私は黙り込んでしまった。
後で見返りを求められても困る。
やはりここは断わるべきだ。
何か裏がある。
私は自分で探すから大丈夫と言った。
おまえさんは図々しい子じゃない。
ボクはそれを承知の上で言っとるよ。
この歳だけど、もう結構、頑張っただろ?
たまには人に甘えてみなさいな。
おまえさんは、好かれる子だからね、
ボクが紹介したら、
ボクの株が上がるからね。ハハハ。
私は、
社長に就職の世話をしてもらうほどの仲ではないし、
どこぞの小娘にそんな世話を焼いたなんて、
奥様は何と思いますかと言った。
ボクはね、絶対浮気しないの。
妻を悲しませたくないからね。
奥さんは絶対だからね。
妾の子の意地ってあるだろ?
浮気しないって決めてるの。
でもね、カホちゃん、妾の子って、
人より辛いと思わないかい?
ボクは就職でものすごく悔しい思いをした。
これからカホちゃんが同じ思いをするだろうと思うと、
助けずにはいられないんだね。
おまえさんはボクと同じ境遇だから、
余計に娘みたいに可愛いんだ。
奥さんは経理をしていてね、
ボクの行動なんか丸わかりなんだよ。
なんなら会ってみるかい?
いえいえ、会いたくないです。
はい会いますなんて人、どこにいる?
いいかい、カホちゃん、
ボクは良い会社を紹介する。
だから約束してくれ。
おまえさんは必ず、
そこからのし上がって行きなさい。
もっと上の世界を見てきなさい。
上に上がるきっかけを作ってあげる。
このチャンスを掴み取って上がりなさい。
上の世界。
ああ、そうか。私はわかってなかったな。
私は向上心がなかった。
父の期待に応える気もなく、
後ろめたい気持ちだったのは、
私はいつも、向上心がなかったんだ。
私はずっとずっと、下流に居たのに、
流されたまんまだったのに、
頑張ってるつもりだった。
『逃げない』だけでは足りない。
這い上がる気持ちがなければ、
人生は好転しないのだ。
社長から頂いたこの言葉を、
今でも肝に銘じています。