ひとつの世界 | 月の下ポエム

ひとつの世界

白い壁に頬をあてながら

じっとなにかの音を聞いている

ふだんは聞こえていない音に気づく

それは僕に聞こえる最小の音


心が遠ざけること

心が引きよせること

僕はその間でいつも揺れている

雨が降っても

風がやんでも

その音はその場所で鳴っている

それを忘れたりすることで

最前線の兵士達は疲れたりする


争わないこと

先頭に立たないこと

この世のモラル

人を傷つけないこと

そしてぼくの夢。

ひとつの世界が目の前に立ちふさがって

目を閉じることを恐れさせている

ひとつの世界が

この世界の人口の数だけ存在している

ひとつの世界は音もたてずに

生まれては消えていく


ひとつの世界には見えにくい中心点がある


そこから僕らのすべては溢れている


日々そこに集中する

テレビを見ても

ご飯を食べても

遊んでても

泣いていても

そこを見ている時の僕は

最前線には いない



ひとつの世界には奥行きがあった。

そのドアにはノブがついていなくて

なかなか気づかなかったのだけれど

入ってみると そこは

まるで自分の寝床のようだった

そこでも耳をすませば最小の音が鳴っている

けれどもその場所へ留まることは難しかった

なぜならば最前線には

愛する人や物で溢れているから

僕はそのために

すっかり奥行きを忘れてしまう

そもそも必要なのかと

思ったりもするのだ。


つづく