薬ー2 | 脳卒中(脳幹出血)医師 moonkikicocoのブログ

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約72歳。12年ほど前に脳幹出血で倒れました。合併症はたくさんありますが、何とか生きています。つまらないと思うかもしれませんが、愚痴っぽいブログですが、よろしく。

 さて大きく変わってきたものに、心不全用の薬があります。従来金科玉条の如くに、「ラシックス1錠 スローK1錠というわけではありません。この10数年ですごく変わりました。

 現在の標準治療は、β阻害薬「昔は禁忌だった」+ACE/ARB+MRBですね。最近はこれに新しいバルサルタン「エンレスト」が加わっています。降圧剤としてはシャープです。目的を持って降圧ができますね。また脈拍と心筋の収縮力の関係から、なるべく低い方がよく、洞結節のHCNチャンネルに特異的に働く「イブプラジン」等もでてきました。「欧米では早くから使われていました」。

 そういう意味で心不全用の薬は劇的に変わりましたね。最近ではSGLTー2阻害薬もでてきました。治療の幅も随分と広がりました。

 思えば虚血性心不全で夫婦ともに私のクリニックに来ていて、倒れた後で偶然に奥さんに会ったら、ご主人が亡くなったということで、びっくりしました。

 

 最後に「抗不整脈」について。「動悸」=脈の乱れは症状の強さにも関わらず、放置ないし経過観察が多い。昭和の終わり頃でしたか、ボーン ウイリアムスの分類ですか不整脈薬の分類がなされて、一生懸命に覚えました。少し難しいのでザックリと言います。心筋細胞は細胞膜を隔てて分極していますが、「ー100mVくらいあり」、電気刺激で興奮すると、初めはナトリウムチャンネルが開き、その後カルシウムやカリウムチャンネルが開き、流入したカルシウムで筋肉フィラメントが動きます。その後元に戻り、繰り返していきます。

 抗不整脈はこういうチャンネルを修飾します。

 その時はまだ抗不整脈は少なく、次第に増えてきて従来の分類では不都合がでてきて、新しくシシリアン ガンビット分類になりました。

 その頃はアブレーションもなくて、上室性不整脈も困難でした。実際不整脈外科もありました。頻脈にたいしてβ阻害薬やカルシウム拮抗薬を利用する以外は、現在では「抗不整脈」は心室性がほとんどです。ここで注意しておきます。抗不整脈薬は不整脈の予防に使いますが、催不整脈作用があり、時に致死的となります「私が嫌いな理由がそれです」。

 キニジンやプロカインアミド「アミサリン」や「ワソラン」もそういう意味では使用場面が少なくなりました。ヂソピラミド「リスモダン」やメキシレチン「メキシチール」やワソラン注やリドカイン注は何の心配もなくて使えます。ソタロールやピメノールやタンボコール等も注意しながら短期間ならば使います。

 アミオダロン「アンカロン」はやや特殊です。リエントリー性に使います。皮膚や甲状腺には注意ですね。 

 他の薬は短期間「おおむね1~2年以内」ならば使います。

 因みに抗不整脈薬は「ハイリスク薬」で、厳密な服薬指導が必要です。ただし降圧剤として使うときは別です。それよりもストレスを避けるとか良く寝るとか血圧を低いめにするとか、心臓の外部環境を整えてあげるのが良いと思います。色々な種類がありますが、β遮断薬とカルシウム拮抗薬はかなり安全だと思います。

 実際は何か目的で「使う」というよりも、「使ってしまった」というのが多くて、減薬は難しいでしょう。しかし漫然と長期には使わないでしょう。

 まとめていえばアブレーションなどの進歩で抗不整脈薬は使用範囲がかなり制限されているということです。

 私が市民病院で診ていたのですが、特発性心室頻拍症で「除細動器」を埋め込んだ夫人でした。診療所では大したこともできないのですが、毎週のごとくクリニックに来ていました。専らつまらぬ世間話でしたが、そういう話も「聞き役」になるのです。

 倒れてからの十年間の様子を見ていれば、画期的というのか、日本で創薬された新しいミトコンドリア薬「ツイミーグ」が期待ですね。糖尿病薬ですが。