『釧路湿原の聖人・長谷川光二』(評価★★★☆☆) | 遠近法で描く中国 -2nd Season-

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片手にピストル 心に花束 唇に火の酒 背中に人生を。 

著者:伊藤重行
出版:学文社 / 2005年4月 / 単行本
ジャンル:人物史、歌、句

著者は九州産業大学大学院教授の伊藤重行先生。
私的なことではありますが、私の母校でもあり、先生には授業でお世話になりました。
といっても一受講生でしかありませんが。。。
しかし、アジア・太平洋の事情などに関心を持ったという点では、私が大学時代に影響を受けた先生の一人だと思っています。
学生時代はいわゆる「国際交流」なんてことに突っ走っていましたので。
他の大学ではどうかわかりませんが、著作を持っている先生は、それを指定図書にして、講義を行う方がいます。
伊藤先生もそんな方でしたので、必然的に読んでおりました。
そして20年近く経った今、地元の図書館で検索してみると蔵書としてあったのがこの本でした。
伊藤先生が私が影響受けた人であるなら、長谷川氏は伊藤先生が影響を受けた先生ということになります。
釧路湿原で自然とともに生活され、また多くの詩や句を残された方として、研究された大変貴重な資料となっています。

<目次>

はじめに 100年前の人生ドラマ

第一部 長谷川光二の世界
 第一章 人間の生き方を教えてくれる自然と恩人たち
 第二章 自然豊かな鶴居村チルワツナイに入植するまでの生き方
 第三章 長谷川光二の尊敬する恩師たち
 第四章 鶴居村チルワツナイで牧場建設をする長谷川光二の生き方
 第五章 原野の俳人 長谷川光二の俳句人生を見る
 第六章 長谷川光二の光二村の同窓生の面々
 第七章 光二村図書館の蔵書や資料を見る
 第八章 光二村のモットーと三つのLの由来
 第九章 学者であり、聖人となっていった長谷川光二の一生
 第十章 長谷川光二の妻、長谷川道子と長谷川光二の育った東京・小伝馬町

第二部 長谷川光二の知的関心と研究

 第十一章 鶴居村の情報屋・長谷川光二の残した原資料を探す旅
 第十二章 長谷川光二は雑誌『獨文評論』とThe Current of the World と LE PETIT ETUDIANT DE FRANCAIS から何を学んでいたか
 第十三章 雑誌関心度調査から見る長谷川光二が読んでいた宗教、哲学の雑誌
 第十四章 長谷川光二のロマン・ロランに寄せる関心とその他の雑誌
 第十五章 長谷川光二は『世界光明思想全集』をどう読んでいたか
 第十六章 長谷川光二は雑誌『俳句研究』と『俳句』をどのように研究していたか
 第十七章 長谷川光二は『岩波講座 日本文学』と『岩波講座 哲学』から何を学んでいたのか
 第十八章 長谷川光二が雑誌『新文化』『改造』『中央公論』『文藝春秋』などから学んだこと

付録 長谷川光二に関わる資料

おわりに

大学の先生が書かれる本というのは、多くが一般向けではなく、難解であるか大変読みづらいということが多いのですが、この研究所はその例外ともいえます。
ただ、大学の先生というのも、物書きというか論文執筆のプロでもありますので、文章を書く際のヒントを多く得ることができます。

気になった箇所のご紹介です。

「学者は大学や研究所にばかりいるのではなくて、釧路湿原の北側の鶴居村チルワツナイにもいたことは私にとって、人間の生き方に強い興味を喚起させるものとなった。」(16頁)

「電灯もない真っ暗な暗闇の夜空、輝きは星だけなのではる。一生電気なしの生活であったが、携帯ラジオは必需品であった。」(18頁)

「私はここで「正座」と書きましたが、長谷川光二の場合は「静坐」と書くのが正しいのです。文字からわかるように、静かに座り、そして土、すなわち自然を会得する座りなのです。他人が見ていようが見ていまいが、一人でいてもそうしているのです。これは人生哲学を意味します。今、若者の躾のなさを嘆きますが、われわれの今の生き方を問い直して良いのではないでしょうか。」(26頁)

「(最後に、)長谷川光二は人間の生き方を示した。どのようなことがあっても自分の決定に責任を持って生きること、ごまかさないこと、自然のあり方をしること、それに従って生きることの大切さを教えてくれた。」(42頁)

「(結局)人間は、権威や権力に弱い存在であると判断した。それに反して長谷川光二はそんなものとは全く縁のない存在であった。素直な人間の生き方を森の中で送っただけなのである。(中略) また、徹底した個人主義者であった。多くの方が個人主義の真髄が判らなく噂をたてたものである、彼は、森を開拓し、牧場を経営し、家族を育て、俳句を詠み、そして楽しみ、また学問したのである。これは素晴らしい生き方である。」(281頁)


最後にこの本について一言で表すなら、人の本来の生き方というものを追求した結果が、長谷川光二氏の人生そのものであったと結論づけていると思われます。



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