「 音楽師 」  




 あてもなくこの町に住みつき


 れんがのはがれたガード下で


 今宵も手垢色のギターを弾く



 ボディについた三日月の痕を


 繰り返し指が勝手になぞっている


 厚手のゴムバンドがカポの代わり



 流行の歌は満足に弾けないので


 春夏秋冬の流れる風を頼りに


 心に映った旋律だけを口ずさむ日を重ねる




 声高に主張もせず 丸い背中を伸ばす勇気もない


 透明な心に人という色をつけた


 僕という固体があるのみ




 Fの音が濁った夜は


 もう逢うこともない昨日の人を思い


 G7の音に明日をみつけては


 生きている今日に感謝の祈りを捧げる






 指先に血がにじんできたら


 どこかで病んでいるあなたを探して


 流れていくこの音が心の礎に届けばいいと願う


 さらに許されるなら


 やわらかい少女のほほに涙の真珠を飾り


 捨てた夢を拾う若者に少しだけ手を添えては


 ごつごつした中年男の手に花の香りを届けたい


 かなうかかなわないかだけが僕に許される最後の自由





 無番地のガード下に今宵も響くギターの音


 一人でいるよりはやさしくなれるから


 僕は町の音楽師 誰かのために音を紡ぐ




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いやぁはずかしい(/ω\)



10年前の今日



私はこんな詩を作っていました




今なら


もっともっと推敲するところが



たくさんありますが





これが


その時の私だから



そのまま載せてみました