当時私の大学のランクでは、
正社員での採用はあっても、
だいぶ枠が厳しいと思う。
まして一流企業には行けなかった。
社長は、
私が行きたい業種の会社を紹介してくれた。
そこは都内の一等地にある大きな会社だった。
通常、事務職の採用はコネしかない会社でした。
社長はそこの取引先で、
私を姪としてコネ入社させてくれた。
社長は相当労力を使って、
多方面から働きかけたようだったことを後から人事部から聞いた。
私の同期は、男性は有名大学がぞろりで、
女性はお嬢様大学ばかりだった。
私ひとりだけ、あれぇ?という大学だった。
約束通り、頑張るしかない。
なんたって、
この中で私だけコネがフェイクだから。
お嬢様ばっかりの中、
私だけスナックの娘だぞ。
しかも、妾の子繋がりでコネを掴んだだけだぞ。
もうがむしゃらやるしかない。
私は誰よりも愛想よく、
誰よりも懸命に仕事に励んだ。
仕事は断らない、残業は当たり前。
お酒の付き合いも断らないが、
不倫のお誘いだけはきっぱり断った。
世の中には、こんなにも浮気や不倫、女遊びが多いのかと驚くほど、人の裏側をたっぷり知ってしまった気がします。
瞬く間に、
可愛がってくれる上司と先輩たちと、
仲良くなった同期たちに囲まれた。
楽しくも充実な、恵まれた職場関係だった。
社会人として、
沢山の常識とかを教えてもらった。
初めて知ったことがいっぱいだったが、
非常識な自分をごまかすことが時には苦しかった。
10代までの私がいた社会とは全然違っていた。
社長の、
上の世界を見なさいの意味が、
よく沁みるようになった。
一生懸命生きると、いいことはある。
育ちの良い人ばかりに囲まれたこの環境は、
後に自分が家庭を持ったらどうしたいかという見本を見せてくれたと思う。
でも、母がスナックやってることは内緒だった。
私がどういう境遇だったかも、
あんまり言えなかった。
みんなとはあんまりにも違っていたから。