月に跳ねる! 9 | 背徳的✳︎感情論。




















「…にしても」
文吾が身体を起こして言い、
「こんなリアルな夢になるもんなのか。そのおまじないスゴ過ぎん?」
再び周りを見回してから俺を見て息をついた。
「俺もびっくりしてる」
素直に頷くと、
「明晰夢って言うんだろ?こう言うの」
文吾は顎をさすりながら言った。

「明晰夢?」
「夢の中で、これが夢だって理解している夢」
「へぇ… 正にだな」
「夢だって理解してるから、自分の思ったように出来たりもするらしい。空飛んだりさ」
「じゃあこの公園を作り出してるのも、やっぱり俺の意思なのかな… そうなると文吾も…」
「それは起きてから話を擦り合わせてみないと分かんねぇな」
「覚えてる事を祈るよ」
俺は本当に祈るような気持ちになって顔の前で手を合わせた。
そんな俺をちょっと笑ったあと、
「これって小兎ちゃんの本にあったんだろ? 小兎ちゃんは試したことあんのかな」
文吾はぼんやりと星を眺めながら俺に言った。

「まだ試してないって言ってた。夢で会いたいような人はいないからって」
妹の言葉をそのまま伝えると、
「クールだな。何年生だっけ」
文吾が瞬きして尋ねるから、
「5年。マセてて困るよ。同級生の男子なんて眼中にないってさ。俺のことも足蹴にしてるけど」
ため息混じりに答えると彼は吹き出して笑った。

「女の子はどこもそうなんだな」
「モモちゃんはどうよ?今、中3だっけ」
俺は文吾の妹について尋ね返す。
「中2。もうさ、俺の顔見れば『お兄ちゃんだけズルい』って、そればっか」
文吾は俺より深くため息をついてそう返した。
「モモちゃん、相変わらずだな」
俺は笑った。

2つ下の文吾の妹は、小学校に入ったころから、どうして自分は純和風の顔なのにお兄ちゃんだけ外国人顔なのか、なんで私もそうならなかったのか、お兄ちゃんだけズルいズルい、そう繰り返し言って拗ねていた。
容姿を褒められる事が多い兄の側にいるから尚更そんな気持ちが湧くんだろう。

「モモちゃんも可愛いのになぁ」
「自分でそう思えなきゃ、誰に褒められたって納得いかないんだよ」
「そんなもんかねぇ」
「まぁでも… レオが褒めたら、ちょっと落ち着くかもな」
「俺?なんで?」
「アイツはレオのこと気に入ってるから。家に呼べ呼べって、よく言ってる」
「マジか。そうなんだ。おおお、それはちょっと嬉しいな」
俺が照れて頭を掻いた時、文吾は一瞬眉間に皺を寄せてため息をつき、また大の字になって寝転んだ。











つづく





月魚







今週も読んで頂いて

ありがとうございます♪




今週分

だいぶ短くてごめんなさい💦

書くのが間に合わなくなって来ました💧