オペラ モーツァルト「魔笛」 | 翡翠のブログ

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昨日は、METの「デッドマン・ウォーキング」に続いて、もう一本、オペラを観ました。

 

サラマンカホール・プロデュース・オペラ モーツァルト作曲「魔笛」

モーツァルト作曲:オペラ「魔笛」
指揮・編曲/倉知竜也  
演出・美術/乃村健一
原語歌唱、日本語台詞、日本語字幕付き
サラマンカオリジナル・パイプオルガン編曲版
上演時間 約3時間(休憩を含めて)

 

キャスト/
タミーノ:山本康寛 
パミーナ:趙知奈 
パパゲーノ:近野賢一 
パパゲーナ:舟倉悠利 
夜の女王:林美予子 
ザラストロ:伊藤貴之 
侍女Ⅰ:久野絵理
侍女Ⅱ:濱野織
侍女Ⅲ:梅澤市樹 
童子:鳥木優佳里・堀江七海・スミス桃美・村山佑菜・武田紗那恵 

モノスタトス:山本治樹 
弁者:上田賢 
神官:山本農里 
合唱:サラマンカホール魔笛合唱団
パイプオルガン:三上郁代
ピアノ:池原陽子
シンセサイザー:重左恵里

稽古ピアノ:池原陽子、重左恵里
原語、合唱指導:近野賢一
照明:田中宏幸(ライティング・ビーム)
制作・主催/サラマンカホール

 

元々予定してチケットを取っていたのはこちら。急遽、METは1週間しか公開期間がないので、一日に二本オペラを梯子することに。

サラマンカホールは毎年、12月には観やすいオペラを公演してくださっていて楽しみに子どもと観に行っています(子どもは強制)。魔笛は以前に、子ども向け版を観たことがあります。

 

今回も、アリアの歌は原曲のドイツ語で字幕が出ていました。一方で、セリフの部分は日本語でオリジナルに作られているようで、タミーノが「ここはいったいどこだ?流行りの異世界転生か?」などいうセリフもありました。特にパパゲーノのセリフは、オリジナル度が高く、ダジャレなど長い舞台の中で子どもたちを笑わせるしかけがあったように思います。試練の神殿の中で差し入れられる食べ物が、サラマンカホールのオリジナルどら焼きだったりもしていましたし。ただ物語の進行自体は原作を踏襲していたように思います。時間も、ほぼオリジナルのオペラと同じく、休憩を入れて3時間以上でしたし。

 

大道具は背景に人の出入りのためのキャスター付き壁があるくらいで、ほぼなし、シンプルでした。しかしパイプオルガンの前に薄布が天井から下げられていて、場面に合わせてライトで青や赤、模様などが照らされると、パイプオルガンが、まるで城や神殿のように浮かび上がり光輝き、十分美しかったです。

 

また小さめのホール、ステージなのですが、パパゲーノが客席ドアから登場し、客席のそばで話しかけるように「私は鳥刺し」 を歌ったり、夜の女王の登場場面、夜の女王のアリア「ああ、怖れおののかなくてもよいのです、わが子よ」の女王は2階のバルコニー席に登場し、膝まづくタミーノに向けて歌いかけるなど、空間を利用した舞台構成だったように思います。夜の女王のアリアは、2幕の「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」ともに、以前に来日公演で見た魔笛の夜の女王にアリアに比べると、最高音のコロラトゥーラが少しだけ苦しそう、出きっていない気もしましたが、十分以上に楽しめました。

 

音楽もオーケストラでなくパイプオルガン編曲版なので、パイプオルガン、ピアノ、シンセサイザーで演奏しているのですが、ピアノってオーケストラに変わって演奏もできるし、パイプオルガンはさらに多彩な音色が出せるし。魔法の笛や魔法のグロッケンシュピールの音も楽しめ、音楽もとても良かったです。

 

ただ、なんといっても200年以上も前に作られた作品なので、現代に当時の台本で歌うと、うーんという部分はある。セリフが現代になっているのに、アリアの歌詞になると「女は口ばかりで行動しない」「女は男に導かれてこそ」「男らしさでもって試練を乗り越え」等々、現代のコンプライアンス的にどうかという歌詞なのは仕方がない。歌の部分になると、歌詞をあまり気にしないで、声と音楽を楽しむようにしました。この点、子どもと一緒に観るオペラとしてはどうなんだろう?いっそ、うちの子ども(年齢的には大人)と観に行くのだったら、午前に観たデッドマン・ウォーキングの方が彼らも楽しめたのかもしれません。ずっと歌っていることさえ、乗り越えられれば内容的には。

 

またセリフ以外にも、そもそもの物語の展開自体が?という部分も多い。子どもから「展開の意味がよくわからない。3人の童子って結局何?最初は夜の女王に従って、タミーノたちを導いて、後半ではザラストラに従ってた?」等々、聴かれたのですが、何度か「魔笛」を観ていて、脚本を読んでいる私にも、実はわかりません。

 

私の楽しみ方は、パパゲーノと夜の女王の歌を楽しみに行っている感じです。最後のカーテンコールに主役としてラストに中央に登場するタミーノ、パミーナですが、正直、アリアは、パパゲーノと夜の女王の方が楽しみだし耳に残る(後は、ザラストロの低音も好き)。

 

パパゲーノやモノスタトスのセリフに笑い、パパゲーノや夜の女王の歌を楽しみ、ピアノやパイプオルガンの音色を楽しみ、やっぱり生の舞台の楽しみってあるよなあ、気持ちが贅沢・・・とも、午前のMET映画と比べて思ったのでした。