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(良かった‥‥‥ラストの一冊、ちゃんと買えて)

 

 

 

終業後。本屋から出た私が持つ袋の中には、『ポケット花言葉辞典』があった。

 

 

 

(ネットで何でも調べられるって言っても、買っておいて損はないもんね)

 

 

(それにこれがあれば、もう女子力ゼロなんて言わせな――――)

 

 

猫「にゃあ」

 

 

○○「あ、猫。真っ白で可愛い」

 

 

 

街路樹の木枠の上にちょこんと座るその白猫は、とても愛らしい目でこちらを見つめている。

 

 

 

(‥‥‥ちょっとだけ、撫でさせてくれたりするかな?)

 

 

 

ぬいぐるみと見紛うようなふわふわ猫の前にそうっと腰を下ろした―――――その時だ。

 

 

 

白猫「シャー!」

 

 

○○「!?」

 

 

 

鋭い猫パンチを繰り出され怯んだ私は本屋の袋を落としてしまう。

 

 

 

白猫「にゃ!」

 

 

○○「あっ!?」

 

 

○○「ちょっとソレ、持ってっちゃダメ‥‥‥!」

 

 

○○「待って‥‥‥!」

 

 

 

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『少し休憩がしたい』

 

 

 

主人が珍しくそんな気まぐれを口にしたので、僕は彼を連れて庭に出ていた。

 

 

夕映えの花々は美しく、甘く青く香る。

 

 

見ているとそれだけで心が凪いでいく。

 

 

 

宮瀬「どうですか、九条さん」

 

 

宮瀬「たまには、窓越しじゃない花見も乙でしょう?」

 

 

九条「毎年本当に、見事なものだな」

 

 

宮瀬「褒めてくださって嬉しいです」

 

 

宮瀬「どの花たちも、愛情を込めて育てましたので」

 

 

宮瀬「―――――あ、あの辺りのハーブを、最近は朝のハーブウォーターに使っているんですよ」

 

 

九条「‥‥‥土いじりなんて、退屈だという印象しかないがな」

 

 

宮瀬「人には向き不向きがありますから」

 

 

宮瀬「僕は出来れば、一生この庭のお世話をして生きていきたい気すらしています」

 

 

九条「それは‥‥‥」

 

 

九条「まるでいつかは、九条家使用人の立場を放棄することが決まっているような言い回しだな」

 

 

宮瀬「え‥‥‥そんな風に聞こえましたか?すみません」

 

 

宮瀬「決して、そういった無責任な意味で言ったわけではないのですが‥‥‥」

 

 

九条「‥‥‥まあ、いい」

 

 

九条「お前がいなくなれば、この庭がまた荒れる」

 

 

九条「それだけだ」

 

 

宮瀬「‥‥‥」

 

 

九条「‥‥‥」

 

 

宮瀬「‥‥‥そろそろ、風が出てきましたね。戻りましょうか」

 

 

九条「‥‥‥ああ」

 

 

九条「夕食まで、部屋で仕事をする来客は、全て通すな」

 

 

宮瀬「わかりました。では、お茶をお持ちいたします」

 

 

宮瀬「それから今夜の夕食は、九条さんの好きなレバニラがメインですよ」

 

 

宮瀬「ちなみにニラは、僕が育てたものです」

 

 

九条「‥‥‥ふ。愛情を込めて、か?」

 

 

宮瀬「ええ、たっぷりと」