今日は、はるばる神戸まで、能のイベントに行ってきました。
「俊徳丸伝説を巡る」其の一 噺と節で聴く「弱法師」
プログラム
一調 「弱法師」 謡 上田拓司 小鼓 久田舜一郎
説経節 「しんとく丸」 三代目若松若太夫
落語 「弱法師」 桂 吉坊
出演者によるトーク 「三様の弱法師」
(イベントサイトから)「継母の呪いで視力と美貌を失い絶望の淵に陥った主人公が、許嫁の献身的な愛と観音の霊力によって救われるという「俊徳丸伝説」。大阪の四天王寺を重要な舞台としたこの物語は、まず説経節に現れ、能や浄瑠璃、歌舞伎、落語など、様々な形へ展開されてゆきました。」
能に「弱法師」という演目があるのですが、元々は、他の芸能で生まれ、そして様々な芸能でも、形を変えて取り上げられてきたものなのだそうです。その変遷についてたどれる面白そうなイベントでしたので、ちょっと遠いとは思ったのですが、出かけてきました。
神戸の西宮にある、白鷹禄水苑。西宮の蔵元、白鷹が運営する文化施設です。神戸の元町から西宮まで電車で移動し、西宮からは少し歩きました。
1階はショップやお酒が飲めるカフェのようなものもあって、通り抜けると奥には美しい庭と展示ルームがありました。
受付後、2階の宮水ホールへ。
飾られている屏風が素晴らしく素敵でした。
最初に、能の「弱法師」を、謡と小鼓の一調という形式で。盲目となった俊徳丸が天王寺の西門、石の鳥居から、西方極楽浄土を思い浮かべる「日想観」の入日を拝み、昔に観た景色を思い浮かべ喜ぶが、足元がおぼつかず転び、恥ずかしく思うところまでが謡われました。この後、かって讒言を信じ、自分を追い出した父親が現れ、俊徳丸を連れ帰るという物語です。
能「弱法師」は、これまでにも何度か観たことはあるのですが、讒言を信じて息子の俊徳丸を追い出しておきながら、苦労で盲目となってしまった息子を見つけても、すぐには名乗れず、夜になって、やっと名乗り、家に連れ帰る際に、謝りもしないところが、酷い父親だよなあと観るたび思っていました。もちろん歌舞伎の「寺子屋」などと同じように、現代の観点で評価しては、いけないのだろうけれどとは思いつつ、すっきりせず、ただ俊徳丸の面、弱法師は、気品ある美少年に見えるので、その様子と舞を楽しむという楽しみ方でした。
今回は、俊徳丸が日想観で入日を拝み、思い出す景色に喜び、転んで恥じるまでの謡の部分の一調なのですが、以前に観た舞台を思い出しつつ、小鼓の音を楽しみました。
続いて、いよいよ、説経節「しんとく丸」です。三味線を弾きつつ、お経っぽい囃子と、ところどころに台詞が入る面白い舞台でした。能では、俊徳丸の妻は、謡でちらりと触れられるくらいなのですが、許嫁も登場し、観音に救われますし、能の前段にあたる俊徳丸が蓑嵩と杖と共に捨てられる辺りの描写が、抒情豊かに語られました。トークのときに若松若太夫さんが、「しんとく丸」は、聴衆を泣かせなくてはいけないとも言っておられました。
休憩後は、この中で一番新しく昭和に作られた落語「弱法師」です。設定に重なる部分はあるものの、商家の俊徳丸(俊坊)が父親に叱られ、家出をし行方不明となるという全く異なる筋立てでした。息子を案じて泣く母親、ついに天王寺で見つかった息子を連れ帰りたがる母親に、それでは息子のためにならない、連れ帰って甘やかしては、全く何の進歩もないと、断腸の思いで置いて帰ることにするが、団子や餅を差し入れさせるという、見ていて目頭が熱くなる物語になっていました。落語といっても、ほぼ笑いはなく、唯一最後に、他の乞食たちが「長患いで難儀しております」と言うのに対し、家出の原因が、誤って菜包丁「菜刀(ながたな・ながたん)」を買ってしまったことから、「ながたんで、難儀しております」という下げで、笑わせるという面白い落語でした。実際には、あまり上演されることは無いそう。
上演後のトークで、能楽師の上田拓司さんが、「落語を舞台袖で聴いて「連れ帰らないんだ!」と驚き、自分だったら、きっと連れ帰ってしまう、そして甘やかしてしまう」と笑わせ、それに対して、落語家の桂吉坊さんが、「反対に、自分は以前に能を観て「連れ帰るんだ!?」と驚きました、と、また笑わせてくださいました。
3人の方々の芸を拝見し、聴かせていただき、また、トークも聴かせていただく中で、時代や聴衆に合わせて、俊徳丸の伝説が変化していったことを感じられて、非常に面白いイベントでした。また今後、「弱法師」を観る機会があれば、一層楽しく拝見できそうです。
https://hakutaka.jp/docs/rokusuien/1787547889653.pdf
終演後のドリンクタイムでは、白鷹さんの蔵出し限定酒も、ふるまわれたのですが、残念ながら駅から家まで車のため、リンゴジュースをいただきました。

でも、せっかくなので、お土産に白鷹のお酒を買って帰り、家で長男坊と美味しく、いただきました。
伊勢神宮に奉納されるお酒、神宮御料酒なのだそう。先日、伊勢神宮に行ったばかりなので、それも思いつつ飲みました。










