じていた喫茶店です。地下鉄の本町の駅にありました。名前は「街」だったと思います。漢字なのか平仮名なのか覚えていません。
席は仕切りがあり独立していたと思います。ソファに座ると鏡に映った私が見えました。鏡なのか、鏡のような壁なのかも忘れています。もう遠い日の、昭和五十年代の話です。会社の帰り道に本町で降りて、その喫茶店へ行きました。
消えない想い出のためではなく、落ち着いた暗さの丸福珈琲店でくつろぐために行くのです。丸福珈琲店の奥の静けさに、心ひかれていました。
「お一人様ですか」と聞かれた私はうなづきました。しかし案内されたのは奥の席ではありません。中央あたり、しかも厨房の前でした。決して静かではないでしょう。
「奥の席はだめですか。奥に座りたいのです」
私は頼みました。店内はすいていますから、出来ると思ったのです。しかし残念でした。私が行きたかった奥のスペースは喫煙席でした。煙草を吸わない私には無理です。私は諦めました。
厨房の前は嫌ですから、結局は前回のように、入り口から右側のスペースに座りました。
頼んだのは、カレーチーズトーストセットです。二回に分けてに運ばれて来ましたから、来たものから適当に食べ始めました。
今回はお代わりをすることもなく、私はすぐにお店を出ました。時間もそんなには、なかったのです。レジで支払いの時に、ちょっと聞いてみました。新歌舞伎座で鑑賞したあとの半券を見せたら、特典があるそうです。丸福珈琲店ではプレゼントが貰えました。珈琲とお菓子があり、どちらかを選べるのです。迷ったのですが、珈琲を選びました。
私は何をしようと考えたのでしょう。何のために丸福珈琲店へ行ったのでしょうか。よく分からないのです。
でも丸福珈琲店さんは広々としていました。程よい暗さも落ち着きます。テーブルなど見ても、そう思いました。
珈琲は濃いくて味わいがありますね。
プリンは本当に美味しいです。レジで販売していましたから、買おうとしたのです。しかし止めてしまいました。次の楽しみにおいておきます。
今度は何も考えないで、明るい気分で行きたいですね。