◆桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)
・石部宿の段
豊竹芳穂太夫、野澤勝平
豊竹亘太夫、野澤金吾
・六角堂の段
お絹・豊竹希太夫
長吉・豊竹咲寿太夫
儀兵衛・竹本文字栄太夫
竹澤團吾
・帯屋の段
前 豊竹呂勢大夫、鶴澤清治
切 豊竹咲太夫、鶴澤燕三
・道行朧の桂川
お半・竹本織太夫
長右衛門・豊竹睦太夫
竹本小住太夫、豊竹亘太夫、竹本碩太夫
竹澤宗助、鶴澤清馗、鶴澤清公、鶴澤燕二郎、鶴澤清允
(人形役割)
娘お半・豊竹清十郎
下女りん・桐竹紋吉
丁稚長吉・吉田文昇
帯屋長右衛門・吉田玉男
出刃屋九右衛門・吉田玉峻
出刃屋の女中・吉田簑悠
女房お絹・吉田勘彌
弟儀兵衛・吉田玉佳
母おとせ・桐竹勘壽
親繁蔵・吉田玉輝
その他大勢
「お半長」、「帯屋」で有名な「桂川連理柵」の通し。
今までは「石部宿」は見たことがなかったので、「コトの起り」を初めて観た。
しかし、この作品は初めに心中ありきで作った物語だけ不自然さを感じてしまう。
まず一番大きな違和感が、いいとこのお嬢さんであるお半ちゃんが、
なぜか下女と丁稚だけを供に伊勢参りに出かけるという設定だ。
この旅先で長右衛門とバッタリと出会い、間違いが起きるわけだが、
普通に考えて、13歳の娘をそんな旅に出す親はあるまい。
まして、お半はビラビラの簪に豪華な振袖姿。この姿で駕籠にも乗らず旅するなんて・・・。
この初めの設定に引っかかってしまって、どうにも身が入らない。
しかも、道中で隣のおじさま、長右衛門に出会って、どうやら気があるらしきお半はやたらすり寄る。
親子にしか見えない二人の馴れ初めは、どうにも違和感ばかりが募ってくるものだ。
石部の宿で丁稚がお嬢さんを我が物にせんと言い寄るところもなんだかなぁ・・
という感じだ。
旅の間ずっとそんな状況でお半は「寝る事もできなかった」、と長右衛門に言うのだが、
これも不自然で、親が嫁入り前の娘にそんな送りオオカミ付けて旅に出すのか。
石部宿屋があんまり出ないのも、そういう不自然さを感じさせないためなのかもしれない。
ともかくも、コトは起きてしまい、お半の腹には小さな命が宿ってしまう。
「六角堂の段」では、そこから数か月後、
狭い京都の町では ぼつぼつ二人の道ならぬ仲が噂になっている。
そこへ、帯屋の長右衛門の継母の連れ子(義理弟)の儀兵衛が
六角堂で長右衛門の妻お絹がお詣りに来ているところへ、脅しをかけてくどく。
(道ならぬ恋に奔るのが好きな登場人物の多さよ。。)
しかし、このお絹さんもなかなかの軍師で、
隣家の丁稚長吉を手なづけて、お半の腹の子の父は長吉だと言うように
買収する。
次の「帯屋」では、母おつぎの長右衛門夫婦への派手な継子いじめのシーンになる。
この女、元はこの家の飯炊き女だったというから、
主人の繁斎(今は隠居)はどういう趣味やねん!と突っ込みの一つも入れたくなる、
どこ探してもいいとこのない女。
根性ねじ曲がって、自分の実の子を長右衛門に成り代わって主人にしようと企み、
金をくすねて息子に渡し、その罪を長右衛門になすりつける。
しかし、分かりやすい悪人母子登場で、ますます作品としてはむむむ・・・
となってくる。
父繁斎が登場して物わかりよくおとせを責めて長右衛門夫婦はホッとするが、
お父さん、そんなに立派なこと言うなら、なぜおとせを嫁にした?という疑問がまた湧き上がる。。
家の中のゴタゴタは片がついても、
石部の宿屋で丁稚長吉が腹立ちまぎれにすり替えた刀の詮議に窮する長右衛門。
(あそこの宿屋が、返す返すも彼にとって一大鬼門だった!)
お半の書置きを発見して、
後を追うが、結局は二人して桂川へと身を捨てる場所を探して彷徨う。
うーーん、ストーリーはなぁ、義理の仲が絡まりすぎてツッコミどころも多すぎて、
(長右衛門は元々隣家の信濃屋の前に捨てられていた捨て子だったのを、
隣家の主人が大事に育て、六歳から帯屋が貰って育てたといういきさつがある。)
どうもやっぱりこの狂言は苦手と言わざるを得ない。
一番の見どころは、清十郎の遣うお半の可愛らしい振袖姿か?
後姿に極まったところで、
帯結びの付け根のところに、鈴をたくさん縫い付けた布が被さっていて、
これが揺れるたびに音をたてて美しい。
聴きどころの「帯屋」では、的確な描写の呂勢太夫と清治コンビ。
後(切)の咲太夫はちょっと調子を落としているように聞こえた。
初めて聴いた「帯屋」は、
嶋太夫、住太夫だった。
今考えるとなんと贅沢だったことか!

