旅人の夏ひとつ駅を降りるたびに 僕は誰かの夏になって その日常を徘徊していた 古人の足跡が どこかに落ちていないかと 雑踏を分け入る 夏の気配が 僕の手をひいて くれる以外は 日が昇り沈むことに 何のかわりもない 傾きかけた夕陽は そっと僕の庭に入り込んで 一瞬の夏を届けてくれる 夏の行き先は 誰が決めるのだろう 歩いても歩いても たどり着かない僕の夏は 見知らぬ自分の夏なのかもしれない