渦 妹背山婦女庭訓 魂結び 読書会 | 翡翠のブログ

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昨日は、猫町倶楽部の読書会に参加していました。

 

課題本は、大島真寿美 「渦 妹背山婦女庭訓 魂結び」、

著者の大島真寿美さんがゲストとして参加してくださるという嬉しいイベントでした。

 

課題本を読んだら、ぜひ文楽を実際に観たくなり、先週末には大阪の国立文楽劇場に足を伸ばして、初の文楽も鑑賞してきました。
もらったパンフレットや、自分で興味があって読んだ参考文献等。

 

前半はグループに分かれて各テーブルで感想の交換。先日読んだ時に感じた、新しい芸術を生み出す産む恐ろしさ、創り出したいという欲求について書かれているということや、新しい作品はどこから(何から)生まれてくるのだろうか、降りてくるのだろうか、などといった感想を話し合ったり。関西弁のリズムが心地よいという感想を聞いて、なるほど、確かにと思ったり。

お供は、にごり梅酒に抹茶黄粉大福。著者の大島真寿美さんがテーブルを順に回ってくださり、質問等にも答えてくださいます。

会話文のリズムについてのお答えが興味深かった。関西弁の方言については監修が入っているけれど、完全にそのチェック通りに正確に直すと、かえって読みにくくなることもある、その匙加減が難しい。(会話文の)「」は、自然に取れてしまった、地の分とセリフの一体感は、浄瑠璃の謡も地に台詞が入る、それに通じるものがある、「語り」をやりたかった、というお話をしていただけました。

 

後半は、懇親会&トークショー。美味しい食事をいただきながら、大島真寿美さんのトークショー。トークは対談形式で、対談相手になったサポーターの方もまた、文楽の大ファンでいらしたので、トークがとても盛り上がり、面白いお話も色々お聴きできました。

 

特に伺って興味深かったのは、

・迷子になることはあったけれど、それは間違ったところに戻って、やり直す。書いていて苦しかった個所はない。なぜなら(書いていて)楽しかったから。

・歌舞伎は観たことがあったから、最初は「歌舞伎」を題材にと思っていた。「妹背山婦女庭訓」を文楽で観て、これなら書けると思った、自分の中に降ってきて、一気に書き始めた。魂がつながった気がした、結ばれて書いている、それが題名の「魂結び」。

・ものを書く、作る人間が感じる「渦」「影」について、何かわからない怖さは自分にもあると思う、それは書く人は誰もが持っている

 

そして、一番心に残ったのは、最後の「映像化」したいと思いますか、したいと言われたらどう思いますか?の質問への答え。

・映像化できると思われたら私の負けだと思う。やれると思われたら、チェッと思う。

と。そうなんだ!

物語、文字でつづられたストーリーは、一見映像というマルチメディア情報より情報量が少なく思えるけれど、実際には読者が各々心の中で想像し作る世界を考えると、リアルな動画で表現しきれるものを超える世界が無限に広がるものですものね、限定されたリアルな映像に落とし込めないものを書いているとの矜持を感じました。

 

書くことへの想い、そして文楽への愛がビシバシ伝わるお話をたくさん伺えた楽しい会でした。