平成27年3月11日判決言渡 同日厚本領収 裁判所書記官
平成26年(行コ)第462号判定取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成
26年(行ウ)第218号)
口頭弁論終結日 平成27年2月2日
判 決
東京都*****************
控 訴 人
東京都新宿区新宿2丁目8番1号
被 控 訴 人 東京都
代表者兼処分行政庁 東京都人事委員会
上記委員会代表者委員長
上記訴訟代理人弁護士
上 記 指 定 代 理 人
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実 及 び 理由
第1、控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 東京都人事蚕員会が,平成25年(措)第11号事件につき平成26年4月
17日付けでした判定を取り消す。
第2 事案の概要
1控訴人は,被控訴人の職員であるが,平成26年2月13日付けで,東京都
人事委員会(以下「都人委」という。)に対し,地方公務員法46条に定める
措置の要求(以下,単に「措置要求」といい,本件における措置要求を「本件
措置要求」という。)をした。
都人妻は,同年4月17日付けで,本件措置要求を却下する旨の判定(以下
「本件判定」とい、う。)をした(平成25年(措)第11号)。
本件は,控訴人が,本件判定に違法があるなどと主張して,被控訴人に対し,
本件判定の取消しを求める事案である。
原審は控訴人の請求を棄却して,控訴人が控訴した。
2 前提事実,争点及び当事者の主張は,以下のとおり原判決を補正するほかは,
原判決の「事実及び理由」中「第2 事案の概要」2及び3に記載のとおりで
あるから,これを引用する。
(原判決の補正)
(1)原判決2貢6・7行目の「喫煙場所以外の場所」の次に「(以下「禁煙場
所」という。)」を加え,同頁8行目の「以下「本件措置要求」という。」
を「本件措置要求」と改める。
(2)同2頁9行目の「原告が」を「平成25年12月は毎週金曜日の終業後に
2階の会議室で喫煙をする者がいたようであり,控訴人が」と改める。
(3)同2頁13行目の「以下「本件判定」という。」を「本件判定」と改める。
(4)同2頁15行目冒頭から同貢20行目末尾までを以下のとおり改める。
「本件判定に係る判定書には,本件措置要求に係る要求の趣旨及び理由が記
載されており,その理由欄には「要求者は,懲戒処分の指針に禁煙場所で喫
煙した職員を処分する旨の文言を加えることを求めているが,この要求は,
要求者の勤務条件について,直接かつ具体的にその維持改善を求めるもので ヽ
はなく,地方公務員法第46条に規定する勤務条件に関するものとは認めら
れず,措置要求の対象とならない。したがって,要求者の要求は不適法であ
るから,勤務条件についての措置の要求に関する規則第5条第1項第2号の
規定により,主文のとおり判定する。」と記載されている。」
(5)同2頁23行目の「改正後のもの。」の次に「以下「本件規則」という。」
を加える。
(6)同3貢11行目末尾の次に改行の上,以下のとおり加える。
「(判定)
第17条 (略)
2 判定書には,次に掲げる事項を記載し,人事委員会の委員が記名
押印しなければならない。
一ないし三 (略)
四 理由」
(7)同3貢23行目の「罰則」を「懲戒処分」と改める。
(8)同3貢26行目の「罰則」を「懲戒処分の量定基準」と改める。
(9)同5貢3行目冒頭から同貢5行目末尾までを以下のとおり改める。
「キ 都人妻では,地方公務員法46条に定める措置要求の適法要件として「要
求者の勤務条件について,直接かつ具体的にその維持,改善を求めるもの」
という基準を公にする措置をとっておらず,行政手続法5条3項に違反し
ているから,本件判定は違法である。 1
ク 本件判定の理由の提示が不十分であり,同法8条に違反しているから,
本件判定は違法である。
仮に本件判定に係る手続に同法8条の適用がないとしても,本件判定の
判定書には理由の記載が必要であるところ,その記載が不十分であり,
また,裁判所が本件判定を違法でないとする理由と一致しないから,本件
判定は違法である。」
(10)同6貢21行目末尾の次に改行の上,以下のとおり加える。
「ェ 地方公務員法46条に定める措置要求に対する判定の手続については,
行政手続法の規定は適用されない(同法3条1項9号)から,行政手続法
違反を理由として,本件判定が違法とはならない。
そして,本件判定の判定書には,その理由が前提事実(3)判示のとおりに
記載されており,理由の記載に不備はなく,本件判定は違法でない。」
(11) 同6頁22行目の「エ 以上の」を「オ 以上の」と改める。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,控訴人の請求は理由がないから棄却すべきものと判断する。そ
の理由は,以下のとおり原判決を補正するほかは,原判決の「事実及び理由」
中「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。
(原判決の補正)
(1)原判決6頁26行目の「ここにいう」を「これは,地方公務員法が職員に
対し労働組合法の適用を排除し,団体協約を締結する権利を認めず,また争
議行為をなすことを禁止し,労働委員会に対する救済申立ての途を閉ざした
ことに対応し,職員の勤務条件の適正を確保するために,職員の勤務条件に
つき人事委員会又は公平委員会の適法な判定を要求し得べきことを職員の権
利ないし法的利益として保障する趣旨のものと解すべきであり(最高裁昭和
34年(オ)第1187号同36年3月28日第三小法廷判決・民集15巻
3号595頁),地方公務員法46条にいう」と改める。
(2)同7頁9行目の「2 そこで」ノを「2(1) そこで」と改め,同貢10行目
の「原告が」から同貢12行目の「この点」までを以下のとおり改める。
「本件措置要求は,職員の禁煙場所での喫煙は勤務時間外であっても,控訴
人の職場環境を悪化させるものであり,自らの職場環境の改善のためには
これを防止する必要があるが,職員が禁煙場所で喫煙することに対して庁
舎の責任者が分煙の徹底を働きかけることではこれを防止する効果がな
く,禁煙場所で喫煙した職員に関する文言のない本件指針に禁煙場所での
喫煙を行う職員は減給又は戒告の処分とする旨の文言を新たに加えること
が,より職員の禁煙場所での喫煙を防止する効果がある旨を主張して,本
件指針に上記文言を加えることを求めるものと認めるのが相当である。そ
して,本件指針の文言に加えて,控訴人が,本件指針に禁煙場所における
喫煙を行う職員は減給又は戒告の処分とする旨の文言を新たに加えること
が,庁舎の責任者が分煙の徹底を働きかける以上に,職員の禁煙場所での
喫煙を防止する効果がある旨を主張して,本件措置要求をしたことは前判
示のとおりであること,甲第6号証の1,2,第7号証の1,2,第16,
第17,第24ないし第26,第28ないし第30号証及び弁論の全趣旨
を総合すれば,本件指針には,被控訴人の職員が禁煙場所で喫煙した場合
に,それのみによって減給を超える懲戒処分がされたり,勤務時間外の喫
煙も含めて原則として減給又は戒告以上の懲戒処分がされるべき旨が定め
られているとは認められないのであって,本件措置要求は,控訴人に対し
ても適用される懲戒処分の量定基準を重く変更することを求めるものであ
ると認められ,そうすると,控訴人の勤務条件について維持,改善を求め
るものとは認められないのである。そして,本件措置要求が懲戒処分の量
定基準を重く変更することを求めるものであり,懲戒処分の量定基準を重
く変更することの法律上の効果が,禁煙場所において喫煙した職員に対し
て現状よりも重い懲戒処分をすることであって,本件指針に本件措置要求
に係る文言を加えることが,重い懲戒処分を受けたくないという他の職員
の心理に作用して禁煙場所における喫煙を抑止する効果が事実上発生する
としても,これを,本件措置要求の直接の効果であるとは認められないこ
とに照らせば,本件措置要求において懲戒処分の量定基準を重くすること
によって他の職員の喫煙行為を現状よりも制限することを求める部分は,
控訴人の勤務条件について,直接,具体的に維持改善を求めるものとは認
められないのである。
(2)これに対し」
(3)同7頁13行目の「罰則」を「懲戒処分」と,同頁14行目の「理由から
は」から同頁22行目末尾までを以下のとおり改める。
「理由の記載及び前記(19)判示の各点を総合すると,本件措置要求が控訴人主張
の内容を求めるものであるとは認められない。その上,本件指針には,被控
訴人の職員が禁煙場所で喫煙した場合に,それのみによって減給を超える懲
戒処分がされたり,勤務時間外の喫煙も含めて原則として減給又は戒告以上
の懲戒処分がされるべき旨が定められているとは認められず,本件措置要求
は,懲戒処分の量定基準を重く変更することを求めるものであることなど前
記(1)に判示するところを総合すると,控訴人の主張は採用することができな
い。
また,控訴人は,懲戒制度が特定の行為を抑止するために効果があること
からすれば,本件指針に本件措置要求に係る文言を加えることは,禁煙場所
での職員の喫煙防止に直接的な効果がある旨を主張して,控訴人の職務環境
を直接,整備改善するものである旨を主張するようである。
しかし,本件指針に本件措置要求に係る文言を加えることは,懲戒処分の
量定基準を重く変更することであり,その法律上の効果は,禁煙場所におい
て喫煙した職員に対して現状よりも重い懲戒処分をすることであると認めら
れ,本件指針に本件措置要求に係る文言を加えることが,重い懲戒処分を受
けたくないという他の職員の心理に作用して禁煙場所における喫煙を抑止す
る効果が事実上発生するとしても,これを,本件措置要求の直接の効果であ
るとは認められないなど前記(1)に判示するところによれば,控訴人の主張に
よっても,前記(1)判示の判断を左右するに足りないものというべきである。
控訴人の主張は採用することができない。」
(4)同8頁1行目冒頭から同頁7行目末尾までを以下のとおり改める。
「4(1)本件規則17条2項4号が,地方公務員法46条に基づく措置要求に
対する判定に係る都人委作成の判定書には理由を記載すべき旨を規定す
ることは前記第2の2(5)判示のとおりであるところ,同号が判定書に当
該判定の理由の記載を義務付ける趣旨は,それによって都人委が慎重に
判断をすることを求め,その判断の公正性や妥当性を担保して窓意的な
判断を抑制するとともに,判定理由を要求者に知らせることによって,
不服申立てに便宜を与えることにあると解される。
そして,本件判定の判定書における理由の記載は前記第2の2(3)判示
のとおりであって,上記の記載によれば,本件判定において,都人委が,
本件措置要求を本件指針に禁煙場所で喫煙した職員は減給又は戒告の処
分をする旨の文言を加えることを求めるものと解した上で,控訴人の勤
務条件について,直接かつ具体的にその維持改善を求めるものではなく,
地方公務員法46条に規定する勤務条件に関するものと認められず,本
件規則5条1項2号に該当するものと判断して却下した旨が記載されて
いるものと認められ,本件判定の判定書において理由の記載に不備があ
るとは認められず,この点において本件判定が違法であるとは認められ
ない。
(2)ア これに対し,控訴人は,本件判定の手続が行政手続法5条3項や同
法8条に違反しているから,本件判定は違法であり,また,仮に同法
の適用がないとしても,本件判定の判定書における理由の記載が,不
十分であり,また,裁判所が本件判定を違法でないとする理由と一致
しないから,本件判定は違法である旨を主張する。
イ しかし,同法3条1項9号は,公務員又は公務員であった者に対し
てその職務又は身分に関してされる処分及び行政指導については同法
の適用はない旨を規定するところ,本件規則の各規定及び前記1に判
示するところに照らせば,本件判定の手続は,公務員に対してその職
務又は身分に関してされる処分についてのものと認められ,同法の適
用はないものと認められる。
そして,本件条例17条2項4号が,前記(1)判示の趣旨を超えて,
被控訴人が判定書に記載した以外の理由を当該判定の取消訴訟におい
て主張することを許さないものとする趣旨を含むと解すべきものとは
認められない。のみならず,当裁判所が前記1及び2に判示するとこ
ろと同旨の被控訴人の主張について,本件判定の理由とされていない
ものとも認められないのである。
以上判示の各点に加え,前記(1)判示の各点をも総合すると,前記ア
判示の控訴人の主張によっても,本件判定の判定書における理由の記
載について,本件判定が違法であると認められない旨の前記(1)判示の
判断を覆すに足りず,他にこれを左右するに足りる証拠はない。
控訴人の主張は採用することができない。
5 以上によれば,本件判定が違法であるとは認められず,控訴人の請求は
理由がない。」
2 よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとし
て,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第5民事部
裁判長裁判官 大 竹 た か し
裁判官 平 田 直 人
裁判官 田 中 寛 明