小高い丘陵の足下に広がる光のかけらたちを
そっとひとつかみして闇にほうり投げた
色に紛れた青い星に僕の願いが届くように
触れるとこわれそうな気体の固まり
不確実なものを伸ばした手が欲しがった
そして誰のものでもない僕は誰かのものになった
空に色があることを知り
弾くような緑を抱く草木にやすらぎを覚える
風は人に明日の行方を悟らせる
...と信じていたのに
空は幾重にも文明を運び続けるうちに単色に塗りつぶされ
草木は言い訳もせずにアスファルトの割れ目で息をする
防音ガラスの高層ビルは風に耳を貸そうとはしない
ようやく手に入れた僕の希望は
いつのまにぬらりとすべり落ちたのか
手垢の付いたフォアグラのような未来の化石
だから明日から僕は立派な人間になる
今は故郷を懐かしむ愚かさを慟哭の糧にして
むなしさを呼ぶだけの心のぬめりをその内側に塗りつけて
ああ こんなに遠くに来てしまった僕を許してくれるだろうか
あの星が瞬いてから幾千の夜が作られて
ようやく目にできる輝きはあまりにも小さいので
かざした手の隙間にすら光は漏れてはこない
そのかわりに星は僕に涙を流すことを許してくれた
二度と見ることのない輝きの代わりに
心の滴は今夜も夜空から生き物たちを慰め続けている
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12年前の私はやっぱり愚かです(笑)