異形な世界と絶妙な展開
- 戦う司書と恋する爆弾 BOOK1(集英社スーパーダッシュ文庫)/山形 石雄
- ¥600
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前回は古いバカ作品だったので、今回は現行放映中のシリアス作品から『戦う司書』を。
近年のライトノベル原作アニメとしては稀に見るほど暗く残酷な世界観の作品で、登場人物もみな一癖も二癖もある。その人物の書き方にしても、昨今の漫画的な属性をありったけぶち込んだそれではなく、どちらかと言えば劇画調というのか、押さえ気味に地味ではあるが根底に様々な物を抱えた存在として書かれているのが特徴。
またイラストレーターが
「高確率で表紙が遺影になってしまう無慈悲な物語」
と公言するほど死亡率高し(絶対死ぬ訳ではない)
しかしながら本当の意味で無慈悲にアッサリ死んでしまう訳では決して無く、それぞれ何かの為に死力を尽くした結果であり、根底にはある種のヒューマニズムらしきものさえ漂っていて死亡者を量産して目を引かせるだけの作品とも一線を画している。
ヘンテコ能力バトル&根底のヒューマニズム繋がりのせいか荒木飛呂彦にいたく気に入られているらしく、原作の帯には
『石雄よ!オレは君の味方だ!』
(原作者/山形石雄)
という荒木吸血鬼からの無駄に熱いメッセージが記されているほど。
死者が『本』と呼ばれる生前の体験を凝縮した石版に変化する、という独特の設定を巧みに生かして各エピソードを構築しており、その構成力の高さや長期的な伏線活用の上手さも光る。
アニメも序盤こそ取っつきにくいとの声が多いものの、物語が進むに連れて評価が上がってきており、原作既読者の目から見ても、省略されてはいるが複雑な物語を的確に消化させているという印象を受ける。
未だ終盤の尺に心配を残す部分はあるが、ダークファンタジーの好きな方には是非ともお勧めしたい一品に仕上がっている。
なお、最新話では物語の佳境の一つにして超重大なネタバレが起きているので見る場合は1話から順を追った方が賢明。