とっても神聖で美しい、最近の元気な日本映画を象徴しているような作品です。
本来持っている日本の文化、慣習を映像にする。「亡くなった方を棺桶に入れる」、こんな仕事を真正面から捉えた作品はなかなかできるもんじゃないです。日本であるが故に作り出せる映像だと思います。
旅立ちのお手伝いをする。納棺師のお話。
実際に納棺師という職業があることを知りませんでした。人が亡くなると葬祭屋さんが全てやってしまうもんだと思ってましたが、やっぱり何十年生きてきても知らないことだらけだなって思いました。
時にユーモラスに 時に真剣に 時に別れを哀しみ 惜しみつつもその別れを受け入れ涙する。
納棺師に託された故人の旅立ちの儀式は美しく哀しい。
監督は滝田洋二郎、前作『バッテリー』は劇場で鑑賞しましたが、なかなか良かったので、今作も期待していましたが、期待以上ですごい満足です。キャストは主役の本木雅弘、広末涼子が好演していますが、なんといっても山崎努でしょう。納棺を請け負う会社NKエージェント社長役で一見とっつきにくそうなんですが、実はこの仕事に愛情と誇りを持っているという人物を見事に演じきっています。前作の『クライマーズ・ハイ』もひとくせある新聞社社長を演じていましたが、ほんとこの人の癖のある嫌味と凄味とほんの少しの愛情がミックスされた演技には鳥肌が立ちます。あと、今やどの映画にも出てるんじゃないかと思うくらい引っ張りダコの笹野高史も銭湯の常連客の役ですが、最後にすっごい演技を見せてくれます。あんまり書くとこれから観る人に怒られるのでこのへんしますが、涙なくしては観れませんよ。
それと、音楽は久石嬢でこれまた素晴らしい。美しい旋律の中で流れていく物語に心も体も心地よく作品に浸っていました。
この作品にはもうひとつ、人が持っている偏見やわだかまりもテーマになってるように思います。もっと大きな視野で客観的に物事が見えればそんな偏見なんて無くなるんでしょうけど、人からメディアから吸収した偏った情報を信じて思い込む。一番悲しいことです。でも、実際、自分も小さい頃、火葬場の仕事なんかをあまりよくは思ってなかった記憶があります。何でなんでしょうね。今の子供たちはどうなんでしょう。大人がしっかりしないと何も解決しないですね。
最後にひとつ気になったのは、意図的なのかどうか分かりませんが、亡骸の姿がちっとも亡骸っぽくないことです。これはどんなドラマとかにも共通しますが、特に今回は納棺のシーンですから作り込んでるのかなって思ってましたが、まったくの的外れでした。ちょっとへそ曲がりな事を言えば、納棺の光景が綺麗すぎると思ったんです。作品の中では孤独死をして腐敗している亡骸の納棺を行うという場面がありますが、実際には亡骸の納棺シーンは出てきません。これをやっちゃうとまた違った評価になってしまうのかな。もっとリアルにすべきかどうかっていうのは作品のトータルの完成度や興行収入なんかを考えるとやっぱりこうなるのかなってちょっと考えてしまう部分ではありました。
