あいつに最後にあったのは

 

いつだったろうか

 

職場近くの路上にぼーーっと

 

立っていたあいつ

 

 

 

あまりの偶然に「何しているの?」と

 

聞くと「人を待ってる」とだけ言った

 

何しているの意味は「今 どうしているの?」と

 

いう意味だったけど

 

たぶん理解したところでそれは話さなかっただろう

 

 

 

あれから20年近くなっても

 

この日が来ると今どうしているだろうかと思う

 

大変失礼だが暖かな家庭を築いて

 

平和に穏やかに暮らしているとは思えない

 

むしろそうだったらどんなにかいいのか

 

そしてどんなに悲しいのか・・・。

 

 

 

もしかしたらもうこの世には

 

いないかもしれないと思う 

 

若いころはそんな人生を送ってきた彼

 

病気と闘い 学校もあまりいかず

 

心を病み 警察の厄介にもなり

 

(犯罪ではなく冬の山中で遭難したことがある)

 

母子家庭の極貧生活だった

 

 

 

それでも中古の小さな赤い軽自動車で

 

今まで見たことがない素晴らしい景色を

 

何度も私に見せてくれた

 

今だにあの星空以上の星空を見たことはない

 

 

 

今日はそんなあいつの誕生日

 

生きていたらおめでとう

 

生きているだけで幸せだってこともある

 

どこにいるかまったくわからない同級生よ

 

あいつの人生に幸あれ