著者:落合信彦
出版:集英社 / 1995年 / 文庫本
ジャンル 評論
落合信彦氏の印象はハードボイルド・タイプの作家・小説家でしたが、このように若者指南のような著作も多いようです。
この作品は、1991年に雑誌などに掲載された内容を編集したものです。
<目次>
序章 私にとっての祖国
第1章 わが宰相論
第2章 天皇制
第3章 醜い日本人
第4章 日の丸・君が代
第5章 千坪の知事室
第6章 名画漁り
第7章 経済成長至上主義
第8章 天才の出ない国
第9章 砂漠の論理
第10章 愛国心
第11章 去勢された国家
第12章 コメ自由化
第13章 新々宗教
第14章 サッチャー、シュワルナゼ
第15章 荒廃する教育
第16章 石原慎太郎氏への疑問
第17章 証券スキャンダル
第18章 CIA文書
第19章 大人になれない国家
第20章 ”核の時代”の終焉
共感した、または気になった個所の紹介です。
「つまり私がどう思おうが、一般のアメリカ人は、私を日本という国家に属する人間の一人だと考え、そして日本人とは、こういう物事の考え方をし、こういう行為をとるらしいと判断する、という事実を、彼は私に教えようとしてくれていたのだ。」(12頁)
→中国に私がいて感じたのは、今、この考え方をできない、しないという日本人も多いということ。
「祖国という言葉は、この国では死語となりつつある。だが、祖国があるということは、何にも代えがたいことなのだ。」(14頁)
「大事なのは、国が何をしてくれるかのではないのだ。国に対して、国民のひとりである自分が何をなし得るか、なのだ。」(17頁)
「ゴルバチョフほどケンカが上手く、国家の代表として行動力に富み、リーダーシップを発揮している人物は、他にイギリスのサッチャーぐらいしかいない。」(27頁)
「政治家というのは、その10年先、20年先を見るだけのキャパシティーを持たなければならない。それが、理念であり、ビジョンである。」(29頁)
「確固とした世界観と歴史観、そしてビジョン。リーダーのリーダーたり得る資格は、それだ。(中略) 国家の10年先、20年先を見据えて国際政治のなかで、日本がどうやって生き残り、主導権を握っていくか。それを具体的に政策としてあげられる政治家が必要だ。」(31頁)
「一流を理解するには教養がいる。教養を得るためには努力が必要だ。札ビラだけでどうにかなる問題ではない。札ビラだけで一流を手に入れようとする行為が、逆に、以前にも増してどんどんと自らの精神を貶めているということに、そろそろ気づいてもいいころだ。」(88頁)
「いまさらいうまでもないが、この日本という国はいつだってそうだ。常に外に背を向け、内側を軸にしてしか物事の展開を考えようとしない。世界に対する責任を忘れ、無意味な枝葉末節に逃げ込む。そこには、世界における日本をいかに存続させ、戦後45年を経て手にした豊かさをどうやって持続させるかという理念もビジョンもない。」(134頁)
→90年12月初出の文章です。
「そして、愛というのは、口はばった言い方をすれば、奉仕と犠牲の心だ。相手が女性であれ、国家であれ、愛は莫大な精神のエネルギーを必要とする。」(136頁)
「だが、ブランド品はもともと、何十年、何百年をかけて確立された個性の集まりだった。(中略) 従って、価格はリーズナブルでも、合理的でもなく、ただその商品のコンセプトを理解できる人間が、ある意味では、法外な価格を支払う、そういうものであったはずだ。」(149頁)
「そのシュワルナゼ氏は、私にこう言った。「政治家は血の通った人間であり続けなければならない。清い人間、物事が見通せる人間、そういう人間であって初めて政治家になれる。そして信念をどうしても曲げなければならない場合には、潔く辞めるのが政治家です。」」(194頁)
「戦後46年、日本は経済成長を遂げる中で、確実に何かを失ってしまった。「何か」とは「恥を知る心」であり、「倫理」であり、また「良心」や「正義」をあてはめてもいい。」(249頁)
→91年8月初出の文章です。
さて、序章にこのように書かれているので紹介します。
「日本にいる限り、やはりこの国を批判し続けることが、私にできる最大の貢献なのだ。それが私にとっての「祖国への愛」に他ならない。」(18頁)
正直、誰が望んでいるのでしょうか。この本は、その通り、全章批判ばかりで成立しています。
副題では、若者たちに怒れ!!と呼びかけていますが、著者の怒りを正当化したいためとも考えられます。
著作のタイトルですが、『そしてわが祖国』のそしてという接続詞は、何を受けているのかも、説明がありません。
また、落合氏を調べてみると、氏個人のサイトが見つかりました。
タイトルが、『勝ち組クラブ』。
繋ぐことばが見つかりません。
約20年前に書かれた本と縁あって読むことになったわけですが、こうして文章が、どんな形であれ、時を超えて残されていくことは、ある意味残酷だと思います。
落合氏は、小説家で充分だったのではないでしょうか。
そしてわが祖国 怒れ!!日本の若者たちよ (集英社文庫)/落合 信彦

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