高機動ババアと高機動ゾンビの饗宴! 今週のビックリドッキリ映画『スペル』&『REC2』 | リュウセイグン

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ドーン! バーン!! グシャー!!!



『スペル』『REC2』この両者を擬音語で表現するとしたらこんな感じだろうか。
方やババア、方やゾンビが突如として襲いまくってくるこの2作、内容は全然似てないのにテイストは極めて近しい

最初に観たのは『REC2』。
僕はホラーが結構好きにも関わらず、ぶっちゃけ大きい音とかに弱いので、顔に手をやりながら観てた。
怖い、というより大きな音で出てきた瞬間ビクっ! てなっちゃうんだよね。
一旦出てからは普通に観られるんだけど。
成人してからは怖がることも減ったけど、昔は色々内容にも弱くて、怖いのを観た後は漸く気になってた。

それは兎も角、『REC2』はそういったビックリ感覚を際だたせる為に手持ちカメラで撮っている設定の、POV映画だ。前作も「来るぞ来るぞ」と思ったところに来るんだけど、効果が派手なのでやっぱビックリした。その時はローカルTVのカメラマンが撮影しており、そのカメラマン根性に驚嘆させられた(まぁ『クローバーフィールド』もそうなんですけどね)
今作ではSWAT部隊みたいな人達がヘルメット付嘱のカメラで撮影しているという設定なので、カメラマン根性論としては不自然ではないし、色々な視点変更をさせてみたりとPOVでありつつ幅の広い方法で見せることに成功している。最後の方では前作の暗視カメラも伏線的な使い方をして、恐怖を演出してみせた。
しかしながら、これは本当に印象論になってしまうが恐怖度としては前作の方が上だったような気がする。

2度目のマンネリ、もあるが前作みたいな、いつゾンビの危険性に気付くのか……みたいな溜めの部分がないのが一つ。主役がSWATなのでそれなりの装備をしているのが一つ。それなのにアホなのが一つ(SWAT自身よりも指揮官兼同行者がアホなんだが)ゾンビがデスボイスで喋り出しちゃうのが一つ。

何かに憑かれた少女という設定は前作からあったものの、それを本当に悪魔としてしまい、しかも十字架で対抗して会話までしちゃう。
つまり、今回は完全にエクソシスト物になっている。これはちょっと戴けない。
こういうモンスターというのは喋らず、特にゾンビは打算も何も無しに向かってくるのが怖いのである。一体ではそこまで強くはないが、ずんずん進んで来るところに(ゾンビそのものの)恐怖がある。彼ら自体は雑魚でもいわば群体であり、それが明確な意志を介在させず大量に迫ってくるところがゾンビの醍醐味であろうと信じる。それが喋り出して、しかも十字架に怯んでしまうと、ゾンビに意志や固体としての意義が備わることになる。
しかし固体の力は弱い(RECのゾンビは素早いので比較的強力な部類に入るとしても)ので、結局小物臭が漂って来てしまうのだ。

『エクソシスト』は名画だが、捉えようによってはやはり悪魔が小物に見える。
というか最近観たらクラウザーさんを思い出して吹いてしまった。

RECではゾンビに対抗する指揮官もかなりのマヌケなので、馬鹿同士が争っている光景はかなり残念だ。
暗視カメラの使い方も前作の引き継ぎからとは言え「そりゃねーよwww」という感じ。
第一、あんなん血液採取しようが無いだろ!
元から物語性よりも映像やドッキリで見せていく作品だと思うので、物語は普通にやって、謎も前よりちょっと進んだくらいに匂わせておく方が良かった気がする。




一方『スペル』は、その辺りを相当割り切った感じで、90分ひたすらヒロインと観客に対するいやがらせが炸裂する素敵ムービーだった。物語としては単純明快で、ローンを断った銀行員のお姉さんにババアが呪いを掛けてひたすら嫌がらせをする。
これだけ。
この辺りのテーマ的な話は『スパイダーマン2』のエントリ を読んで頂きたいが、ラストもやはりサム・ライミの思想が深く関わっており、そこら辺は興味深い。

しかし、そんなことはさておき、この映画最大魅力であるババアの嫌がらせについて考えてみたい。
先ほども言ったように、この映画はその9割が観客とヒロインに対する嫌がらせで出来ている。
あまりに嫌すぎて逆に笑えるレベルに到達しており、良くも悪くもこの映画はババアと嫌がらせを抜きには語れないのだ。それは裏を返せば、ライミの「嫌がること」への価値観がこの作品には現れているのではないか。

例えば、シャマラン映画では水をやたらと忌避したり、神秘性を求めるという一面がある。
事実は確認しようもないが、僕はこれをシャマラン自身の水に対する感情の発露と読んだ。

翻って『スペル』を観るに、口に関わる嫌がらせが異常に多い
ムカつく同僚は食べ物の事で「頼んだ物と違う」と、嫌味を言う。
ババアは呪いを掛ける前から痰を吐いているし、ヒロインの前で入れ歯を出し入れする。復讐モード後も入れ歯がすっ飛んだ状態でヒロインをハムハムするし、呪いの時もボタンに口づけするような素振りを見せ、ババアの○○にヒロインは口移しで奇妙な液体を浴びせられる。食事の時には持参したケーキにババアの目玉が生えてくる
更にはヒロインの口に蝿が入って飛び出たり、ババアの腕が入ったりババアの乗り移ったハンカチが入ったり……

このようにババアが登場すると一回は口に纏わる嫌がらせが行われる
不思議なことには、ババアが呪いを頼んだ悪魔自身が出てくると、口に関わる現象は殆ど無い(と記憶している)
更にヒロインのババアへの反撃も「口に異物を入れる」という形で為される。

勿論一般的に口の中へ異物を入れられれば不快感が伴うが、ここまで執拗に口に拘るのは、やはりライミ自身「口に何か入れられたら嫌だなぁ」という感覚がある為ではないだろうか……と考える。

監督が意識してやっているかどうかは不明だが、逆に意識されてない偏りみたいな物が見えてくると、物語以外でも映画を観る楽しみが増えてくる。