昔、大切なものだったことが
どうでもよくなったとき、ふらりと外へでる
街を彷徨いながら
どうでもいいような人々の顔を見る
なにか忘れたものはないかと
街角でたち止まる
ただ騒がしい雑踏とたくさんの生活の匂い
 
ひとり街角にたたずむその姿は
まるで忘れ去られた子犬のようだ
目的もなく彷徨う先には意味もない明日が待つ
すでに魂の行き場はどこにもないのは知っている
何かを急かすように夕日が背中を押していた
ただ騒がしい雑踏とたくさんの生活の匂い
 
ひとり街角にたたずむその姿は
だれに振り向かれることもない
大切だったものがどうでもよくなったとき
生活は消え失せ、人生は彷徨う場所になり
帰る家さえなくなっていた
如何あがこうと如何叫ぼうと
どうでもいいような人々の心には届かず
忘れ物はないかとたたずむ男は
まちかどに忘れ去られてゆく
ただ騒がしい雑踏とたくさんの生活の匂い