【二次】何物語「いずもスパイダー」~化物語異聞~其ノ壹【創作】 | リュウセイグン

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 瀬古口出雲に出逢ったのは、僕が深く関わる多くの人間よりも先だった。羽川翼よりも、八九寺真宵よりも、神原駿河よりも、忍野メメや忍よりも、もちろん――戦場ヶ原ひたぎよりも。
 彼女は僕にとっては初めて意識した他人、と言えるかも知れない。
 母親や妹は別として、僕は基本的に人との接触を避ける傾向が強かった。と、言っても小学生の頃は普通に友達と遊んだりもしたのだが、親友と言えるような人間は居なかった。
 それを孤独と感じた事も無い。だから、この傾向は、後になって振り返って、初めて認識出来たものだ。
 高校三年生になった今でこそ様々な人々と様々な関わりを余儀なくされているが、やはり怪異という存在に出逢わなければ、その繋がりも生じなかったに違いない。僕が怪異に会わなければ、忍野と知り合う事も無く、戦場ヶ原の状況を知って、それに手を貸そうとしても有効な手掛かりなど教えられなかっただろう。となれば、八九寺真宵との遭遇もまた別の形にならざるを得ないし、神原駿河だって僕をつけ回したりはしなかった。そう考えれば、僕は怪異によって人と出会い、怪異によって人付き合いに恵まれるようになった……とも言える。それが損なのか得なのかは難しいところだが、取り敢えず後悔はしていない。
 そういった事情を考えるに、まだ怪異も知らず、純真無垢な僕が瀬古口出雲と関わったのは異例中の異例、とも言える。
 ただ、それほど濃密な関わりを持った訳ではない。
 少なくとも、最初の時点では。
 割引いて考えれば単なる擦れ違い、大きく見積もってもちょっとした助け合い、それくらいのものだ。そんな小さな関わりが、僕の記憶に刻み込まれているのは、やはり彼女自身の見栄えと、その関わりが繰り返された事によるものだろう。
 そう、最初には何が起きたとしても大した意味はない。初対面だけの繋がりなど、この世には幾らでも溢れているだろう。遠出したコンビニの店員とか、間違って掛かってきた電話とか、転んでパンツを覗き込んでしまった女性とか。色々あろうと、一回きりならば大した話ではない。
 繰り返し。
 繰り返しは、それ自体に意味がある。
 いや、正確には繰り返し自体に人は意味を見出す。
 だから、繰り返されなければこの話はそもそも起こりさえしなかったのかもしれない。