第二部

 

三段目

 ◆妹山背山の段

背山

大判事・竹本千歳太夫

久我之助(こがのすけ)・豊竹藤太夫(竹本文字久太夫改め)

前・鶴澤藤蔵

後・鶴澤富助

 

妹山

定高(さだか)・豊竹呂勢太夫

雛鳥・竹本織太夫

前・鶴澤清介

後・鶴澤清治

 

(人形役割)

雛鳥(前)吉田簑紫郎

腰元小菊・桐竹紋吉

腰元桔梗・吉田玉勢

久我之助・吉田玉助

大判事清澄・吉田玉男

後室定高・吉田和生

雛鳥(後)・吉田簑助

 

 

 

さて、いよいよ二部。

東京での上演は、なんと15年ぶり(2004年以来)だという。

 

次もこのサイクルだとすると、もう目にすることはないかもしれない。

まさに、一期一会だ。

 

 

第二部が妹山背山の段から、という、いきなりのクライマックスから始まる・・・

というのは、どうなのだろうか?

 

3年前の文楽劇場公演では、

段の入れ替えをして、一部の最後に妹山背山の段を持ってきた。

これは賛否あるだろうし、本来良くはない事なんだろうが、

観客にとっては、最高に泣ける場面で終演という、カタルシスを得られる。

 

今回は、いきなり最高潮を迎えてしまうので、

次の「杉酒屋」ではいったん涙を納めて、仕切り直しというところがなかなか辛いものがある。

 

太夫、三味線ともに三年前と同じ顔触れ。

(人形だけは、今回初めて雛鳥が前後半に分かれた)

 

私が観たのは後半だったせいか、

千歳太夫が完全にノド潰してしまっていて、最高潮に入る所は、

もう必死の形相と、フシがなく、語っているかのようなパフォーマンスだった。

残念だが、これも文楽の太夫の過酷な現状だ。

 

中で、定高の呂勢太夫の、このところの佳さが光った。

気持ちが入って、それがオンとフシに現れる。

50代。いよいよ油がのろうという太夫の盛りを迎え、これからますます期待が持てる。

 

久我之助の文字久太夫改め、藤太夫も、

旧師匠住太夫から解き放たれたか、自由に羽ばたき始めた印象。

何より自信に溢れた表情がいい。

 

織太夫の雛鳥も、再演の余裕が見られる。

大きな名跡を継いで、ひと段落。なお一層の飛躍を期待。

 

三味線では、武張った背山の西風(せいふう)、柔らかみのある妹山の東風(とうふう)という、

違いに感動を覚える。

各三味線陣、それぞれに全量投球で、素晴らしい。

 

そんな床を聴きつつ、

舞台上では簑助雛鳥と和生定高の母娘の悲劇に目を奪われ、

 

背山の玉男大判事の苦衷の心を思いやり、

久我之助のあっぱれ愛を、忠義を貫く若者の死に涙して・・・

 

と、忙しい事この上ない。

それくらい、複雑に絡み合った、

目と耳の至福の時が、妹山背山の段だと言える。

 

 

 

四段目

◆杉酒屋の段

竹本津駒太夫、竹澤宗助

 

◆道行恋苧環(みちゆきこいのおだまき)

お三輪・豊竹芳穂太夫

求馬(もとめ)・豊竹靖太夫

橘姫・豊竹希太夫

豊竹咲寿太夫、豊竹碩太夫

野澤勝平、鶴澤清丈'、鶴澤寛太郎

 

◆鱶七上使の段

豊竹藤太夫、鶴澤清馗

 

◆姫戻りの段

竹本小住太夫、鶴澤友之助

 

◆金殿の段

豊竹呂太夫、竹澤團七

 

(人形役割)

丁稚子太郎・桐竹紋秀

橘姫・吉田一輔

求馬実は藤原淡海・豊松清十郎

お三輪・桐竹勘十郎

お三輪母・吉田簑一郎

宮越玄蕃・吉田勘市

荒巻弥藤次・吉田文哉

蘇我入鹿・吉田文司

漁師鱶七実は金輪五郎・吉田玉志

豆腐の御用・桐竹勘壽

その他大勢

 

 

 

どうしても、ここで一旦、気分は落ち着いてしまう。

も一つのお三輪の恋の物語になかなか入り込めずにいるうちに、

今回は「井戸替」のない「杉酒屋」は進んでいく。

 

求馬(もとめ・実は藤原淡海)というのは、

「求女」というのが正しいのでは?と思える二股男だww

 

お三輪には甘い言葉をささやき、

自分に夢中にさせながらも、その生血をねらっているわけで。。。

 

橘姫も、こんな男にひっかからなければ良かったけれど、

どこで出会ったのか、メロメロになっている。

 

ということで、

紅白の苧環をたどっていく道行は美しいところ。

 

だが、ここの床が残念なものだった。

この前に聴いていた女流義太夫の方が数段上。

(駒之助師のお三輪だったのは差し引いても)

 

当月、各太夫は掛け持ちで複数の床を勤めていて、

お疲れもあってのことかと思うが、少々ひどい。

三味線陣の健闘でなんとかもってる印象。

これも、今の文楽の現実だ。もっと質の向上を!と願うばかり。

 

「鱶七上使」は、

背山の久我之助を語り終わったばかりの藤太夫が、

スッキリとした表情で務める。まだまだ余裕だった^^

 

「姫戻り」は小住太夫が、良さを発揮。

 

「金殿」は、初日から三日ほど病気休演して、復帰した呂太夫。

(その間、弟子の希太夫が代演したというが、なんと大胆なキャスティング!

小三治休演につき、小八代バネの寄席のよう。。。)

 

人形も、見どころが多く、特に勘十郎お三輪の生きてるかのような

表情、動きに釘付けになるが

いかにせん、妹山背山で持ってかれた魂がなかなか戻らずに終演。

 

いやぁ、文楽って凄い!!

こんな古典芸能他にはない、絶対にない!!

 

という第二部鑑賞だった。