これは、スカウトを始める少し前のお話
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警視庁捜査一課
菅野「え、□□○○って、マトリに入った薬効体質の子ですよね」
服部「そー、その子」
荒木田「その□□○○がスタンドに?」
服部「ま、仮所属だけど」
菅野「しかも立候補って勇気ありますよね」
朝霧「‥‥‥勇気?無謀の間違いでしょう」
服部「おっと、手厳しいのが1人」
朝霧「当然です。□□○○は自身の体質を理解していないんでしょうか」
服部「いや?むしろ利用しろってさ」
荒木田「‥‥‥利用?どういうことですか」
服部「なんだっけ。自分はまだ新人で何の力もないけど」
服部「薬効体質だから、それを利用すればいいだろうってことらしい」
朝霧「‥‥‥馬鹿なんですか」
服部「さぁ?ただ、自分もそれを利用して有用な人材に成長してやるとかなんとか言ってたけどねえ」
菅野「へぇ‥‥‥」
服部「てなわけで、そこそこ面白そうかなって」
菅野「-----にしても、スタンド始動かぁ。ついにって感じですよね」
朝霧「なぜマトリと合同なのかは解せませんが」
荒木田「確かに」
荒木田「警察だけで充分って気もしますよね」
荒木田「有用な人材が足りないわけでもあるまいし」
服部「ま、しょーがないんじゃないの」
服部「薬に関してだけはマトリがスペシャリストなんだから」
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同時刻 とある会員制バー
神楽「はー‥‥‥」
槙「‥‥‥疲れた」
大谷「あーあ」
桧山「‥‥‥入って来るなりなんだ、その不景気な顔は」
三者三様にため息をつきながら入って来るのを見とがめて、桧山はかすかに眉間にしわを寄せた。
大谷「せっかく某ブランドのレセプションに行ったのに、2人がとっとと帰るってうるさくてさ」
槙「しょうがないだろ」
槙「寄って来る女がうざすぎた」
神楽「ホントだよね」
神楽「揃いも揃って雑魚ばっか」
大谷「はぁ?どこが雑魚?」
大谷「モデルのMIKAもNANAもいたろ」
神楽「雑魚でしょ」
神楽「あの程度のモデルが持ってる情報に、どれだけの価値があるって?」
大谷「‥‥‥」
大谷「女の子の価値を計るポイント、なんかおかしくない?」
槙「そうか?」
槙「俺達情報屋が情報で価値を計ることに何の疑問があるんだよ」
大谷「や、そういう問題じゃなく‥‥‥」
神楽「仮におかしくても、別にいいじゃん」
神楽「どいつもこいつも財布目当てって顔に書いてるような連中だったし」
大谷「分かってないな‥‥‥」
大谷「だからこそ、お互いさまってことで、浅く楽しむのにもってこいなのに」
槙「どういう論法だ」
神楽「てか、めんどくさい」
大谷「‥‥‥もーなにこの2人。童貞?」
神楽「なんでそうなるの」
大谷「桧山、童貞に日本語が通じない」
桧山「‥‥‥」
唐突に話を振られ、桧山は億劫そうに顔を上げる。
桧山「くだらない言い合いはそのくらいにして、さっさと飲み物を頼め」
大谷「あ、そうだった」
大谷「マスター、俺モルト」
神楽「僕はとりあえずビール」
神楽「慶ちゃんは?」
神楽「牛乳?オーガズム?カルアミルク?ピニャコラーダ?」
槙「‥‥‥ふざけんな」
槙「ドライマティーニ!」
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同時刻 とある病院
京介「沙良-----あ」
京介が病室に足を踏み入れると、妹は検温されているところだった。
看護師「あら、おはようございます」
京介「どうも、お世話になってます」
看護師「沙良ちゃん、よかったね、お兄さんが来たよー」
看護師「抱かれたい男ナンバー1の方!」
看護師「来週からの月10で主演らしいよ~」
少女「‥‥‥」
京介「沙良、今日もいい天気だぞー」
語り掛けながら、彼はカーテンを開けた。
部屋に陽光が射すけれど、白い顔はまつげ一本動かすこともない。
京介「この日差しじゃ、多分兄貴が来るのは夕方かな」
京介「来たら、遅い!って怒っていいからな」
誠「‥‥‥遅れる前から妙な指示を出すんじゃない」
京介「あれ?早い」
看護師「おはようございます」
看護師「沙良ちゃん、またお兄さんがきたよー」
看護師「青春小説の神様の方!」
看護師「兄弟3人揃うなんて、今日は最高だね」
少女「‥‥‥」
看護師「-----36.1、脈も異常なし、っと」
看護師はテキパキと仕事を済ませ、誠に向き直った。
看護師「そういえば先生、新作も100万部突破したって、今朝ニュースになってましたよ」
看護師「おめでとうございます!」
誠「‥‥‥ありがとうございます」
大して嬉しくもなさそうにそう応じて、誠はベッドの傍らに立つと、妹を見下ろした。
看護師「それじゃあ、どうぞごゆっくりしてらしてくださいね」
看護師「沙良ちゃん、きっと嬉しいと思うから」
京介「ありがとうございます、そうします」
看護師を見送った途端、弟は笑顔を消して兄を振り返った。
京介「-----兄貴、不愛想すぎ」
京介「スゲーじゃん、もっと喜べって」
誠「‥‥‥ただ売れるように書いたものが売れただけだ」
誠「面白くもおかしくもない」
京介「うわー、なにその発言」
京介「嫌味‥‥‥」
誠「‥‥‥」
誠は肯定も否定もせずに苦笑を返す。
妹に視線を移した京介は、そこに浮かぶ自嘲の色に気づくことはなかった。
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同時刻 九条邸
桐嶋「『新種の薬物ばらまき疑惑‥‥‥九条家の闇に迫る』、だぁ‥‥‥?」
桐嶋「ふっざけんな!この野郎!!」
男は鬼のような形相で、手の中の雑誌を引き裂いた。
山崎「‥‥‥なにやってるの宏弥くん」
桐嶋「クソ週刊誌破いてんだよ!」
山崎「うん、それは見れば分かるけど」
新堂「大掃除中になにやってんだってハナシだろ」
山崎「そう、それ」
桐嶋「大掃除中に出て来たゴミ週刊誌を処分しただけだろ」
宮瀬「それにしても、随分と念入りに裂いたものですね」
桐嶋「何が悪ィんだよ!」
九条「‥‥‥その破片を床にまき散らしているところだろう」
山崎「あ、九条さん」
桐嶋「もう起きて大丈夫なんですか?」
九条「この有様は一体なんだ」
山崎「ああ、九条さんがこのところ咳から熱出すから」
山崎「大掃除して埃を一掃しようって、豪さんが」
新堂「なぜか俺まで駆り出されてな」
宮瀬「それより九条さん、まだお休みになっていた方が‥‥‥」
新堂「診せてみろ」
新堂「-----もう熱は下がったみたいだな」
新堂「体調は?」
九条「問題ない。明後日の件は予定通り出席する」
新堂「まぁいいだろう」
新堂「ただ、今日明日は安静にしていろ」
九条「‥‥‥それより、桐嶋さっさとその紙くずを片付けろ」
桐嶋「当たり前です!むしろ燃やしてやる」
山崎「くっだらない記事だしね」
山崎「そもそもこれが本当ならとっくに警察なりマトリなりに捕まってるっての」
山崎「もしかして、知能ないのかな」
新堂「それもそうだが、週刊誌の連中も知ってんだろ」
新堂「警察もマトリも役立たずだって」
九条「そんなことに惑わされる必要はないだろう」
九条「忘れるな」
九条「それが事実かそうでないかは、俺達自身が知っている」
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こうしてヒーローたちの物語は幕をあけた
ヒーローに出会うまで、あとほんの少し・・・