ゲルハルト・リヒター展 | 翡翠のブログ

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豊田市美術館では展覧会、ゲルハルト・リヒター展を観ました。

 

現代美術には疎いので、ゲルハルト・リヒターは、これまで特に見知ってはいなかったのですが、少し前にゲルハルト・リヒターの半生をモデルにした映画『ある画家の数奇な運命』を映画感想会に参加するために視聴しました。作品や創作の背景を描くドキュメンタリータイプの映画ではなく、素材をモチーフにした創作ドラマという感じではあったのですが、それでも当時の時代や文化背景や芸術を追い求める主人公の姿などが非常に面白い映画でした。

 

さらに、その後、ゲルハルト・リヒターを扱った本の読書会にも参加し、制作に至る背景や作品の変遷など取り上げられていて、なかなか面白かった一方で、やはり、フォト・ペインティングや、偶然性によるアブストラクト・ペインティングなどイマイチ良さがわからなくもあり、すでに東京会場でのリヒター展を見たという参加者の方々から「現物を見て感じるものは写真の口絵とはずいぶん違う」とのお話も聞いたので、一層実物を観てみたく、展覧会に行くのが楽しみでした。

 

観に行ってみて思ったのは、作品の質感とか、重なって塗られたり削られたりしている塗料の立体感、削られ感などは、実物ならでは、実際に見て感じて味わう面白みがありました。

 

アブストラクト・ペインティングで重ねられた色、伸ばし引きずられた色、重なっているところ、削られ下地が見えている部分が面白い。

 

カラーチャートは正直、私にはよくわからない作品テーマなのですが、毎回、その色の配置組み合わせは全くランダムなのだろうか?何か指示があったりするのだろうか?配置し直されることはあるのだろうか?など考えながら眺めていました。芸術ってなんだろう?とも思います。

 

今回、とても楽しみで、実際に見ても、やはり面白く感じたのがこれ、「8枚のガラス」。自分自身や、周りの他の鑑賞者や、作品なども映り込む。

 

特に、周りの作品、ストリップやカラーチャートが写りこみ、反射や透過で不規則な見え方が美しい。

 

回りの作品群によって雰囲気がずいぶん変わりそうに思えたので宇が、この組み合わせでの展示は、何か指示があるのだろうか?それとも豊田市美術館ならではの視点、観点で組み合わせ配置、展示されているのだろうか?

 

今回、もっとも観たかった「ビルケナウ」。

 

同じ部屋にグレーの鏡も展示されていて写りこんでいたのですが、こういった配置には指示があるのだろうか?美術館の学芸員さんらの独創なのだろうか?

反対側には強制収容所の内部を撮影した、じっくり見ると相当ショッキングな写真も展示されていて、それらだけ撮影禁止となっています。これらの写真の上に塗料が塗り重ねられているのですが、元になった写真は目を凝らしてみても見つけられませんでした。

 

向かい合わせにオリジナルと写真版が向き合っているのが、また不思議。どういう意図で展示されているのだろうか? オリジナルは塗料の厚み、削れ、引っ張られ、さらにはキャンパスの破れ?のようなものもあり、それらも含めて作品と思えるのですが。一方で、作者はなぜ写真版も作成しているのか?もしかして、私がつい見入ってしまう絵の具の厚み、垂れ、削れ、破れなどを、リヒターは逆に削除したいと考えていたのだろうか?

 

ラストの方の作品。

 

偶然性の高そうな作品。次図のものが色合い的に気に入りました。

 

閲覧後、申し込んであった講演レクチャーも視聴しました。

レクチャー「リヒターとアメリカ」 講師 荒川徹氏(視聴覚芸術研究・愛知淑徳大学准教授)

新聞写真を基にした写真加工による作品について、音紋との関係など、色の諧調の管理は難しそう。デュシャンへの意識、日本への意識など、会場からの質問も深く思えました。

 

次回のレクチャーはオンライン配信で視聴できそう。