父とのことを書こうと思ったが、ブログでその思いはとても言い表しがたい
私のアイデンティティは『アンチ大人』
その前面に立ちはだかるのが父という存在だった
いずれ書かなければという思いではいるが、またの機会にしよう
 
資料をさがしていた時に古い原稿で
父に関する記述がでてきたので一部載せておく
あくまで小説であって現実とはかけ離れた部分は多くある
 
①ある日突然
②古い夢の欠片
③乾いた月
④暗黒迷路
⑤永遠の星達
 
すでに ②古い夢の欠片 の冒頭部分は「15歳の頃」いう題名でブログに載せている
今回は ④暗黒迷路 の一部を掲載する  題名は『石の思い』
 
 
話は簡単だと父は言った
お前の求めているものはここにはない
つまりお前の求めているものはこの世に存在しない
 
彼はすごい形相で私を睨みつけている
激しく私を恫喝しようとしている
 
なぜ詰まらないことに足を突っ込んでる
お前のすべきことはほかにあるはずだと語気を荒げた
いいか、人生はお前が考えているよりずっと短い
いつまでもつまらん過去の感情にとらわれていてはだめだ
意味のない事、価値のないものに惑わされるな
 
現実の社会で生きろ!
まともな大人になりなさい!
 
私は黙って彼を睨んだ
彼も私を睨み返していた
睨み返す眼は冷たい光となり私を突き抜けた
 
私と父は同じ空間にいながら違う次元に存在していた
憎しみあうことさえ交差しない
言い争うことすら何も触れあうものがない
 
どうせ何を言っても聞いてはいない
私の言葉は彼の耳に届いても、心には響いてゆかない
すべての言葉は遮断された空間を漂う木霊にすぎなかった
 
悲しいことに父が観念の世界に価値を認めないように
私は人生に規律や秩序を求めなかった
 
その昔、すべてのことがまだよく分からなかった頃
父が私を説教しようとする度にその理由をたずねた
問題とされている意味が解らなかった
なぜ叱られているのかが分からなかった
本当に説教の理由すら分からなかったのだ
 
だが、何を聞いたところでまともな返事は帰ってこない
ただ叱り怒鳴るだけだった
理解できない叱責は拷問でしかなかった
強要されても学ぶものは何もない
 
交わることのない心
冷たく満たされることのない会話
遮断されたドアの前で立ち尽くすだけの日々
拒絶されることが最初に父から学んだ人間関係だった
 
 
結局のところ何をしたとしても、何をしなかったとしても
父は私を理解しなかったし、認めなかった
悲しいことに父は私を理解しなかったが
その言い分は現実のなかでは常に正しいのだ
だから私の戦いはいつも不毛で終わった
 
 
 
意味がないか価値がないかを決めるのは私だ、 あなたではない
 
なのに何故そんなに威張ってものをいう
私のことをなぜ頭ごなしに否定する
 
あなたは世の中の何を知っているというの
人並な生き方にそんなに価値があるの
他人に認められることにそんなに意味があるの
 
自分の信じられることをやることは何故いけないの
私の心を捻じ曲げる必要があるの
そんな身勝手なことがあなたには許されてるの
 
あなたの子供だからって
そんな権利がどこにあるの
そんな権利がどこにあるの
そんな権利がどこにあるの・・・
 
強く唇をかんだ
こぶしを握った両腕が細かく震えた
たまらず悔し涙が溢れた
一度堰を切った涙はとめどなく溢れた
 
 
 
あなたには分からない
私は人に尊敬されることや、
立派な人間と思われることを望んではいない
あなたのいうような正邪や損得で
人間関係を判断するのであればこんな簡単なことはない
そういうところに存在できないちっぽけで弱々しい
私という人間を・・・
不確かな存在を認めてほしかった
 
 
 
あなたは知らない
たとえどれだけ拒絶されようが、私はあなたを愛している
そしてどれほどあなたに愛されたいと願ってきたのか
そんな思いの伝わらない悲しさを何度味わってきたのか
その寂しさがどんなに苦しいものかをあなたはしらない
 
 
あなたは言った
『ここはお前のいるべき場所じゃない』
 
 
もともと私にはいるべき場所なんて何処にもなかった
始めから何もありはしない
心はいつも荒れ果てた荒野を彷徨い続けていた
 
 
生まれた時からずっと何かを求めて彷徨う日々だった・・・