渡辺祐真編『みんなで読む源氏物語』 | 翡翠のブログ

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源氏物語を読む読書会に何度か参加して、これまでに何回転か源氏物語を読んでいます。何度読んでも面白いと思って読んでいます。むしろ、読み返すと、一層面白い。初めて読んだ時には、実は宇治十帖あたりは蛇足のようなきたしていたし、浮舟というキャラクターも全く好きになれなかったのですが、再読して、むしろ宇治十帖の方が面白いくらいかもしれないと感じるようになりましたし、浮舟という人物造形に共感したり理解する部分が生まれてきました。

今回、源氏物語に関連した本を読みました。

渡辺祐真編『みんなで読む源氏物語』

 

実は、読み始めた時には、第1章が全体のあらすじだったことから、「あれ?この本の読者ターゲットって、まだ源氏物語を読んだことが無い人なのかな?」と、そうであるなら、あまり突っ込んだ話とかないかもと心配しながら読み進めたのですが、とても面白かったです。必ずしも源氏物語を専門とする学者の先生方の本でも無いようでしたが、様々な切り口から語られる源氏物語、さすがの面白さでした。

 

2章 紫式部とその時代 川村裕子

は、ある程度知っていることが多かったですが、ちょうどいま、大河「光る君へ」を観ていることもあって、道隆とか道兼とか名前が出ると番組内の様子が目に浮かぶし。

 

3章 日常づかいの和歌・古典 対談 俵万知 安田登

は、最も面白く読んだ章の一つ。取り上げられている「紅葉賀」の場面は、私も一番好きで目に場面が浮かぶところでもあるのですが、それを視覚と聴覚の観点に加え、アーサー・ウェイリー訳版にも触れて、本当に「なるほど、その通り!」で、原文を読み返したくなる素晴らしい描写だと思いましたし。そこから、夕顔と能「半蔀」について、「能においては物語の筋よりも『源氏物語』の言葉をそのまま引用する」「紫式部が書いた言葉そのものに力を持たせます」という箇所も印象的でした。

 

山崎ナオコーラさんの『ミライの源氏物語』(淡交社)が紹介されていて、「古いものを読むときに、時代をさかのぼって感覚まで昔の人になる必要はない」立場だそうなので、読んでみたく気になります。

 

和歌が物語で持つ効果について、六義園(和歌の庭)を紹介している部分もとても気になるところ。庭の石柱に和歌のキーワードが書かれていて、それを見て歌を想起し、さらにその歌の景色を現実の景色に重ねることが期待されているというのは、すごい。

 

5章 現代小説としての源氏物語 鴻巣友季子

のあたりも面白かった。特に、ウルフが源氏物語を読んで書いた書評、多分初めて観たと思いますが、これまた面白かった。願わくば、最後まで読み通してから書評を書いてほしかったというのはまさに!

 

6章 謎と喜びに満ちた世界文学 英語を経由して源氏物語を読む 円城塔 毬矢まりえ 森山恵

アーサー・ウェイリーによって訳出された『源氏物語』の翻訳"The Tale of Genji"が取り上げられ面白かったし、英語版が海外でどのように受け止められたか分かった点も面白かった。

 

8章のデータサイエンスと生成AIによる分析によって、新たな引き歌が見つかったところも、面白かったです。

 

この本を通して全体について取り上げられている本も気になりましたし、アーサーウェイリーの英訳版も気になる、とはいえ英訳版を読む英語力には自信が「ない」のです。