「なにこれ?」
「いや、こっちが聞きたい」
「〇〇ホテル…?」
「そう書いてあるね」
スマホを取り出し、メンバーズカードに書いてある名前を検索するたかちゃん。
「〇〇市にあるホテルみたい」
「うん。私も調べたからわかってるよ」
「でも俺はこんなカード見たこともないし、財布に入ってないよ」
「だったら今ここで財布を見てみればいいじゃん」
「わかった………」
なぜか車の鍵を持って玄関へ向かうたかちゃん。
あ、車でカードを抜いて持って戻って来るんだな。
すぐに気づきました。
なのに追いかけないちぴ。
このときの追いかけなかった気持ちは今でもよくわかりません。
写真を見せても白を切るたかちゃんを見て、どうせ何を言っても言い訳されると思ったのか。
それともまだ信じたい気持ちがあったのか。
財布から出てくるメンバーズカードを一緒に見て、たかちゃんがたじろぐ姿を見たくなかったのか。
前にも記事にしましたが、不思議な感情がうまれたような気がします。
ちぴは偽善者的なところがあるんです。
自分でもわかっているのですが、他人が苦しんだり悲しんだりする姿を見るのが本当に苦手で、ついつい避けてしまいます。
自分が傷つくほうがマシ。
これは優しさではないです。
わかっているんです。
でもどうしようもない。
車から戻ってくるたかちゃん。
今初めて開いたかのように財布を開け、中身を順番にテーブルの上に置いていきます。
もう車で証拠は出してきてあるのはわかっているので、この茶番に付き合うのも面倒で、芝居をしているたかちゃんを無言で見ていました。
「ん?同じようなカードはないけど…?これかな…?」
思わず失笑。
「ここには無さそうだね。でもよく考えてみて。私が見た時は100%財布の中にあったんだよ。写真も見たからそれはわかるよね?」
「うん」
「でも今はこの数週間で、財布から無くなったってことだよね?」
「うん…」
「それでたかちゃんは身に覚えもないしこのカードを見たこともないんでしょ?」
「そうだね」
「ってことはだよ?誰かが知らないうちにたかちゃんの財布にラブホのカードを入れて、さらにまた知らないうちにそのカード抜いてるってことだよね?つまり、クレジットカードや現金が入った財布を、少なくとも2回は誰かが気付かぬうちに触ってるってことだよね?」
「………」
「こわくない?」
「……………」
「それが本当だとしたら、クレジットカード盗まれてなくてよかったね!現金も減ってないか確認したほうがいいんじゃない?あーこわいこわい。本当に気をつけた方がいいよ?」
「…そうだね」
そうだね…?バカなの?