前回のつづき
手術室前で妻を見送る。
手術時間は30分だそうだ。
ベンチに座り、じっと待つ。
人通りはほとんどない。
30分間じっとしっていると看護師の方が出てきて、終わりましたとのこと。
ストレッチャーに乗った妻が出てきた。
妻の顔には涙が流れていた。
妻の顔をみながら無言のまま病室に戻り、妻がベッドに戻されるのを病室の外で待つ。
看護師さんに呼ばれ、病室に戻る。
妻はベッドの上でしくしく泣いている。
妻の手を握ってしばらく過ごした。
妻が落ち着いてきたので体の状態を聞く。
私は手術後は麻酔の影響でしばらく昏睡状態かと思っていたが、手術終了時からすでに意識があり、体も動かせて会話が可能なようだ。
手術直後は静かだった妻は、1時間たつとしきりに「お腹が減った」と言うようになり、いつもの活発な感じが戻ってきた。
とはいえ、口数は多くない。うとうとしたりしている。
その後、担当の先生が妻の精神状態を心配してカウンセリングの先生との面談を急きょ夕方にセッティングしてくれたため、妻と私は個室に移動して面談をする。
これがあの有名な山王の個室かと思い、先生と会話し、今後の方針について話し合う。
15時過ぎ、妻は最後の診察を受け、効果抜群の痛み止め(ポンタール)を飲んで退院に向けた準備を進める。
私は荷物をまとめ、16時半には退院を完了した。
最後に先生が「今度は産めるように一緒にがんばっていきましょう」と私に声をかけてくれ、辛い中でも希望がわいた。
会計をすますと、朝と違い、妻は少し元気になり、私にも心を開いてくれており、
「今日はどうもありがとう
」
という言葉をかけてくれた。感動。
その後、妻がお腹ペコペコなので病院の隣のセブンイレブンでパンとおにぎりを買ってイートインスペースで食べる。
妻は気持ち的には元気になっており、もぐもぐ食べる。
一方私はここにきて眠気が出てきてしまった。
せっかく妻が元気になってきたのだからもっと私も元気に楽しく会話ができればよかったと後悔。
一緒にタクシーにのり、家に帰宅。
今回、妻の流産手術に立ち会い、妻のつらさや悲しみを少しは共有できたかなと思う。
でも、私の感じたことは妻のつらさの1/100にも満たないだろう。
不妊治療はとてもつらい。
夫にできることは少ない。
病院に一緒にいくことや、気晴らしを考えることなどは最低限の行為だ。
でも妻が私に対して強く攻撃してきたとき、「僕だって協力してるじゃない」みたいなことを言ってしまうことがよくある。
しかしこれは単なる言い争いにおける返し言葉であり、意味がない。
リソース(時間・身体・精神)の消耗でいえば圧倒的に妻のほうが上であることは明白だ。
私はもっと不妊治療における男性の役割について考えていかなければならないと思った。