ニューヨーク1週間 | 音ぼけもののけ手記

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---hiroya's ramblings---

ニューヨークに1週間いて,4本の映画を見た。

まず週明けの月曜日は、カンヌで昨年審査員賞を受賞した河瀬直美監督の殯り(もがり)の森と、同氏の垂乳母(たらちめ)というドキュメンタリー作品。殯りの森は大好きとは言えなかったけれど、引き込まれるパワーがあった。不気味であり、かつ美しい奈良の森が生き物のようで、そのじわじわとした時間性が独特。演技もすごい。素人とは全く思わせないうだしげき氏は圧巻であった。垂乳母(たらちめ)も、Exploitationという気がしないでもないが,あそこまで徹底したら文句は付けられない。

その2日後、Hunter S. Thompsonの生涯を、生前の記録フィルムと、インタビューをつなぎ合わせて,Johnny Deppのナレーションと共に綴ったGonzoを見る。ThompsonのFear and Loathing in Las Vegasは原作も読んだし、映画も見ているが,彼の生涯については知らなかったので、勉強になった。もう70年代初頭に、アメリカン・ドリームの死を宣言した彼が、35年近くたってから自殺するのも腑に落ちない。ほんとうにブッシュの再選という出来事が、彼の絶望を決定的なものにしたのだろうか。時代の寵児だったといえばそれまでだけど、あそこまで熱くなれるジャーナリストはあと100年しても出てこないだろう.(あんな人がそうたくさんいても世間は大変困るけれど)

それからCatherine Breillatの新作Last Mistress (La vieille maîtresse)を見る.ちょっとがっかり。彼女は今までショッキングな作品を作り続けてきただけに、耽美的で良い感じにデカダンな歴史ものは、ぴんとこない。

最後の日はフランス映画をもう1作。Tell no one(Ne le dis à personne)はよくできたサスペンス。
よく計算されていて,ちょっとミステリの作りに無理があるような気がするけれど、アガサ・クリスティーとか,ああいう上質のサスペンスの香りがする。パリのbanlieuの状況もちょっと出てきて面白い。

帰ってきてからアラーキーのドキュメンタリーをDVDで見たけれど,その話はまたあとで。