私は直の上司や、他の部署のヘッドや同僚と出張をし、長い時間を共に
過ごしたり、またスポットでシンクロすることはあれど、今まで一度も
職場の最上層部の幹部と完全に同行の出張の機会はなかった。
「完全な同行出張」では、一つ二つの案件の時間だけをシンクロして過ごす
ものとは全く異なり、飛行機、ハイヤーのなどでの移動時間、待ち時間、また
案件の前後も完全に一緒のため、正直言って今までの出張とは訳が違う。
今回初めて、自分の直属の上司がレポートする上司という立場の、いわゆる
「大ボス」との出張の機会があった。
通常、中々こうした機会がある訳ではない上、今回大ボスから同行のご指名を
もらったことで嬉しさもあったが、同時にそこで自分がヘマをすれば、かなり
印象が悪くなるというリスクについて理解もしていたため、出張の日程が近づく
と不安で押しつぶされそうになり、これほど気が進まない出張は初めてだった。
渡航当日、わたしの不安をうらはらに、ジーンズにTシャツ、スニーカーの
軽装で空港に現れた大ボスは笑顔でこちらに手を振ってくれた。そこからの
旅路はいい意味で驚かされてばかりで、またこれほど学びが多く、実のある
時間を過ごしたことはなかった。
まず、移動中に見せる彼の振る舞いは正直スマートそのもの。それも気取ったり
偉ぶったものではなく、周りへのさりげない気遣いが所々で見られた。また
どういう行動であれ、全てしっかり「最適化」されているのが明白で、行動は
無駄がなく効率的そのものだった。
正直、少々旅慣れていると自負していた私自身が間抜けに感じるほどだったが
恐らく彼は意識してそうしているというより、いつもの習慣から自然に来たもので
それは「一流の人」だけが見せるものであろうと直感した。
また、何よりも驚かされたのは、クライアントとの対応のスマートさ。
大ボスの話題の豊富さもそうだが、話の間の取り方、押し方、引き方の具合なども
絶妙であり、彼の知的でかつ面白い話に魅了され、個人的に慕うクライアントや
ファンが多くいるのも当然だと感じた。
また彼のプレゼンを通し、自分がいかに未熟であるかを痛感すると共に
人にどうやって伝えるか、そのメッセージのあり方なども深く考えさせられた。
これまで職場などでこれらの端々を見ることはあっても、ずっと同行したことで
その場の時間を大ボスと共有することができたことは、まさにプライスレス。
通常、企業や組織の最上層部の人間と二人での完全な同行の出張の機会というのは
秘書でもない限りないであろう中、この中で完全直下の部下でもない私が
大ボスとの出張の同行の機会を得ることができたのは本当に幸運だった。
また、今回の同行を通じて気が付いたのは、打ち合わせの時に大ボスが見せて
いたと思っていた「若干の話しにくさ」というのは、恐らく私が勝手に予防線を
張って、先入観で曇ったレイヤーを通して見ていただけであり、実は彼はいい奴
なのかなと思うと同時に、旅路の終わりにはすっかりファンになってしまった。
加えて、今回の機会を通して、大ボスの直下で働く秘書のあたたかい心遣いと
対応のきめ細やかさにも気付かされたし、また今回の出張のアレンジにあたり
協力してくれた同僚とのやりとりを通してなど、本当に気づきや学びが多く
これほど自分の糧になったと感じる時を過ごしたのは久々であった。
もちろん、出張ということで、費用は会社持ちではあるが、お金を出して
もらってこれだけの学びが多い機会を得られるなんて、改めて自分の幸運に
心から感謝したことは言うまでもない。